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Channel: shiotch7 の 明日なき暴走
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ハイレゾ・ダウンロードで楽しむ「Wings 1971-73」

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 先月のポール来日時にライヴチケット代や新幹線代に加え、思い出作りのグッズ代やらポール・ロスを癒すためのブート代やらで青天井の予算を組んで湯水のようにお金を使ってしまったこともあって財布がほとんど空っぽになってしまったのだが、それに追い打ちをかけるように「ホワイト・アルバム」の50周年盤や「イマジン」のアルティメイト・コレクション、そしてポールのアーカイヴ・コレクション(それも2枚同時!)がドドーッとリリースされ、ファンとしては嬉しい反面、発売時期をズラすとかもーちょっとファンのお財布事情も考えてくれたらエエのに、と恨めしく思ったものだった。
 結局本家本元であるビートルズの「ホワイト・アルバム」を最優先し、ソロ作品に関してはまたお金が出来てから... と悠長に考え、70年代ポールの隠れ名盤である「ワイルド・ライフ」と「レッド・ローズ・スピードウェイ」の2枚に当時のウイングスの未発表ライヴ音源20曲(!)をコンパイルしたファン垂涎の1枚「ウイングス・オーヴァー・ヨーロッパ」を加えた豪華ボックス・セット「ウイングス 1971-73 スーパー・デラックス・エディション」は12月に入ってからでもまだ十分間に合うとタカをくくっていた。
 それからしばらくは両国&名古屋ブートやらリトグラフ額装やらでバタバタしていてポールのスパデラのことはすっかり忘れていたのだが、12月の初めに paulmccartney.com から届いたニュースレターに “WILD LIFE, RED ROSE SPEEDWAY + WINGS 1971-73 OUT NOW!” とあったので、“おぉ、出たか。ほな未発表ライヴ付きの一番高いヤツ買うたろ...” と思って「BUY 'WINGS 1971-73' SUPER DELUXE」のリンクをクリックすると、日本の UNIVERSAL MUSIC STORE に繋がり、しかも肝心のブツは「在庫なし」とのこと。“えぇ~、6万円もするセットが予約完売ってマジか???” とショックを受け、慌てて国内外の色んなサイトを調べて何とか手に入れようとしたのだが時すでに遅しでどこにも売っていない。聞くところによると予約開始と同時に瞬殺だったようで、自分の読みの甘さを悔やんだが既に後の祭り...(*_*) どうやら追加生産はなさそうな雰囲気やしヤフオクで出たとしてもとんでもない値段になりそうだったので、とりあえずこまめに eBayをチェックして網を張ることにした。
 すると発売翌日に早速1セット出品されたのだがその落札価格が£1,450という狂気の世界(゜o゜)  日本円で20万円オーバーって、いくら何でもエグすぎる。更にその翌日には$1,000(11万円!)スタートのブツが出品され早速ビッドが集中するなど、とてもじゃないがついていけない。興味本位でヤフオクを見てみたら、残り21時間の時点で52ビッド / 16万円まで上がっている。私は “あ~、もうコレは絶対に無理やな...(>_<)” と戦意喪失しながらも未練がましく毎日のチェックだけは一応続けていた。
 そして迎えた昨日、ちょうど午前中の仕事が一段落してコーヒーを飲みながら休憩がてらにネットを見ていた時のこと、このボックスセットのことが気になってeBayの国別ローカル・サイトを片っ端からチェックしていたら、eBayカナダ(!)に“Wings 1971-73 All 3 Audio Cards” というのがあったのでもしやと思って見てみると、何とボックス・セットに付いているハイレゾのダウンロード・コードが商品として堂々と出品されているではないか! しかもその価格が75カナダドルで、日本円に換算すると約6,300円という安さ。それって正規の値段の1/10やん... しかも今ではアホみたいなプレミアが付いてて現物の入手はほぼ不可能と言っていい。それをネットのダウンロードとは言え、オフィシャル、それもハイレゾの超高音質で手に入れる千載一遇のチャンスが目の前に転がっているのだ。これを逃したら一生後悔する(←大袈裟な...)だろう。私は迷わず BUY IT NOW をクリックし、支払いを済ませた。
 その日の午後は仕事もほとんど手につかず、ソワソワしながら家に帰るとセラーから3枚のDLカード裏側の写真がメールで届いていた。私はすぐにそこに載っていたダウンロード・コードをネットで入力、ファイル・サイズが大きいせいか「ワイルド・ライフ」は3つ、「レッド・ローズ・スピードウェイ」は5つ、そして「ウイングス 1971-73」は2つと計10のファイルをダウンロードするのにパソコン2台を駆使して5時間ほどかかったが、夜中の2時にようやくすべてのDLを終了し、それから解凍してVUプレイヤーにインポートしてスピーカーから音出しに成功したのは何と真夜中の3時過ぎ(笑)だった。一応次の日も仕事があるので30分ほど聴いてからふとんに入った。
 そして今日も睡眠不足などどこ吹く風でハイ・テンションのままいそいそと帰宅。晩飯も喰わずにさっきからずーっと聴いているのだがまだまだCD7枚分全部は聴けていない。しかし現時点でハッキリ言えるのは “買って良かったぁ...(^o^)丿” ということ。特にヨーロッパ・ライヴの音源が素晴らしく、ポールの声がビックリするほど若々しくて、もうそれだけで涙ちょちょぎれるのだが、そんなポールのしっとりと潤いを含んだ歌声が 96kHz/24bit というスーパーウルトラ高音質で巨大スピーカーから迸り出てくるのだ。音質的には「ウイングス・オーヴァー・アメリカ」よりも遥かに上で、まるでポールが目の前で歌っているかのような錯覚すらおぼえるこのライヴ、まさに “でらサイコー!!!” と快哉を叫びたくなる家宝級の逸品である。このセットを買いそびれて悶々としている同志のみなさんも、とりあえず私のように音源だけでも手に入れて楽しんでみてはいかがだろうか?

【追記】ヤフー知恵袋で見つけた Helium Audio Converter というフリーソフトを使ってハイレゾFLACファイルの MP3化に成功、早速CDに焼いて明日から通勤の車中でガンガン聴くぞ~

Wings Over Europe / Paul McCartney & Wings

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 先週ハイレゾ音源で手に入れた「Wings 1971-73」はCD7枚分のヴォリュームがあり、それぞれ聴き応え十分の内容だったが、中でも断トツに気に入ったのは未発表ライヴ音源集の「Wings Over Europe」だ。この数日間は両国と名古屋のライヴをも凌ぐヘビロテぶりで、家でも車でもこのウイングス・ライヴばかり聴いている。
 トラックリストには1972年に行われたUKツアーとヨーロッパ・ツアーのうち、 ニューカッスル(イギリス)、フローニンゲン(オランダ... 綴りは“グロ人間”...笑)、ハーグ(オランダ)、アントワープ(ベルギー)、ベルリン(ドイツ)の5公演から計20曲が選ばれている。内訳は1stソロの「マッカートニー」から1曲、「ラム」から2曲、「ワイルド・ライフ」から4曲、「レッソ・ローズ・スピードウェイ」から2曲、アルバム未収録のシングル盤から4曲、カヴァーが2曲、そして未発表曲が5曲という構成だ。
 このアルバムの第1印象は、ウイングスの演奏がかなりアグレッシヴにガンガンくるなぁというもので、スタジオ録音のアルバムやシングルではキレイキレイに纏まりすぎな部分も随所に見られたが、ここでは “ライヴ・バンド” としてのノリを重視したグルーヴィーな演奏が展開されている。
 大急ぎで作ったと言われる「ワイルド・ライフ」収録の「マンボ」なんか演奏の重心を下げてハードボイルドに迫ってくるし、“歌詞にちょっと問題アリってことでイギリスでは放送禁止を喰らったけど、ここ(オランダ)じゃ大丈夫だよね。”というポールのMCで始まる「アイルランドに平和を」なんかもスタジオ録音のシングル盤よりもロック魂溢れるこっちの演奏の方が断然カッコいい。「マイ・ラヴ」のような激甘バラードですらそうなのだからコレはもうたまらんですわ(^o^)丿
Paul McCartney & Wings - Mumbo (Live In Antwerp 1972) (2018 Remaster)

Paul McCartney & Wings - Give Ireland Back To The Irish (Live In Groningen 1972) (2018 Remaster)

Paul McCartney & Wings - My Love (Live In Hague 1972) (2018 Remaster)


 そしてそんな “アグレッシヴさ” に拍車をかけているのが、こちらの予想を遥かに超えた“音の良さ” だ。この時期のポールのライヴ音源はブートの劣悪な音が先入観として私の脳内に刷り込まれているせいもあるが、それにしてもこの音は凄い。私にとってのポールのライヴはどうしてもリアルタイムで聴いた「Wings Over America」の “あのホワーッと広がるユル~い音” が基準になってしまうので、その対極に位置するような “オンで生々しい音” がスピーカーから飛び出してきた時は腰を抜かしそうになった。特にドラムの音が3次元的に屹立しており、それが演奏に更なる推進力を与えているように聞こえるのだ。
 これまで色んなライヴ盤で耳にしてきた名曲「メイビー・アイム・アメイズド」だが、このヴァージョンで聴けるポールの伸びやかな歌声の瑞々しさにはマジで心が震えるほど感動するし、「メアリーの子羊」のようなメルヘンチックな童謡ですらデニー・シーウェルのへヴィーでダイナミックなドラミングによって十分傾聴に値するナンバーとなっている。とにかく良い音で聴けば演奏がもっともっと良く聞こえるというお手本のようなサウンドだ。
Paul McCartney & Wings - Maybe I'm Amazed (Live In Groningen 1972) (2018 Remaster)

Paul McCartney & Wings - Mary Had A Little Lamb (Live In Hague 1972) (2018 Remaster)


 同じことは「ラム」収録の2曲にも言える。特に「イート・アット・ホーム」なんかアルバムに入っているスタジオ録音ヴァージョンはポール流 “ポップンロール” の典型であり、そのせいで頭の固いロック評論家連中からボロクソに叩かれたのだが、1分近いギター・ソロで始まるこのライヴ・ヴァージョンを聴けばその圧倒的なグルーヴに参りましたと平伏すだろう。「スマイル・アウェイ」もライヴでバリバリのロックンロールに仕上がっているが、スタジオ録音盤で目立ちまくっていたリンダのバック・コーラスが控えめになってしまうのだけが残念(>_<) リンダの大ファン(←大名盤「ラム」への彼女の貢献は計り知れない...)を自負する私としては痛し痒しというか、贅沢な悩みではある(笑)
Paul McCartney & Wings - Eat At Home (Live In Hague 1972) (2018 Remaster)


 もう一つ面白かったのはこの時期ならではのテンポ設定によるアレンジの違いが楽しめることで、後に「Wings Over America」でイケイケの超高速アッパー・チューンとしてアンコールを盛り上げることになる「ソイリー」や「ハイ・ハイ・ハイ」が、ここではテンポを落として演奏されているのに注目。特に後者は T.Rex を彷彿とさせるブギウギ調で演奏されていて実に面白い。「コールド・カッツ」にも入っていたブギーな「ベスト・フレンド」も同様だ。
Paul McCartney & Wings - Soily (Live In Berlin 1972) (2018 Remaster)

Paul McCartney & Wings - Hi Hi Hi (Live In Hague 1972) (2018 Remaster)

Paul McCartney & Wings - Best Friend (Live In Antwerp 1972) (2018 Remaster)


 それと、アレンジ違いというほどではないが、同じライヴ・ヴァージョンでも公式盤(←シングル「マイ・ラヴ」のB面)とは違うテイクが楽しめる「ザ・メス」も超オススメ。そしてビートルズ時代を彷彿とさせる「ロング・トール・サリー」の超絶シャウトには言葉を失うこと間違いなし。とにかく熱いのだ。ロックなウイングスのロックなライヴ... 何でこんな素晴らしいライヴ盤を単体でリリースしないのか不思議でならない。すべてのポール・ファン必聴と言えるこのライヴ・アルバムをごく少数のマニアしか楽しめないというのは実に勿体ないことだと思う。幸いなことにYouTubeにほぼ全曲アップされているので、ファンは消される前に速攻でチェックしましょう(^.^)
Paul McCartney & Wings - The Mess (Live In Berlin 1972) (2018 Remaster)

Paul McCartney & Wings - Long Tall Sally (Live In Groningen 1972) (2018 Remaster)

Revolver UK Stereo 1st Press盤 (Dr. Robert 表記)

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 私は年の終わりが近づくと“1年間頑張った自分へのご褒美盤” として、高価なレコードを買うことにしている。去年は確か美空ひばり「ジャズを歌う」のオリジナル盤で、その前の年はビートルズのエスキモー・カヴァーだったが、今年はビートルズの「リヴォルヴァー」のUKオリジナル・真正1stプレス盤である。
 「リヴォルヴァー」といえばビートルズの全アルバムの中でも最も愛聴していると言っても過言ではない1枚で、もちろんUKオリジナル盤の 1stプレス(モノラル盤はマト -2/-1、ステレオ盤は -1/-1)は既に持っているのだが、悲しいことにステレオ盤の方に3ヶ所ほど “ポン!” と音に出る傷があり(← Ex+って書いてあるから買ったのに、あの + は何なん???)、それがず~っと気になっていた。
 そのためにこの盤はこれまでも何度か買い直しを考えたことがあるのだが、傷ありとはいえ既に持っているのに同じ盤を買うのは贅沢ではないかと躊躇し、結局買い替えずに傷のある場所を飛ばして聴く(←貧乏くさ...)ようにしてきたのだった。しかし毎回毎回それでは精神衛生上よろしくないし、いちいち針を上げるのも面倒くさい。そのせいで聴くのが億劫になるようではまさに本末転倒というもの。しかも音質も両面マト1の1stプレスにしてはそれほど大したことないと感じていたのでそろそろ潮時と考え、どうせなら同じマト1でもメタルマザーやスタンパーのコード№が若い盤を狙うことにした。
 念のために横野さんのHPで確認すると、「リヴォルヴァー」UKステレオ盤の真の 1stプレスはセンター・レーベルのB面4曲目が “Dr. Robert” 表記となっており、“Doctor Robert” 表記になっている私の手持ち盤は同じマト1でも 2ndプレスとのこと。なーるほど、そーやったんか... 「ドクター・ロバート」問題については確かにどっかで聞いたことはあったが、モノ偏重主義者の私はステレオ盤ということであまり気にしていなかったのだ。反省せねば...(>_<)
 ということで早速 Discogsと eBayで検索してみるとそれぞれ1枚ずつ出品されていた。一方は盤質 VGで€100(約13,000円だが送料が€36というボッタクリ料金のためトータルで約17,000円)、もう一方は盤質 Exで£120(約16,800円だが送料£15込みでも約19,000円)ということで、音質重視の私は当然盤質Exの後者に決定。プレイ・グレードの説明に“emits a clean sound with no audible background crackles/clicks... has some occasional touches of very low level background surface noise.”(チリパチ音無しのクリーンな音質で、サーフェス・ノイズの類もほとんど気にならないレベル)とあったのでそれを信用することにした。
 イギリスから1週間で届いたこのレコードに恐る恐る(←前回の苦い経験があるのでホンマに大丈夫かいなと懐疑的になってた...)針を落とすとセラーの説明通りのクリアーな音がスピーカーから飛び出してきて一安心。確かにチリパチ音ひとつしないピカピカ盤だ。しかし何よりも私を喜ばせたのはその音質で、ただノイズレスでクリアーなだけでなく、音に芯があるというか、私好みの腰の据わったダイナミックなサウンドが炸裂するのだからたまらない(≧▽≦) これこれ、やっぱりUK盤はこーでなくっちゃ... という感じの、濃厚一発官能二発なサウンドだ。2ndプレス盤と聴き比べてみたところ、一番の違いはベースの音で、量感もキレ味も断然 1stプレス盤の方が勝っている。これで2万円なら安い買い物だ。やっぱりUK盤はエエね(^.^)

ということで、思い返せばジミー・ジョーンズやジョルジュ・アルヴァニタス、そしてゼップの青ロゴ盤といった超稀少垂涎盤を手に入れて大喜びしたのが遠い昔に思えるぐらい9月の「エジプト・ステーション」リリースのインパクトが絶大で、それに伴うフレッシュン・アップ・ツアーで11月に来日したポールが全部持っていった感のある2018年でした。まだまだしばらくはポール祭りが続きそうな当ブログですが、宜しければ来年もお付き合いください。それでは皆さん、どうぞよいお年を(^o^)丿

70年代ポールのUS盤LP特集①

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 新年あけましておめでとうございます。このブログもとうとう11回目のお正月を迎えることになり、最近はほとんどビートルズ専門ブログと化しているにもかかわらずよくもまぁこれだけ次から次へとネタが尽きひんなぁと我ながら驚いております。まぁ今年も趣味性丸出しの音楽日記としてマイペースでやっていこうと思っておりますのでどうぞよろしくお願い致します。

 2018年の私的大ニューストップ3はもちろん1位がポールの両国&名古屋ダブル参戦、2位が同じくポール5年ぶりの新作アルバム「エジステ」リリース、そして3位がビートルズ専門のレコード店 B-SELSが奈良にできたことで、お店に行くたびに店主のSさんと一緒にレコードを聴いてあれこれ喋りながら楽しい時を過ごさせてもらっている。
 私は三度の飯よりもビートルズが好きなガチガチのファンだが、悲しいことに私がこれまで出会ってきた “ビートルズ好き” の方々はみんなライトなファンばかりで、マトリクスがスベッたとかラウドカットがコロンだとかいったディープな会話ができず(←そんな奴いっぱいおったらそれはそれでコワイけど...笑)、ビートルズに関してはこのブログを通じてネット上で知り合ったマニアの方々とヴァーチャルなお付き合いをしながら渇きを癒していた。
 B-SELS店主のSさんは当然ながらビートルズに関する知識はハンパないし、特に商品であるアナログ・レコードにはめちゃくちゃ詳しい。「ラム」が大好きと言うことで私と好みも似ている。しかし私がこの方に魅かれる一番の理由はその謙虚な人柄で、レコ屋の主人にありがちな偉ぶったところが微塵もないのだ。とにかくビートルズが好きで、ビートルズを聴く喜びをお客さんと分かち合いたい... という純粋な気持ちが伝わってくる人なんである。
 そういうワケで最近は週一ぐらいの頻度でお店にお邪魔してレコードを聴かせていただいているのだが、12月のある日、ちょうど例の「Wings 1971-73 Super Deluxe Edition」が売り切れててショックです... みたいな話をしていた時に、“私もあのボックスセット欲しかったので残念です。このレコード好きなんですよ。” と仰ってウイングスの「ワイルド・ライフ」(←世評の低い「ワイルド・ライフ」がお好きとは、私とホンマに趣味合いますな...)をターンテーブルに乗せられた。商品ラベルを見ると US盤だ。
 これまで何度も書いてきたように、ビートルズに関する限り私はガチガチの UKオリジナル盤至上主義者で、US盤は音が悪いものと信じて無視してきた。相撲の番付に例えれば(←両国行った影響??? ドスコイドスコイ...笑)私の中では UK盤が横綱で US盤は幕下とは言わないまでも前頭の下の方という位置付けである。2年前にジョンのソロアルバムの US盤を聴いて考えを少し改めはしたものの、まだまだ心のどこかで US盤に偏見を持っている自分がいた。
 ところがお店のスピーカーから勢いよく飛び出してきたのは1曲目「マンボ」の元気溌剌としたサウンドで、ビートルズのキャピトル盤で耳にしたあのキモいエコーは微塵もかかっていない(←当たり前やろ)。これなら前頭どころか軽く関脇ぐらいは行きそうだ(笑) “えっ、US盤ってこんなに音良かったんですか?” と尋ねると、“US盤はプレス時期や工場で音が違うみたいで難しいんですわ。これは良さそうですね。” と仰る。確かに UK盤のような深みには欠けるかもしれないが、いかにもアメリカらしいドライで開放的な音であり、これはこれで魅力的だ。
 調子に乗った私は「ワイルド・ライフ」を聴き終えるとすかさず “これも聴かせて下さい!” とエサ箱にあった「レッド・ローズ・スピードウェイ」を差し出した。1stプレスの証しであるジャケ裏のスティーヴィー・ワンダーへの点字メッセージの位置も大きさも UK盤と全然違うのにまずビックリ(゜o゜)  実際に音を聴かせてもらうと「ワイルド・ライフ」と同傾向の乾いた音で「ビッグ・バーン・ベッド」が鳴り出した。続く「マイ・ラヴ」もめっちゃエエ感じである。ちょうどビートルズの各国盤蒐集が一段落して新たなターゲットを探していたこともあって、 “これ2枚とも下さい!” と衝動買いしてしまった。因みに「ワイルド・ライフ」が2,600円、「レッド・ローズ...」が2,400円という良心的なお値段で、eBayなら送料だけでこれくらい取られてしまうことを考えるとめっちゃ良い買い物をしたと思う。
 家に帰って自分のシステムで大音量で聴いてみたが、グイグイ音が前に出てきてすごくエエ感じだ。車に例えると(←相撲の次は車かよ...)圧倒的なパワーでグイグイ加速していくアメ車のイメージそのものだ。車作り同様にレコードの音作りにもお国柄が出る(←ドイツ盤なんかモロにもそうですな...)というのが何とも面白い。そんなこんなで私は大好きな70年代ポールのUS盤を集めてやろう... と心に決めたのだった。 (つづく)

《Matrix / Runout》
 ①Wild Life(LAプレス)
  A: SW-1-3386 Z113-1 ✲ STERLING 2 LH
  B: SW-2-3386 Z101-1 ✲ STERLING 2 LH
 ②Red Rose Speedway(Winchesterプレス)
  A: SMAL-1-3409 Z2 #2 —◁ STERLING LH 2
  B: SMAL-2-3409 Z1 #5 —◁ STERLING LH 2

70年代ポールのUS盤LP特集②

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 B-SELSで「ワイルド・ライフ」と「レッド・ローズ・スピードウェイ」を買ったその日から早速私の US盤研究が始まった。とは言え、ビートルズ本家のレコード・プライス・ガイドやサイトはいくつもあるが、各メンバーのソロまでカヴァーしているものは中々見つからないし、あったとしても UK盤に関するものばかりで人気薄の US盤を扱ったものなど皆無に等しい。やっとのことで「ALLPLELOG 5th EDITION: U.S. and Canadian APPLE RECORDS Price and Reference Guide」という本をネットで見つけたのだが、$250という空恐ろしい値段が付いていてとてもじゃないが手が出ない。このままでは埒が明かないのでとりあえず Discogsの US盤のページを何枚もプリントアウトして見比べながら音の良さそうなアーリー・プレスの盤を探すことにした。
 イの一番に調べたのは最愛の「ラム」である。何を隠そう、「ラム」はメンバーのソロ・アルバムで唯一で本家のビートルズ同様に各国盤を集めているレコードなのだが、そんな「ラム」でも US盤だけは手つかずだったのだ。ラム・マニアとして反省せねば...(-_-)  というワケで Discogsで色々調べてみると、センター・レーベルのアルバム・タイトル「RAM」の文字位置が違うヴァリエーションだけでも5種類以上あるし、深緑から黄緑までリンゴの色も様々... 中には A面が LAプレスで B面がウインチェスター・プレスなどというハイブリッド盤(?)まであってもう何が何だかさっぱりワケが分からない(>_<) 
 そんな中で私が目を付けたのが “Full Apple Both Sides” と呼ばれている盤だ。アップル・レーベルは通常 A面がグリーン・アップルで B面はリンゴの断面であるホワイト・アップルになっているはずなのだが、こいつは何故か両面ともグリーン・アップルになっており、珍盤好きの私としては買わないわけにはいかない。結果としてコレが大正解で、届いた盤は NM表示通りのキレイな盤で音質も UK盤に迫るほどの高音質。こんなピカピカ盤をジャケット右上にパンチ・ホールがあるせいとはいえたったの $20、送料込みでも5,000円弱で買えて、ラム・マニアとしては大満足だ。
 次のターゲットは「ラム」同様お店になかった「バンド・オン・ザ・ラン」だ。このアルバムの US盤はセンター・レーベルのデザインこそ同じものの、デッドワックスに刻まれたマトリクスが何種類もあってよく分からない。しゃーないから安くて盤質の良さそうなのを買うたれと思って色々探していた時に eBayで25%オフ・セール中の盤質 Exというブツを発見。アイテム説明にデカデカと“1st Press” って書いてあるし、“Wly in Dead Wax” というのも何となく良さそうだ(笑) 調べてみるとこの Wly というのは Wally Traugott というキャピトルのカッティング・エンジニアのことで、ビートルズ関連では「アット・ザ・ハリウッド・ボウル」US盤を担当した人といえば分かっていただけるだろう。そんな腕利きエンジニアがカッティングした 1stプレス盤が $15で買えるのだ。これはラッキーラララである。
 しかも嬉しいことに同じセラーが「ヴィーナス・アンド・マース」も出品しており、それが何とミント・コンディションだというのだからコーフンするなというのが無理な話。アイテム説明文も “An amazing copy, gorgeous in its mintiness!” と自信満々だ。てゆうか、 mintiness なんていう名詞形、生まれて初めて見たわ(笑) しかもそんな極上コンディションにもかかわらず値段の方はUS盤の人気の無さを反映してか $17.72とこちらも2,000円を切っている。2枚一緒に買えば1枚当たりの送料も実質半額となるわけで良いこと尽くしなのだ。結局送料込みで6,000円弱でウイングス絶頂期の傑作2枚を手に入れることができて大喜び(^o^)丿 70年代ポールの US盤蒐集は順風満帆だ。  (つづく)

《Matrix / Runout》
①Ram(LAプレス)
  A: SMAS-1-3375-Z6 •• EW/N ✲
  B: SMAS-2-3386-F-32 • ✲
②Band On The Run(LAプレス)
  A: 1-3415-F-14 • ✲ MASTERED BY CAPITOL Wly
  B: 2-3415-F-15 •• ✲ MASTERED BY CAPITOL Wly
③Venus And Mars(LAプレス)
  A: 1-11419-F-5 •• ✲ MASTERED BY CAPITOL 2 Wly
  B: 2-11419-F-5 •• ✲ MASTERED BY CAPITOL Wly 2

70年代ポールのUS盤LP特集③

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 B-SELSで US盤を2枚衝動買いした1週間後、再びお店にお邪魔して、“ネットで「ラム」「バンド・オン・ザ・ラン」「ヴィーナス・アンド・マース」の3枚買いましてん!” と言うと“え~、もう3枚も? 速攻ですねぇ...” とSさんもビックリ。“今日は 1stの「マッカートニー」とか、ないですかね?” と尋ねると “まだ店に出してない盤があるにはあるんですが、ちょっと問題がありまして...” と歯切れが悪い。お話を伺うと、プレスミスでセンター・レーベルがズレているため、ラストの曲が終わってすぐに針を上げないと悲惨なことになる(笑)とのこと。“盤質は良いので惜しいなぁ... と思ってるんです。” と仰るのでとりあえず聞かせていただくことにした。
 US盤「マッカートニー」に関しては一つだけどうしても確認したいことがあったので、盤をターンテーブルに乗せる前にデッドワックス部分を見せていただいた。するとそこには何と泣く子も黙る RL の刻印が... そう、これこそまさにあの「Led Zeppelin II」のホット・ミックスで名を馳せた巨匠、ボブ・ラドウィッグによってカッティングされたという何よりの証しである。RL はなにもゼップの専売特許というワケではないのだ。
 実を言うと私は2年ほど前にライトハウスのギフト盤 CD-Rでこの盤の存在を知ったのだが、その頃は “ビートルズのソロは UK盤一択!” という考えに固執していたこともあってあまり真剣に聴いていなかった。今回のポールのソロの US盤蒐集を始めた時に真っ先にこの CD-Rのことを思い出して再度聞いてみたところ、これが結構生意気な音で鳴る。しかも今日は CD-Rではなく状態の良いアナログ・レコードの音をダイレクトに聴くのだ。何だかワクワクしてきた。
 RL 刻印は何故か B面だけに彫られているのだが(←ゼップでもあったけど、こーゆーの、ホンマにワケがわからん..)、A面1曲目の「ラヴリー・リンダ」から軽快ながらもしっかりと芯のある音になっているし、「ホット・アズ・サン」なんかも中々温かみのある音に仕上がっており、RL 抜きの A面も悪くない。そしていよいよ問題の B面にいくのだが、1曲目の「ウー・ユー」からいきなりガツン!とくる力強いサウンドがスピーカーから迸り出てきて “おぉ、これはちょっと違うな...” と思わせてくれる。2曲目の超愛聴曲「ママ・ミス・アメリカ」なんか実にダイナミックな音作りで、US盤も捨てたもんやないなぁ... との思いを強くした。やっぱりカッティング・エンジニアの力って大きいですな。
 レコードを最後まで聴き終え、ほとんどチリパチ音のない NM盤だったこともあって無性にそのレコードが欲しくなり、 “これ売ってもらえませんか?” とお願いすると、“センター・レーベルは SMASになってるから1stプレスじゃないですよ。デッドワックスでは STAOを消して上から SMAS って彫ってあるから音そのものは1stプレスとそんなに変わらないと思いますけど... それに、レーベルがズレてるけど、いいんですか? ジャケットのレコード取り出し口もちょっと傷んでるし...” と仰るので、“私は音さえ良ければ1stプレスじゃなくても全然 OKです。レーベルのズレなんて、そんなんすぐに針上げたらしまいですやん。それに、この程度のジャケットの傷みは別に気になりませんし... 何とかお願いしますわ。” と頼み込み、2,800円で売っていただいた。
 尚、その日は冬のボーナスが自分の予想額よりもかなり多かったこともあって、お店にあった他のポール US盤も全部試聴させていただき(←何時間居座ってるねん...)、「マッカートニー」と併せて計4枚をまとめ買い... 「スピード・オブ・サウンド」が2,500円、「バック・トゥ・ジ・エッグ」と「タッグ・オブ・ウォー」はどちらも1,800円で、すべて盤質/ジャケット・コンディションが NMのピカピカ盤だった(^.^) 前にも書いたが US盤はアメリカからの送料(←大体 $25ぐらい取られてしまう...)のことを考えるとお店で買うのが大正解。しかも B-SELSは望めば全曲試聴させてもらえるし、コレクターにとってはまさにパラダイスである。
 その後、色々調べているうちに RL刻印が両面に入った「マッカートニー」を Discogsで発見! LHのインフォでさえも “RL刻印は B面のみ” と断言してあったので、これはえらいこっちゃと大コーフンし、即購入。セラーに RL刻印のことを再確認すると “何でそんなこと聞くねん?” みたいに不思議がられたのだが(←RLが何のことか知らんのやろなぁ...) $13.99という安値で買うことができて大ラッキーだ。
 因みに「マッカートニー」の真の US 1stプレス盤は、①センター・レーベル、デッドワックス、スパイン、そして裏ジャケ左下のカタログ№の4ヶ所が全て STAO表記で、②センター・レーベルのアーティスト名とタイトル名が上下2行になっていて、③裏ジャケ右下の NYアドレスの下に ABKCO の表記がない、というのが特徴らしい。で、元旦の昼間から eBay事始めをしていた時に見つけたジョージのインド盤を出していたスウェーデンのセラーがたまたまこの「マッカートニー」US 1stプレスも同時出品しており、聴き比べをしてみたいという誘惑に負けた私は送料が安かったこともあってそいつもゲット。ということで、わずか2週間のうちに US盤の「マッカートニー」を3枚も買ってしまった(笑) まだ手元には1枚しかないが、残りの2枚ももうすぐ届くはずなので今からめっちゃ楽しみだ。 (つづく)

《Matrix / Runout》
①McCartney(Winchesterプレス)
  A: SMAS S̶T̶A̶O̶-1-3363 Z17-1-S —◁ STERLING LH
  B: SMAS S̶T̶A̶O̶-2-3363 Z14 —◁ STERLING LH/RL
②Wings At The Speed Of Sound(LAプレス)
  A: ST-1-11525 F-5 (E) • ✲ MASTERED BY CAPITOL Wly
  B: ST-2-11525 F-6 (E) • ✲ MASTERED BY CAPITOL Wly
③Back To The Egg(Terre Hauteプレス)
  A: AL 36057-1G T1
  B: BL 36057-1E 1T
④Tug Of War(Carrolltonプレス)
  A: G1 AL 37462-1BA COLUMBIA NY PUSHING+PULLING S2 ♡
  B: G1 BL 37462-1AF COLUMBIA NY PUSHING+PULLING S2 ♡

70年代ポールのUS盤LP特集④

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 B-SELS というお店はまだまだ店頭に出していない在庫があるらしく、Sさんは1枚1枚ご自分の耳で丹念にチェックしてからお店に出す、という話を以前うかがったことがある。その話を覚えていた私は「マッカートニー」を買った時に “また1週間後に来ますんで、裏在庫(?)の中から「オーヴァー・アメリカ」と「ロンドン・タウン」の US盤出しといて下さいね。” という何とも図々しいお願いをしておいたのだが、次にお店に伺うと本当にその2枚がさりげなくエサ箱に入れられていた。
 しかも「オーヴァー・アメリカ」の US盤は2セット並んでおり、ポスター付きの方が2,400円でポスター無しの方が1,800円と、どちらもアメリカからの送料以下という良心的な値付けである。私はポスター類には全く興味が無いので盤質の良い方を買おうと考え、両方の盤を聴き比べさせていただくことにした。
 まずは2,400円の方からスタート。このレコード、盤質は文句ナシなのだがサウンド自体がイマイチおとなしいというか、ライヴの熱気に欠けるような気がする。この頃はちょうどオンな音作りが圧巻の「Wings Over Europe」を聴きまくっていた時期なので余計に音が遠く感じられたのかもしれないが、それにしても私の持っている UK盤の音はもっと躍動感があったように記憶している。要するにこのセットは “悪くはないけどそれほど良くもない” というのが正直な感想だ。
 次に1,800円の方を聴かせていただいたのだが、「ヴィーナス・アンド・マース」のイントロが流れてきた時点で “あれ??? 音圧がさっきと違うぞ...” と感じた。更に「ロック・ショウ」に突入した瞬間にライヴのエネルギーが爆発! “こっちの方が全然エエですね!” とコーフン気味にSさんに言うと “確かに違いますね。試聴してる時はノイズとかに集中しながら小さな音で聴いてたんで違いに気が付きませんでした。” と仰る。確かにお店としてやるべきなのは盤質チェックであり、マニアの道楽(笑)といえる音質聴き比べではない。
 2枚のデッドワックス部分を調べてみると、おとなしい音の方がジャクソンビル・プレスで、元気な音の方が LAプレスだと判明。更に、音だけではなくジャケットも少し違うことに気が付いた。同じ US盤でありながらジャケットの色合いが明らかに違うのだ。ジャクソンビル・プレスの方は UK盤と同じ濃い色合いなのに対し、LAプレスの方は私が中学時代から慣れ親しんできた日本盤と同じ淡い色合いなんである。
 更に驚いたのは色の濃淡だけでなく、万国共通と信じ切っていた細部のデザインまでもが微妙に違うことで、例えば、表ジャケでは右下のライトが前者は [緑2赤2] なのに対し、後者は [赤3緑2] と数も並び方も違っているし、真ん中やや下にある機体のてかり(?)が前者にはあるが後者には描かれていない。裏ジャケはもっと違いが明白で、前者の真ん中下の方にある赤と緑の5つのライトや機体の左半分に走っている白い筋(?)が後者には全く描かれていない。ポールの「オーヴァー・アメリカ」のジャケットにこんな違いがあったとは知らなんだ。ただし、こういった音質やジャケットの違いがプレス工場によるものなのか、はたまたプレス時期によるものかは定かではない。
  

 ということで、私は音の元気な LAプレスの方を3枚組6面すべて聴かせていただき、Sさんの気が変わらないうちに購入。それにしてもこれが1,800円やなんてホンマにエエんかいな? Sさん、ごっつぁんデス!
 調子に乗った私は更に「ロンドン・タウン」も両面試聴させていただきそちらも購入。こちらもやはり US盤の人気の無さを反映してか、お買い得価格の2,000円だった。更に「マッカートニーⅡ」にも目を付けたのだが盤が少しカビっていたので一旦カビとりをお願いし、後日改めて購入させていただいた。こちらも「カミング・アップ」(ライヴ・ヴァージョン)の7インチ片面シングル盤(←なぜか33回転!)付きで2,400円というお値打ち価格で買うことができて大満足。これで70年代ポールの US盤は完全制覇と相成った。
 そういうワケで年末からお正月にかけてはそれまで UK盤オンリーだったビートルズ・メンバーのソロ・アルバム棚に新たに US盤コーナーを増設し、レコード整理をしながら楽しく過ごすことができた。Sさん、色々とホンマにありがとうございました。B-SELS、でらサイコー(^o^)丿

①Wings Over America(LAプレス)
 A: SWCO-1-11593 F-3 MASTERED BY CAPITOL ✲
 B: SWCO-2-11593 F-3 MASTERED BY CAPITOL ✲
 C: SWCO-3-11593 F-3 Wly MASTERED BY CAPITOL
 D: SWCO-4-11593 F-3 Wly ✲ MASTERED BY CAPITOL
 E: SWCO-5-11593-F-16 ✲ MASTERED BY CAPITOL
 F: SWCO-6-11593 F-3 Wly ✲ MASTERED BY CAPITOL
②London Town(LAプレス)
 A: SW-1-11777-Z18• KENDUN-B JG ✲
 B: SW-2-11777-Z22• KENDUN-B JG ✲
③McCartney II(Pitmanプレス)
 A: P AL-36511-1H S1
 B: P BL-36511-1J S1

US盤「マッカートニー」3種聴き比べ

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 ポールのファースト・ソロ・アルバム「マッカートニー」のマト違い US盤を1週間で3枚も買ってしまった話は以前このブログに書いたが、海外から買った2枚がようやく届いたので、今日は改めて3枚の US盤の聴き比べをやってみようと思う。

①SMAS、B面 RL刻印盤、裏ジャケ abkco有り、Winchesterプレス、盤質NM
  A: SMAS S̶T̶A̶O̶-1-3363 Z17-1-S —◁ STERLING LH
  B: SMAS S̶T̶A̶O̶-2-3363 Z14 —◁ STERLING LH/RL
 私が最初に聴いた US盤「マッカートニー」がコレで、盤質が良かったこともあるが、2ndプレスにもかかわらず私の予想を上回るカッチリした音が聴けて、“70年代 US盤侮るなかれ” との思いを強くさせられた。RL刻印無しの A面も捨てたものではないが、RL刻印有りの B面のガツン!とくる音を聴いてしまうとどうしても A面の影が薄くなってしまう。いずれにせよ、普通に音楽を楽しむだけならこの 2ndプレス盤で十分な気がする。

②STAO、B面 RL刻印盤、裏ジャケ abkco無し、LAプレス、盤質VG+
  A: STAO-1-3363 Z22 #2 ✲ STERLING LH
  B: STAO-2-3363 Z20 ✲ STERLING RL/LH
 こちらは裏ジャケに abkco表記がない真正 1stプレス盤だが、2ndプレスの①と比較してみてもほとんど違いが分からないレベルで、盤質の違いのせいか、それとも17/14 vs 22/20 というマト番の違いのせいか分からないが、むしろ①の方がわずかに上回っているのではないかと思えるほど。これだからアナログは面白い。尚、B面には①と同じ RL刻印があるが、①が LH/RL なのに対してこちらはなぜか RL/LH になっている。

③STAO、両面 RL刻印盤、裏ジャケ abkco無し、Winchesterプレス、盤質NM
  A: STAO-1-3363 Z14 —◁ STERLING LH/RL
  B: STAO-2-3363 Z14 —◁ STERLING LH/RL 
 今回の3枚比較で一番楽しみにしていたのがこれ。しかも盤が届いてみて初めて裏ジャケに abkco表記がないことを知ったので(←買ったときは RL刻印のことで頭が一杯でそれ以外のことは全く眼中になかった...)、偶然とはいえ 1stプレスで両面 RL刻印盤、しかもマト番も若いという、これ以上望むべくもない盤を手に入れたことになる。
 初めて聴く A面の RLカットの音はさすがボブ・ラドウィッグという感じのダイナミックなサウンドで、特にベースの音なんか、まるで弦が太くなったかのような錯覚を覚えるほどのごっつい音で入っており、聴いててめちゃくちゃ気持ちいい。これは B面も同様で、大好きなB②「ママ・ミス・アメリカ」なんかもう凄いの一言! アンプのヴォリュームを上げていってリスニングルームが地鳴り鳴動する快感は筆舌に尽くし難い。B⑤「メイビー・アイム・アメイズド」も強烈な説得力で迫ってきて思わず聴き惚れてしまうほど。もちろんこのレコードはゼップのように爆音を楽しむ盤ではないが、アコギのストロークの力強さやリズムの躍動感など、他では聴けない豪放磊落な「マッカートニー」が楽しめて言うことなしだ。私が持っているビートルズ関連の US盤の中では両面グリーン・アップルの「ラム」と双璧をなす溺愛盤だ。

 ということで、ウチのシステムにおける音質比較結果は ③>>①≧② だったが、これは①②が良くないのではなく③がめっちゃ良すぎたということ。ゼップのセカンドを聴いても明らかだが、やっぱりボブ・ラドウィッグって凄いわ。

ルーフトップのフィギュア買った...(^.^)

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 私は基本的にはアナログ・レコードを中心に楽しむビートルズ・ファンなのだが、根がコテコテのミーハーなので、レコード以外のビートルズ・グッズでも気に入ったものがあればすぐに買ってしまう。ポールの来日公演のたびに諭吉さんを何枚も握りしめてグッズ売り場の長蛇の列に並ぶのはいつものことだし、服もカバンもビートルズ関連のデザインのものを愛用している。先月もリスニングルームで長いこと使っていた掛け時計が壊れたので、B-SELSでアビー・ロード・デザインの時計(←1993年に作られたカシオ製の時計で、25年たってもバリバリ現役! さすがmade in Japan... 笑)を購入し、レコードプレイヤーの上に飾って喜んでいた。
 ちょうどその同じ頃に、ポール・ロスを癒そうと eBayで色々ビートルズ関連の物を検索していて偶然見つけて衝動買いしてしまったのが、ルーフトップ・セッションの4人を再現したフィギュアだ。ビートルズのフィギュアって、全然似てないやん!と言いたくなるようなブサイクなものが少なくないのだが、このフィギュアは4人の特徴を上手く捉えており、初めて見た時に “これエエやん!” という感じで一目惚れしてしまった。
 フィギュアといえば2年ほど前に買ったワシントン・コロシアム公演の時のヤツ、それから「ヘルプ」の手旗信号ポーズのヤツと、2種類所有して飾っているが、更にもう1セット買うて一体どこへ置くねん???と一瞬考えた。せやせや、左右スピーカーの上にそれぞれ1セットと、パソコンデスクの上で3ヶ所OKやん...となり、BUY IT NOW $180のところに$160でオファーして無事承認。送料$40はちと痛かったが、“ビートルズ関連で気に入ったものは絶対に逃さない” というのが私の信条であり座右の銘でもあるので$200を支払い、フィギュアの到着を待った。
 それから1週間ほど経ってブツが届いた。シンガポールのセラーで、めちゃめちゃデカい箱に発泡スチロールをアホほど詰めて送ってきよったので後始末が面倒だったが、フィギュア自体は文句なしの素晴らしさで、写真で見るよりも実物の方が更にカッコイイ(^.^) 私はスピーカーの上に4人を並べ、しげしげと見つめてみたのだが、4人の服装から楽器の細部に至るまで実に精巧に作られており、並べただけでもう “ゲッ バ~ック♪” という歌声が聞こえてきそうな雰囲気を湛えている。
 この1週間は “ルーフトップ祭り” ということで毎日ゲットバック・セッションの色んな音源を取っ替え引っ替えしながら楽しんでいるのだが、今日はこのフィギュアを眺めながら、ルーフトップ・コンサート50周年にかこつけて先週ライトハウスが出した「The Rooftop Concert Definitive Edition」というブートCD(←“一体何のつもり?” とヒステリックに叫ぶ例のオバハンを編集で上手くカットしてある付属DVD-Rにはワロタ...)を聴いている。DVDで映画の「レット・イット・ビー」を観るのもいいが、「ゲット・バック」関連CDを聴く時のお供にはこの “ルーフトップ・フィギュア” が最高だ(^.^)
  まぁあと数十年もすればホログラム技術が発達して自宅のリスニングルームにシェア・スタジアムやら日本武道館やらルーフトップやらのビートルズを再現できる時代が来るのだろうが、それまではスピーカーの上に飾ったフィギュアを眺めながらレコードやCDを聴くという原始的(?)なやり方で楽しむとしよう。

【おまけ】ビートルズ・ファンは 1:57~と 4:29~に注目! テクノロジーの進歩ってホンマに凄いですな...
Photo Wake-Up: 3D Character Animation from a Single Photo

The Rooftop Concert Definitive Edition / The Beatles

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 ルーフトップ・コンサートが我々ビートルズ・ファンにとって特別なのは、もちろん彼らのラスト・ライヴ(それも2年半ぶり!)というメモリアル的な側面や、ビルの屋上でライヴ演奏を行い最後は警官が登場して映画のクライマックスを迎えるというアイデアの斬新さもあるかもしれないが、何と言ってもトゥイッケナム・スタジオであれほど険悪な雰囲気だったビートルズの4人が諸々のいさかい事を一旦脇に置き、“良い音楽を作る” という一点に集中して世界一のロックンロールバンドとしての底力を存分に見せてくれたというのが一番の理由ではないかと思う。特にあれほどこの企画に否定的だったジョージが実に楽しそうに(←もうノリノリですやん!)ギターを弾いているのを見ると、こちらまで何だか嬉しくなってくる(^.^)
 そんな大人気のルーフトップ・コンサートだけにブートレッグも色んなレーベルからリリースされており、かく言う私もイエロードッグに始まってミスタークローデルにムーンチャイルドとCDだけでも3種類持っていたし、何と言ってもHMCから出た「レット・イット・ビー」の決定版と言うべきサントラ盤があるので、先週ライトハウスのHPの告知で “最大限ステレオで収録されたルーフトップ・コンサートの新作が出る” と知った時も “またかいな...” という感じで正直あまりピンとこなかった。
 私の注意を引いたのはむしろそれに付属するDVD-Rの方だった。映画のシーンから通行人のインタビュー場面及びその音声を編集によって完全にカットし、違和感なく演奏に集中して見れるとのことだったのでコレは面白そうだと思い、結局ボーナス・ディスク目当てでこの「The Rooftop Concert Definitive Edition」を購入。こういう “グリコのオマケ” 的商法がライトハウスの強みの一つだと思うが、ファンとしてはボーナスであろうが何であろうが楽しめればそれで良いのである。尚、このブートは発売1週間で300枚を完売したようで(←このメーカーの品薄煽り商法はいつものことだが、それにしても今回は驚異的なハイペース...)さっきヤフオクを覗いたら4倍のプレミアが付いて1万円にまでハネ上がっていたのにビックリ。どうせそのうち “海外から奇跡の50セット緊急入荷” すると思うのだが...(笑)
 届いたブツでまず手に取ったのは当然オマケDVD-Rの方で、早速視聴開始。映像は非常にキレイで HMC盤DVDと比べても何ら遜色のないレベル。これがオマケ扱いでエエんかいな。そして問題の通行人インタビューのシーンだが、①「ビートルズは曲も良いし歌も上手い、愛すべきグループだ」と褒めちぎる老紳士、②「何のつもりなの!」とヒステリックに叫ぶオバハン、③「仕事疲れも忘れるわ」と喜ぶ美人OLさん、④「場所が場所ならいい音楽だが、ここには合わない」とあくまでも冷静沈着なビジネスマン、⑤「フェンタァースティック!」と大絶賛のケバいおねーさんたち、⑥「タダで聴けてラッキー」と喜ぶノーテンキなおっちゃん、⑦「あれ新曲?いいね」と気さくに答えるタクシーの運ちゃん... という個性溢れる7人衆(?)のインタビュー・シーンをすべて、音声はインタビューの入っていない同音源をアフレコさせ、映像は野次馬がビル屋上を見上げるシーンに差し替えるかバッサリとカットするかして、実にうまいこと編集で消してあるのだ。
 だからこれまではポールの歌声に酔いしれていると突然オバハンの例の叫び声で “そうそう、コレは映画なんや...” と現実に引き戻されていた「アイヴ・ガット・ア・フィーリング」が、この神編集のおかげでビートルズの歌と演奏に集中できるので、観ている方としてはストレスなく楽しめるというワケだ。こんなボーナス・ディスクがタダで付いてくるのだから、⑥のおっちゃんではないがホンマに得した気分だ。
  

 あまり期待していなかった(←失礼!)CDの方もフタを開けてみれば私の予想を上回る出来で、トータル45分というのもちょうどいい長さだし、何よりも音質が素晴らしくて実に聴きやすい。確かにカメラA、B1、C、Dと(←ビタミンかよ...)全音源を収録するのも意義があることかもしれないが、少なくとも普通にルーフトップ・コンサートを良い音で楽しむのなら現時点ではこのLH盤がベストだと思う。
 尚、一連のゲットバック・セッションを題材にしたビートルズの新作映画が製作されるというニュースがルーフトップ・コンサート50周年記念日の1月30日に発表された。クイーンの大ヒット映画「ボヘミアン・ラプソディ」がラストのライヴ・エイドのシーンにクライマックスを設定して作られていたように、ビートルズの新作映画もラストのルーフトップ・セッションで大団円を迎えるという作りになるであろうことは容易に想像がつくが、ポールとジョージの口論とかヨーコの存在といったダーク・サイドの部分をどのように描くのかが大いに気になるところ。ただ、クイーンの二匹目のドジョウを狙って美談で塗り固めた安易なエンターテインメント作品にするのだけはやめてほしいと思う。
NEW Beatles "Let It Be" movie is NOT the project we expected!


【おまけ】1984年の4月14日深夜にテレビ放送された「レット・イット・ビー」で①の老紳士の字幕が “解散はつらいだろうが、あの4人には個性がある。” となっていたのだが、誤訳にも程がある...(>_<)  1969年1月30日時点でビートルズの解散を知っているとは、この爺さんは未来から来たタイムトラベラーか?
         

ポールの両国ボックス

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 日本のブートレッグ業界にエンプレス・バレイ(←以下EVと略す)というメーカーがある。ポールの来日公演ブートでは、EVはまず無指向性マイクを使ったオーディエンス録音盤を出して様子を窺い、他のメーカーの盤がほぼ出揃ってポール祭りが一段落した頃に “満を持して” と言う感じで、サウンドボードに迫る生々しさを誇る IEM(In-Ear Monitor、略してイヤモニ)マトリクス音源盤と単一指向性マイクを使ったオーディエンス録音盤をセットにして詰め込んだ高額なボックス・セットをリリースする、というのがここ数年のリリース・パターンになっている。
 私は2013年と2015年武道館の EVボックスは買ったが、2017年のは買わなかった。EVの(というか、タッグを組む Xavelの、と言った方がいいかも...) IEM録音技術は群を抜いて凄いのでマトリクス盤単独で出してくれれば迷わず “買い” なのだが、先行発売オーディエンス録音盤とほとんど変わらない音質の単一指向性マイクによるオーディエンス録音盤とセットにした抱き合わせ販売、更に熨斗紙やら何やらといったどーでもいいボックスの装丁に凝って値段を吊り上げるという姑息な売り方を見て、いくら何でもコスパが悪すぎると考えたからだ。だから今回も EVに関しては先行発売のオーディエンス録音盤だけ買って、ボックスは見送るつもりだった。
 しかし、その時の気分次第で本能の趣くままに生きるのが私という人間であり、言うことやることが二転三転するのは日常茶飯事...(笑) いつもブートを通販で買っている Kent から両国ボックス発売のお知らせメールが届いたのは確か12月の半ば頃だったが、ちょうど色んなメーカーから出ている両国ブートを聴いたりリトグラフを額に入れて飾ったりして気持ちが盛り上がっていたのと、ボーナス直後で気持ちが大きくなっていた(笑)こともあって、“他でもない両国の記念やし、1万円ちょっとやったらまぁエエか...” という軽いノリでこの両国ボックスを注文してしまった。
 ボックスが届いて真っ先に聴いたのはもちろんマトリクス盤である。しかも今回は“ステージ上に設置されたモニタリング用スピーカーのステレオ・ライン音源、複数のステレオIEMソースなどを正真正銘プロ・ユースの機材を用いてステレオ・ミックス” とインフォに書いてあったので(←ライン音源て... ホンマかいな)一体どんな音に仕上がっているのか興味津々だった。
 はやる気持ちを抑えながらプレイヤーにセットしてボタンを押すと、スピーカーから飛び出してきたのは私の予想を遥かに上回る生々しいサウンドで、生半可なオフィシャル・ライヴ盤なんか軽く超えてしまうんじゃないかと思えるぐらいのスーパーウルトラ高音質。一番の魅力は何と言っても生のライヴ会場や普通のオーディエンス録音盤では聞き取れないような細かい音まで驚くほどクリアーに聴けるところで、大袈裟ではなくこのマトリクス音源はブートレッグの概念を完全に覆してしまうほどの凄い音だと思った。
 因みにこれより先に出たライトハウス(←以下LHと略す)のイヤモニ録音盤と聴き比べてみたところ、どちらも高音質で実にハイ・レベルなライヴ・サウンドなのだが、後出しのEVの方がマスタリングにじっくりと時間をかけただけあって、より腰の据わった押しの強いサウンドに仕上がっている。ドームとは違って非公開で行われた当日のサウンドチェック(←10/30の非公開リハーサルの時と同じく「アイ・ドント・ノウ」に時間を割いてた...)の録音に関しても同様だ。ただ、両者の差はそれほど大きなものではないので、コスパを考えればLH盤に軍配が上がるだろう。
Paul McCartney - I Don't Know [Rehearsal at Kokugikan, Tokyo - 05-11-2018]


 オーディエンス録音盤の方はやはり先行発売盤と同じ位置で録音されたと思しき音源で、「カム・オン・トゥ・ミー」が終わった後に “東京ドームがどーたらこーたら...” という男の低いボソボソ声(←コイツほんまにウザい... お喋りがしたかったらどこか他所でやれ!)が入ってるところとか、全く同じ。マイクは違えども高音を強調してエコーを深めにかけた音作りも同じで、私にはあまり違いが分からなかった。まぁこれは十分想定の範囲内だったのでやっぱりなぁ...という感じ。
 というワケで、まともな経済感覚の持ち主であればLH盤一択だと思うが、私のように “半分ビョーキ” レベルのビートルマニアにとってはこの両国ボックス・セットの IEMマトリクス音源は一聴の価値があると思う。抱き合わせのオーディエンス録音盤をオマケと考えても、「本番のマトリクス盤10,000円 + サウンドチェックのマトリクス盤2,800円 = 12,800円」と考えれば納得の逸品なのだ。

ポールの両国 “でらサイコー” ブート決定戦

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 ポールの両国ライヴの IEMマトリクス盤のベストは EVで決まりだが、オーディエンス録音盤となるとまさに群雄割拠というか、各ブート・メーカーがしのぎを削っているという感じで、私の知る限りでは “圧勝盤” というのは存在しない。ライヴから3ヶ月が経ってもうこれ以上新しいブツがリリースされる可能性はほとんどなくなったので(←まさか TJとか出ぇへんよな...)、今回は私が買い漁った両国オーディエンス録音盤の中から極私的 “でらサイコー” ブートを選んでみようと思う。
 それではまず最初にそれぞれの盤の簡単なインプレッションを購入順に書いてみたい。(このブログは個人の感想であり、各ブートの優劣を保証するものではありません... 笑)
①Ryogoku 2018(Uxbridge)
 私が最初に手に入れた両国ブートは LHの傍系 CD-Rレーベルである Uxbridgeから出たこの盤。CD-Rということであまり期待せずに聴いたのだが、2階席からの録音とは思えないようなサウンドにビックリ。もちろんサウンドボードも裸足で逃げ出す... というタイプの録音ではないが、リアリティー溢れる臨場感が絶品で、実際に会場で聴いた音を思い起こさせてくれる、とでも言えばいいのか、とにかく見事なバランスで録音されている私的お気に入り盤だ。インフォに“聞き心地が抜群!” とあったが、まさに言い得て妙だと思う。

②Freshen Up Ryogoku Kokugikan 2018(Piccadilly Circus)
 ピカデリーのブートは当たり外れが激しい。最近は2015年、2017年と安定して良かったので大いに楽しみにしていたのだが、残念ながら今回は私の好みとは違う平板な音作りになっており、他の両国ブートのレベルの高さやコスパを考えると正直ちょっとキツい。DVD裏ジャケの “One On One Japan Tour” という信じがたい誤表記も含め、今回のピカさんは一体どうしたのだろう???と心配になってくる。ただ、直近3回の来日で全公演の DVDを出してくれているのはココだけだし(←今回のマルチカメラは切り換えが多すぎて見にくかったけど...)、ポールに関してはガチなレーベルなので、次回に期待したいと思う。

③Freshen Up At Ryogoku Kokugikan Omnidirectional Source(Empress Valley)
 ハイエンド無指向性マイクを使って録音されたエンプレス・バレイの先行発売盤。前にも書いたように両国ボックスに入っている単一指向性 MK4マイクと同じ場所で録音されており、音もほとんど変わらない。何故か EVのオーディエンス録音は周りに喋ったり騒いだりするアホな客が居合わせる不幸なケースが多いが、今回のこの両国オーディエンス盤に関しては標準語でボソボソ喋る男の低い声(←キモい...)以外はほとんど気にならない。それよりも、私にはエコーが強すぎてポールのヴォーカルに距離感を感じてしまうのが最大のネックで、悪くはないが私好みの音ではなかった。

④Ryogoku Kokugikan 2018(Lighthouse)
 ライトハウスのこの盤は生々しい音が実に気持ちいい。後で分かったことだが、以下の⑤~⑧までみんなコレと同音源(←「1985」アタマの部分に“デカいデカい...”とそれこそデカい声のお喋りが入っている部分を聞けば明らか)だったのにはビックリだ。インフォには “さる高名なテーパーがネット上に上げた音源を直接提供されたもの” とあるので、他レーベルのものはすべてネットからダウンロードした同音源をそれぞれリマスターしたものということになるわけだ。録音位置は「桝席 正 13側」とのことなので私のすぐ後ろで録音されたことになるが(←ということは「1985」が終わった直後の “バ~ン ドォンザ ラァ~ン♪” っていうアホ声はまさか...)、リアリティーと臨場感を非常に高い次元でバランスさせた名録音だと思う。

⑤ポール・マッカートニー at 両国国技館(Nanker Records)
 LHの④と同じ音源で、リマスタリングによる違いもほとんどない。まぁいじる必要がないほど元の録音が優れているということなのだろう。CD-R盤なので他レーベル同音源プレス盤があればコレを買う必要は全くない。

⑥Ryogoku Kokugikan Mein Show(Phoenix Record)
 ヤフオクやメルカリで短期間に売りまくった謎のレーベル。興味本位に買ってみたら発送元は北海道だった。CD-R盤だがメディアは太陽誘電製という拘りブート。これもやはり LHの④と同じ音源だが、LH盤よりもやや臨場感が強い音作りだと感じた。

⑦Live At Ryogoku Kokugikan(Supersonic Masters)
 この Supersonic Masters も今回初めて登場した未知のレーベルだが、家内制手工業で作ったような⑥とは違い、れっきとしたプレス盤。これも LHの④と同じ音源だがリマスタリングによって更にリアリティーが増しており、今回の聴き比べでは一番私好みの音に仕上がっていた。Supersonic盤は名古屋もこれと同様に音圧と臨場感を高いレベルで両立させた高音質な仕上がりで、今回の来日ブートではちょうど2015年の SNEみたいな超お買い得のレーベルだと思う。大推薦!!!

⑧One Night In A Sumo Arena(Moonchild Records)
 Moonchild Records というのは EVと同じく西新宿のブラインド・フェイスというブート屋が作っており、独自音源で差別化を図る EVとは違って、ネットでダウンロードした音源を1,000円で売ることに特化した価格破壊型廉価盤レーベルだ。これもやはり LHの④と同じ音源だが、入念なリマスタリングでかなりオンな音に仕上がっている。何よりも面白いのは同じ BF系列でありながら、皮肉にもハイエンドマイクを使った EVのオーディエンス録音盤を軽く凌駕してしまったこと。他レーベルも含めて、コスパを考えればコレが断トツの№1だろう。

⑨Ryogoku Kokugikan 2018 Definitive Master(Uxbridge)
 ほとんどの両国ブートが出揃った12月後半に LHが Uxbridgeレーベルからリリースした CD-R盤。LH自身のプレス盤④や IEM盤、それに EVのボックスの後でコレを出す意味がよく分からなかったが、どうやら “2階正面ロイヤルボックスの真後ろという特異な録音ポジション” というのがウリらしい。インフォには “ステレオ感が強い” とか “マイルドなサウンド” とか書いてあったので(←まさに “物も言いよう”ですな...)おおよその見当はついていたが、実際に聴いてみると音が遠くてやっぱりなぁ... という感じ。それより何よりこの盤の最大の問題点は近くに大声で遠吠えしまくる観客がいることで、とてもじゃないがスピーカーの大音量では聴いていられない。ハッキリ言ってハズレとしか言いようがないナンジャラホイ盤だった。

ということで、上記9枚の中では私は①④⑦⑧がお気に入り。④⑦⑧は①と比べると音の近さという点で一日の長があるので、元々同じ音源でリマスタリング違いの④⑦⑧がトップ3入賞ということになるが、どれか1枚となると非常に難しい。敢えて書けば「あまり音をいじってなくて聴きやすい④」「音圧アップで迫力満点の⑦」「リマスタリングでオンな音像を作り上げた⑧」という感じで、ここまでくると後はもう個人の音の好みの範疇になるだろう。私としては僅差で⑦の Supersonic Masters を両国オーディエンス録音の “でらサイコー” ブートと認定したい。
      

ポールの2018ドーム・ボックス

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 去年の12月中頃だったか、予約しておいたポールの両国ボックスがもうすぐ届くということで “しめしめ、これでクリスマスの3連休を心ゆくまでポール三昧で満喫できるわい...(^.^)” とほくそ笑んでいた私の元へ、今度はドーム・ボックス予約受付のメールが届いた。東京ドーム2日間+ナゴヤドームの計3公演分のサウンドチェック+本番を IEMマトリクスと単一指向性マイクによるオーディエンス録音で 3×3 + 3×3 = 18枚、更に東京ドーム初日の前日に非公開で行われたリハーサルも IEMマトリクス録音で収録した2枚を加えたCD 20枚組セットで、お値段は何とビックリの48,000円だ。
 最初のうちは、オフィシャルの「ワイルド・ライフ」と「レッド・ローズ・スピードウェイ」スーパー・デラックス・エディションが同時に買えてしまうという、まるで人をバカにしたようなボッタクリ価格を見て思わず “誰が5万円も出すねん、アホか!” と鼻で笑っていたのだが、その数日後に届いた両国ボックスの凄まじいまでの高音質に完全 KOされてすっかり頭に血が上ってしまった私は “自分が参戦したナゴヤドームはやっぱり最高の音で手元に残しておきたいし、東京ドーム2日間分の音源も(←自分が行ってないコンサートなので思い入れがなく、EVの先行盤 CDとピカデリーの DVDしか買ってない...)高音質で手に入るならまぁエエか...” と考え、衝動的に予約ボタンをクリック。両国ボックスに続く前言撤回だが、君子は豹変するのである。ボックスの発送は大晦日だったが、何と1月1日のお昼に我が家に届いた。クロネコさん、元旦から仕事してくれてありがとう!
 聴いた感想としては両国ボックスの時と全く同じで、“ドーム3公演 + 前日リハ” を捉えたマトリクス音源のスーパーウルトラ高音質がとにかく凄いの一言! これだけでも大枚を叩いた価値があるというものだ。因みに前回取り上げた両国ボックスのマトリクス盤は LH盤とそれほど変わらないレベルだったが、このドーム・ボックスに関しては前日リハといいナゴド本番といい一聴して分かるレベルで LH盤を軽く凌駕しており、ハッキリ言ってこれ以上望めないんじゃないかと思えるぐらい素晴らしい。お金に換算すると「本番 IEM 12,000円×3 + 前日リハと各日サウンドチェック IEM 3,000円×4 = 48,000円」という感じ。オーディエンス録音盤は論ずるに値しないのでパス(笑)
 で、まず10/30の非公開リハーサルだが、本番ではついに演らなかった「アイ・ドント・ノウ」を何度も何度も試していたりとか、“イチバン!” という掛け声を「カム・オン・トゥ・ミー」のイントロに持ってくるアレンジを煮詰めていく過程(←Good idea! とか言ってる...)が聞けたりとかで、ファンとしてはあの完全無欠なエンターテインメント・ショーに向けての試行錯誤の様子が垣間見れて非常に興味深いものがある。尚、“イチバン!”は余程気に入ったとみえて、このリハの最中に何度も連呼しているのが微笑ましい。又、「ヒア・トゥデイ」を一部崩して歌ったり(←いくらリハとはいえ、これはちょっと興醒め...)、「オブラディ...」のサビの部分の掛け声を “brahhh!” と誇張するか否かの打合せなんかもバッチリ聴けて面白い。リハの最後をポールが “それでは明日もまたここ東京ドームでお会いしましょう~♪” とDJ風のノリでシメるところも最高にカッコ良かった。
 本番ステージでも、例えば 11/8のナゴヤドームで「マイ・ヴァレンタイン」の時にステージ後方スクリーンがフリーズしてしまうというトラブルがあったが、曲の間奏に入った時にポールが “フィルムをどーたらこーたら...” と指示を出している声も微かに聞こえるし(2:32あたり)、10/31の東京ドーム初日の同曲前の MCで Nancy をわざと“ナンシィ”とカタカナ風に発音しておきながら歌う前に自分でウケて吹き出してしまうところとかもバッチリ捉えられており、オーディエンス録音盤では全く気付かないような細かい音まで聞けて実に面白い。
 結局今回のボックス2セットで約6万円の出費となったワケだが、ビートルズ関連では金に糸目は付けない主義の私としては最高音質のマトリクス音源を手に入れることができただけで満足(^o^)丿 ただし、両国と名古屋だけでいいというなら、イヤモニ・マトリクス録音は両国を LH盤で名古屋を TJ盤、オーディエンス録音は両国を Moonchild盤で名古屋を Supersonoic盤で揃えれば、8,000円でお釣りがくるコスパ最強の組み合わせになると思う。

「Wings Over America」マト・オール -1U のUK盤ゲット

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 「Wings Over America」の US盤を買った話はこの前書いたが、家に帰って手持ちの UK盤を引っ張り出してきて両者の音を聴き比べたりジャケットの細かいデザインを比較したりしていた時に、ふと “俺の UK盤「オーバー・アメリカ」ってマトはどーなってたっけ?” と思ってチェックしてみると、“1U/2U/3U/2U/1U/1U” だった。
 私はビートルズ及び各メンバーのソロのレコードは可能な限りマト番の若い盤を買うことにしており、このレコードに関しては購入当時に参考にしていた「Beatles' Vinyl Made in UK」というガイド本(←監修は和久井光司氏)に “初版のマトリクス・ナンバー末尾は全面とも「-1」だが、それはサンプル盤のみという説もある。” と書いてあったのでサンプル盤を探してみたが全然見つからず、仕方なく盤質の良いアーリー・プレス盤を買ってお茶を濁したまま、気が付けば10年以上の年月が過ぎ去っていたのだ。
 現在持っている盤はコンディションが良いのでそれなりの良い音で鳴ってくれてはいるが、こーなってくると “ひょっとするとマト・オール1盤やったらもっと生々しい音が聴けるんちゃうやろか?” とついつい考えてしまうのがコレクターの哀しい性というもの。というワケで今回のUS盤祭りが引き金になり、再びUK 1stプレスのマト・オール1盤を探してやろうと思い立った。
 そういえば B-SELS で US盤を買った時、店頭在庫に “2U/1U/1U/1U/1U/1U” (←惜しい!!!)というマトでスタンパーもめっちゃ若い UK盤があったので、“まずコイツを買ってディスク2を差し替え、更にディスク1が “1U/1U” の盤をどこぞから探してきて再度差し替える...” という2段階作戦も考えたのだが、生来面倒くさがり屋の私は “どーせならオール 1U盤を探して1発で解決したろ...” と考え、早速 Discogs と eBay で検索してみたところ、1Uの含有率(?)は20~30%ほどでマトは 2Uや 3Uのものが多く、中には 4Uなんて盤も珍しくない。特にディスク1(YEX963/964)の 1U/1U盤はめちゃくちゃレアらしく1枚も出ていない。
 “やっぱり滅多に出てけぇへんサンプル盤を気長に待つしかないか...” と半ば諦めながらもダメ元で eBayのローカル・サイトをチェックしたところ、何と eBay UKでマト末尾がオール 1Uの盤を発見! ジャケットは VGでスパインが少し傷んではいるものの、盤質は Ex- なので問題ない。念のために “ホンマにマトが全部 1Uやったら買うからもう一回確認してくれへんか?” というメッセージをセラーに送ったところ、“I can confirm the matrix numbers are correct.(マト番確認したよ。)” という返事が返ってきたので即落札。結局送料込みで£25、日本円にすると約3,500円(←イギリスの EU離脱騒動のおかげでこの時は£1=138円だった...)ぽっきりで買うことができた。
 届いた盤を確認するとサンプル盤のステッカーは貼ってなかったので、バラで買って組み合わせたという可能性はあるものの、和久井氏の言う “マト末尾全面「-1」はサンプル盤のみ” という説は怪しくなってくるが、果たして真相は如何に...? で、気になる音質を確認するために、まず一番差が大きいであろうC面(1U vs 3U)で手持ちの盤と聴き比べてみることにした。
 早速両方の盤を取り出してみたところ、一目でデッドワックス部分の幅が違うことに気が付いた。“え~ 何で???” と思って計ってみると、1U盤が 1.5cmなのに対し 3U盤は 2.3cmもあるのだ。理論的にはデッドワックスの幅が狭い方が情報量が多いので音が良いことになるが、そういった要素も含めて興味津々である。
 実際に盤に針を落として聴いてみたところ、手持ちの UK盤はもちろんのこと、この前取り上げた LAプレスの US盤やリマスターCD、それにハイレゾ音源も含めてこれまで聴いてきたありとあらゆる「オーバー・アメリカ」とは明らかに違うごっつい音がスピーカーから飛び出してきてビックリ(゜o゜)  私が「オーバー・アメリカ」に対して抱いている音のイメージは “音が遠い” というネガティヴなものだったが、このリアル 1stプレス盤はとにかく音圧が高くてめっちゃ音が近い。例えば A②「レット・ミー・ロール・イット」のリッケン・ベースの音なんてもう凄味を感じるぐらいの重低音で、ズシリ、ズシリとまるで軍隊の行進のようなのだ。これではまるで “ラウドカット” ではないか! しかし私の知る限り、「オーバー・アメリカ」にラウドカット盤が存在するなんて話は聞いたことがない。不安に思った私は B-SELS にこの盤を持ち込んで確かな耳を持つ店主の酒井さん(←やっぱり楽器を弾く人は耳が違います...)と一緒に検証することにした。 (つづく)

【爆裂ラウドカット】Wings Over America オール -1U盤

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 私は「オーバー・アメリカ」のラウドカット疑惑(?)にオトシマエをつけるため、盤が届いた2日後に早速 B-SELS を訪ねた。“UK盤「オーバー・アメリカ」のマト・オール1盤を手に入れたんですけど、一緒に聴きませんか?” と言うと店主のSさんは目を輝かせながら(笑)“ぜひ!” と2つ返事でOKして下さった。
 私は比較対象にもう1枚の「オーバー・アメリカ」も持参しており、まずはマトの差が大きくてデッドワックスの幅も異なるC面で試してみようということで聴き比べスタート。この面はご存じのとおり「ピカソズ・ラスト・ワーズ」「リチャード・コーリー」「ブルーバード」「アイヴ・ジャスト・シーン・ア・フェイス」「ブラックバード」「イエスタデイ」と続くアコースティック・セットなので、アコギをこよなく愛するSさんがどのような反応をされるかを興味深く見守っていると、一言も発せずにずーっと目を閉じて聴き入っていたSさんが「ブラックバード」で “高音の伸びが全然違いますね! いや~、コレは凄いですわ!” とコーフン気味におっしゃった。
 そこで一つのアイデアが浮かんだ。私が持参した“1/1/1/1/1/1” と “1/2/3/2/1/1” に加えて、お店にある「オーバー・アメリカ」のUK盤2枚“2/1/1/1/1/1” と “2/2/2/1/1/1” を併せた計4枚の中から選んで比べてみようというのだ。これにはSさんも大賛成で、まずはC面に的を絞ってマト2、マト3と順に聴いていく。因みにデッドワックスの幅の件だが、お店にあった定規でそれぞれ計ってみると、マト1とマト2が1.5cmでマト3が2.3cmだった。となると理論的にはマト1とマト2は同じ音がすることになる。
 ところが聴いてみた結果はお店のマト2(2/1)の方が私のマト1(1/1)よりもおとなしく感じられたのだからアナログは奥が深い。続いて聴いた私のマト3(3/2)もそれなりに良い音なのだが、やはりマト1の後に聴いてしまうと物足りなく感じてしまう。一通り聴き比べが終わると、Sさんが “「ブラックバード」をもう1回いいですか?” とおっしゃったので(←この曲が大好きだそうです...) “何度でも気のすむまでどうぞ!” とエンドレス試聴に突入(笑)  結局1時間半ほどC面を繰り返し聴いて、“1/1 >> 2/1 ≒ 3/2” という結論に達し、“じゃあ次はA面に行きましょう。” ということになった。
 C面が“アコースティック・サイド”ならA面はバリバリのロック・サイドである。マトは1と2しかないが、同じマト1でも 1/1盤と1/2盤に違いがあるのかどうかにも興味があったので、こちらも私が持参した 1/1盤と1/2盤、そしてお店の2/1盤の計3枚を聴き比べることにした。
 まず 1/1盤だが、ライヴ始まりの歓声の大きさからして明らかに違う。それまで聴いてきた「オーバー・アメリカ」を数万人収容の巨大スタジアムとすれば、この1/1盤は武道館か国技館クラスのアリーナである。それぐらい音が近いのだ。そしてA①「ヴィーナス・アンド・マース」が始まり、メドレーの「ロック・ショウ」に突入した瞬間の爆裂感には2人とも思わず身をのけぞらせた(←これホント!)。Sさんは “今まで聴いた中で最高の「オーバー・アメリカ」です!” と大喜びで、“まるでハードロック・バンドのライヴを聴いているみたい” とおっしゃったが、実に上手い例えである。確かに、気が付くと2人とも軽くヘッドバンギングしていた(笑)
 更に驚いたのは「ジェット」の冒頭部分のホーンの厚みが全然違うことで、音の押し出し感がハンパない。もう一つの大きな違いはドラムの音で、他のマトの盤では奥に引っ込んでいたジョー・イングリッシュが前に出てきて、まるでレッドブルを一気飲みしたかのような(←これこそまさに Gives You WINGS!!!)豪快なドラミングを聴かせてくれるのだ。Sさんも “スネアがスコーン!と突き抜ける感じが全然違いますね!” と満面の笑み。とにかく音が近いので、まるでスタジオ・ライヴを聴いているかのような錯覚に陥ってしまう。A⑤「メディスン・ジャー」でもポールの“よく歌う” 闊達なベース・ラインがまるでヘビー級ボクサーのボディーブローのようにズンズン腹に響いてめっちゃ気持ちイイ(^o^)丿 “コレはどう聴いてもラウドカットでしょ!” とおっしゃったので “やっぱりそう思いますか。僕もそう思ったんですけど自信がなくて... でもこれで確信に変わりました。これは間違いなくラウドカットですね!” と言いながらB面に行く。
 B①「メイビー・アイム・アメイズド」のポールのヴォーカルが実に力強い。バックのコーラスの広がり方も一回り大きく感じるし、ジミーのギター・ソロも一歩前へ出てきて弾いているような感じ。更にB②「コール・ミー・バック・アゲイン」の音密度の濃さには2人とも “おぉ~!!!” と声を上げてしまったほどで、とにかく音がスカスカなイメージのあった「オーバー・アメリカ」とは全く別物の、熱いライヴの音像が我々2人の前に屹立しているのだ。ここからはあくまでも私とSさんの想像だが、UK盤「オーバー・アメリカ」のディスク1だけマト1/1盤が極端に少ないのは、ちょうど「ラバー・ソウル」モノのマト1盤と同じ理由で発売後すぐに差し替えが行われたからではないか。この仮説が正しければ諸々の音の違いがすべて説明がつくのだが...
 1/1盤の次は 1/2盤だ。同じマト1なので 1/1盤と1/2盤のA面は同じ音がするはずなのだが、聴いてみた結果は1/1盤の圧勝で、これには2人ともビックリ。スタンパー・コードが 1/1盤の「P」に対して1/2盤は「GDP」とかなり開きがあるのでそのせいではないかというのがSさんの推測だが、なるほどそれなら筋が通る。スタンパー・コードが2桁までと3桁ではかなり音が違うらしいので、ましてや1桁と3桁ならその差は歴然だ。
 最後に 2/1盤を聴いてみたが、こちらはスタンパー・コードが「1G」で、マト2の中では最初期盤ということになる。聴いてみた結果は 1/2盤とほとんど変わらずで、3枚比較の最終結論としては “1/1 >>> 1/2 ≒ 2/1”だった。“いやぁ~、「オーバー・アメリカ」のラウドカット、最高ですわ。帰ったら神棚に飾ろうかな...(^.^)” と言うと Sさんも “エエもん聴かしてもらいました!” と大いに喜んでおられた。
 結局3時間にわたって同じレコードを何度も何度も聴きまくったワケだが、時の経つのを忘れるほど楽しい至福のひと時で、私もSさんもホンマにビートルズが好きなんやなぁと改めて実感。そもそも B-SELS でUS盤にハマらなければこのマト・オール1・リアル 1st プレス盤を買うこともなかったワケだし、「オーバー・アメリカ」のUKオリジナル盤のマト違い4種類をじっくり聴き比べできる場所だって日本中探してもそんなにないだろう。ここ数ヶ月の充実したレコード・ライフを考えると、このお店には足を向けて寝れない。そんなレコ屋が地元の奈良にある幸せ... priceless (≧▽≦)

【試聴盤データ】上段がマトリクス枝番、下段がマザー番号とスタンパー・コード
① 1U   1U   1U   1U   1U   1U
  3P   2RR   1TT  2AO   5TO  2RR

② 1U   2U   3U   2U   1U   1U
 4GDP 1GRA  1GHD  4GHA   3PD  3OO

③ 2U   1U   1U   1U   1U   1U
 1G   2GR   1GD  1GR   1MD  3RL

④ 2U   2U   2U   1U   1U   1U
 2MD  2TT  2GGP  5GGP  3GM  2OG

「ホワイト・アルバム」のインド盤

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 私がガイド本「アナログ・ミステリー・ツアー」をきっかけにビートルズのインド盤に興味を持ち、実際に手に入れて聴き始めたのは2年半ほど前のことで、もちろんこのブログでも「ラバー・ソウル」「リヴォルヴァー」「赤盤」「青盤」の4枚を取り上げたのだが、それ以降もソロ作品も含めて数枚をゲット、レコード棚にもインド盤のコーナーを新設するなどして楽しんできた。
 しかし最近は不漁続きで初期の盤は全く市場に出てこないし、仮に出てきたとしても $200とか $300とかいったボッタクリ価格でハナシにならない。「ラバー・ソウル」以降の盤は初期の盤よりは入手しやすい傾向にあるが、そんな中で唯一「ホワイト・アルバム」だけは超入手困難で、あの横野氏のHPにも載っていない。eBayでは $700とか $1,500 といった非現実的な値付けがなされており、とてもじゃないが堅気の人間が買える金額ではない。というワケでインドのホワイトは私にとってはまさに “インド盤最後の秘境” であり、“インド盤蒐集における最大の難関” として “万が一、手に入れることができたらめちゃくちゃラッキー” という、その程度の認識だった。
 私は全く期待せずに「ホワイト・アルバム」のインド盤を Discogs の“ほしい物リスト” に入れたままずーっと放置しておいたのだが、年明け早々にそんな私の元にDiscogs から “ほしい物リストのアイテム1点が出品されています。” というお知らせメールが届いた。インドのホワイト? どーせまたアホみたいな高値に決まっとるわ... と思いながら値段を見ると、何とたったの €140だ。まぁどーせ傷だらけのガチャ盤やろ... と思ってコンディション表記を見ると VGだったが、“most of the record sounds VG+” という補足説明が付いている。“photos available” とのことだったのでモノは試しと写真をメールで送ってもらったところ、予想に反して盤面はキレイそうだ。まだ一抹の不安はあったが、そうやって躊躇している間に誰かに買われてしまったらきっと後悔するだろうと考えた私は腹をくくって「注文する」をクリック。ギリシャのセラーということで送料は €12とリーズナブルで、日本円にして約18,000円で買うことができた。
 このインド盤「ホワイト・アルバム」のセンターレーベルに描かれているリンゴは一目でインド盤とわかるユニークなもので、特に裏面のホワイト・アップルのデザインなんかいかにもインドという感じのおおらかさで描かれており、思わず頬が緩む。それと、私はこれまで全く気付かなかったのだが、この盤を B-SELSの Sさんに見せたところ、じーっとレーベル面を凝視しておられたので “どうしたんですか?” と尋ねると、“レーベル面の文字が一字一句全部手書きですよ、これ!” とのこと。そんなアホな... と思いながらも自分の目でチェックしてみると、確かに同じ文字なのに微妙に違うものがいくつかあってビックリ。印字と見間違うくらいに細かい文字をレーベル面にびっしりと書いたインド人も凄いが、それを一瞬にして見破ってしまった Sさんの眼力もこれまた凄い。さすがは “レコードのプロ” である。
 「アナログ・ミステリー・ツアー」の中ではこのインド盤の評価はイマイチで、“他のタイトルでは驚くような音を聴かせていたインド盤ではあるが、本作だけはなぜか精彩を欠く印象。” とある。ただ、本に掲載されているのはディスク1(つまりAB面)のみマト末尾に T1 が付いたローカル・リカットというセットだが、私が手に入れたのはディスク1両面に加えてディスク2の表も併せた計3面(ABC面)のマト末尾がそれぞれ T3/T1/T1 のいわゆるローカル・リカットで、4面のみ UKマザー使用のマト1になっているセット。本によるとローカル・リカットの音は “今一つ新鮮さがなく”、その一方で UKマザーの音は “ガサツな雰囲気” とあるが、何を言いたいのかイマイチよく分からない。そもそもガサツって一体どんな音やねん???  とまぁこのようにガイド本の評価は低いが、果たして私の「ホワイト・アルバム」は良い音で鳴ってくれるのだろうか???  (つづく)

ビートルズのインド盤特集リターンズ!

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 「ホワイト・アルバム」インド盤の音は果たしてどうなのか… という謎を解明すべく早速試聴開始。先ずはローカル・リカットされたA~C面だが、“悪くはないがUKオリジ盤には及ばない” というのが正直なところ。キレッキレで音のエッジがシャープなUK盤に対し、このリカット盤の音は丸みを帯びているような感じで音圧もそれほど高くない。一番わかりやすいのはA②「ディア・プルーデンス」で、ベースの音を聞けば違いは歴然だし(←UK盤恐るべし!)、C⑥「ヘルター・スケルター」のリンゴのドラミングがめっちゃおとなしくてとてもじゃないが指にマメができるような演奏には聞こえない(笑)  B⑥「ドント・パス・ミー・バイ」も音のバランス的にフィドルが小さくて演奏の中に埋没してしまっており、彼らが意図した演奏にはなっていないように思う。
 しかしその一方でスイート・スポットを捉えたかのようにピタリとハマった時は “おぉ、これは!” と思わず唸ってしまいそうなぐらい素晴らしい音を聞かせてくれるのがインド盤。例えばA⑦「ホワイル・マイ・ギター」で例のクラプトンのギターが泣きじゃくるところなんかもうめちゃくちゃ濃厚でゾクゾクさせられるのだが、そう言えば2年ほど前にこのブログでインド盤「リヴォルヴァー」を取り上げた時に「アイム・オンリー・スリーピング」や「シー・セッド・シー・セッド」、「トゥモロウ・ネヴァー・ノウズ」のような “リヴォッてる” 曲が良かったので、ひょっとするとインド盤はウネウネ・ドロドロしたサウンド(?)との相性が良いのかもしれない。
 B面ではB⑤「ロッキー・ラックーン」が出色の出来。とにかくサウンドがクリスプ&クリアーで、それがアッパーな曲調にベストマッチ。この曲の持つノリの良さに拍車がかかってめちゃくちゃ気持ちイイのだ(^o^)丿 C面ではC③「マザー・ネイチャーズ・サン」が絶品で、ドラムスの微妙な遠近感も実に上手く表現されている。B③「ブラックバード」やB⑧「アイ・ウィル」も良かったので、ひょっとするとこのローカル・リカットはアコースティック・サウンドに合うような音作りを意図したものかもしれない。とにかくこのように曲によって出来不出来の波が激しいのがインド盤の面白さと言えるだろう。
 ここまでずっとローカル・リカット・サイドを聴いてきて、最後にUKマザーのD面をかけたのだが、D①「レヴォリューション1」が始まると同時に思わず “おぉ~!” と声が出るほど驚いた。さすがはUKマザーと言うべきか、何よりもまず音圧が高い。しかもそれでいて細かい音に至るまでしっかりと表現されており、ヘタしたらUK原盤と同等か或いはそれ以上かも???と思わせるほどクオリティーの高い音が楽しめる。D④「クライ・ベイビー・クライ」のリンゴのドラミングに瞠目させられたのもこのインド盤が初めてだ。湯浅氏が “全面UKマザーを使ったインド盤はいいのではないか” と書いておられたが、私もその仮説に賛成だ。ただ、全面UKマザーを使ったインド盤を見つけるだけでも至難の業だと思うし、ましてや盤質も良くて尚且つ手の届く値段の盤に出会える確率なんて万に一つもないかもしれないが...   そんなこんなで4面すべて聴き終え、盤質もVGどころか EX+ か NM レベルだったこともあって、私としては満足のいく買い物だったと言えるだろう。
 尚、後日一計を案じた私はローカル・リカットのA~C面を通常の3割増しぐらいの大音量でかけてみたところ、その丸みを帯びた音作りがプラスに働いてまるでモノ・ミックスを聴いているかのような太くてガッシリした武骨な音が楽しめたのだ。いやぁ~、コレはたまりまへんな(^.^)  この手の音はヴォリュームを上げて大音量で聴かないと魅力が半減してしまうものだと改めて実感した。「アナログ・ミステリー・ツアー」でこの盤を酷評された湯浅学氏は多分常識的な音量で(←それが当たり前なのだが...)聴かれたのだろう。プラスティック・オノ・バンドのシングル盤じゃないが、インド盤は PLAY LOUD なのだ。ということで、他のインド盤と同様にこの「ホワイト・アルバム」も大向こうを唸らせる “高音質盤”というよりは、“個性的な音が楽しめる好盤” というのが私なりの結論だ。
 これに気をよくした私はまたまた Discogs でインド盤の「ウィズ・ザ・ビートルズ」をスウェーデンのセラーから購入。盤質表記はVGだったが、 Hairlines and some small, thin scratches but nothing serious. (軽いスリキズあるけど特に問題ナシ)とのことだったので大丈夫と判断。送料込みの €82で稀少な初期ビートルズのインド盤が買えたのだからラッキーというべきだろう。
 届いた盤はマト末尾が 7N/7N の DUM DUM プレスで、これがインドの1stプレスらしい。音の方はラウドカットのような派手さはないものの、しっかりとメリハリがついた元気のいい音作りで、このアルバムにピッタリ(^o^)丿  盤質はVGどころかほぼ完璧に近いNMコンディションで言うことナシだ。インド盤はまだまだ未入手な盤も多いが、これからも好機を逃さずコツコツとゲットしていきたい。

ビートルズのインド盤特集リターンズ・アゲイン!

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 前回前々回と久々にビートルズのインド盤を取り上げたので、他のインド盤もこの際だから一気聴きしてしまおうということで、「サージェント・ペパーズ」「アビー・ロード」「レット・イット・ビー」の後期3作を取り上げたい。
 まずは「サージェント・ペパーズ」だが、見開きスリーヴのUKオリジナル盤とは違ってインド独自のシングル・スリーヴで、センター・レーベルはUKと同じイエロー・パーロフォン。マトリクス№もUK盤と同じ“YEX 637-1 / YEX 638-1” だ。「アナログ・ミステリー・ツアー」には “高域の倍音が多く中低域も充実。ストリングスに対する反応がすごく良い。” と書いてあったが、私が聴いた限りでは特に大きな特徴が感じられなかったので、いつものように B-SELS に持ち込んで店主の Sさんと一緒に再試聴、一通り聴き終わった後で “それではUK盤と聴き比べてみましょう” ということになり、チューブ・カットの一番オイシイところを聴ける UKシルバー・パーロフォン盤(ワンEMIボックス)と交互にかけてみたところ、インド盤は左右の広がり感がかなり強いのに対しUK銀パロ盤は同じステレオでも音がセンター寄りでより自然なステレオ感が得られることが判明。特にアルバム・タイトル曲のA①のイントロが一番違いが分かりやすかった。尚、家に帰ってUKイエロー・パーロフォン盤を確認したたところ、その音作りは銀パロと同じセンター寄りのステレオ・ミックスだったので、あの左右にブワーッと広がる音はやはりインド盤独自のサウンドということになる。
 それと、ガチのインド音楽であるB①「ウィズイン・ユー・ウィズアウト・ユー」はさすがというべきか、このインド盤のサウンドの方が合っていて、聴いてて思わず鼻唄でハミングしてしまうほどカンファタブルな音に聞こえたのでビックリ。どこがどう違うのかはよく分からないが、このアルバムを聴く時についつい飛ばして聴いてしまうこの曲を(←ごめんね、ジョージ...)最後まで気持ち良く聴けてしまった。別にインド盤ということで意識したつもりはないのだが...(>_<)  それ以外はUK盤に倣った音で、やはりそれほど大きな違いは感じられなかった。
次に聴いたのが「アビー・ロード」。気になる “Her Majesty” 表記だが、ジャケットには無くてセンター・レーベルにはあるタイプで、マトリクス№は“YEX 749・2・1 02229 / YEX 750・1・1 02230” というローカル・リカットだ。「アナログ・ミステリー・ツアー」では “ピッチが上がっており再生時に調整が必要。真空管カッティングが功を奏したのか硬質な印象のあった本作が優美な音で鳴る。UK盤のようにエッジが立っているわけではなくどちらかと言えば中域中心ながらまとめあげ方が見事で独自性がある。” と高評価を受けている盤だが、ウチのシステムではどんな音で鳴るのか興味津々でレコードに針を落とした。
 まず最初に感じたのは、基本的にはUK盤の音だが音圧が低いのでヴォリュームを少し上げてやらないと物足りないということ。それと、本に合ったようにピッチが少し高いので(←なぜかA③「マックスウェルズ・シルバー・ハンマー」が特に高かった...)再生機の方で調節してやらないといけないが、音の分離は良いのでシステムの方でピッタリに調整してやるとそれなりの音で鳴ると思う。
 個々の演奏ではA①「カム・トゥゲザー」やA②「サムシング」のベースの音がややブーミーで丸みを帯びているのがUK盤と大きく違うところ。これは良い悪いではなく、低音のスピード感を取るか重厚さを取るかというリスナーの好み次第だろう。それと、全体的にドラムスがやや引っ込み気味に聞こえ(←特にB面後半のメドレーで顕著で「ジ・エンド」なんかリンゴがめっちゃおとなしいwww)、一方B①「ヒア・カムズ・ザ・サン」のようなアコースティック・サウンドはめちゃくちゃ良い感じの音で鳴るのだが、これらの特徴は前回のホワイト・アルバムのローカル・リカットと一致するので、多分カッティングしたエンジニアが同じ人なのではないか。それと、別にどうでもいいことだが、B④「サン・キング」のアタマの部分の虫の音SEが妙にクリアーに聞こえた(笑)
 最後に聴いたのは「レット・イット・ビー」だ。マトリクス№は“YEX 773-3U-T1 / YEX 774-3U-T1” で「ホワイト」や「アビー」と同じくローカル・リカットだ。「アナログ・ミステリー・ツアー」では “ストリングスの響きが繊細で、既に自らの中に持っている弦鳴りの音の核心を直観的にすばやく捉え、条件反射のようにカッティングしている雰囲気。音は非常に穏やかなのでカートリッジの選び方を失敗すると単なる眠い音にしか聴こえない。ワイドレンジでなおかつメリハリのある楕円針がマッチする。” とあるが、私のオルトフォンSPUは丸針なので、果たしてどうなることやら...(^.^)
 まずA①「トゥー・オブ・アス」だが、アコギのストロークが実に気持ち良い。アコースティック系サウンドの表現が得意なのは他のインド盤と同様だ。しかし私が一番驚いたのはリンゴの叩くトップ・シンバルの音が非常に大きく入っていることで、この点に関してはこれまで聴いてきたインド盤とは正反対の音作りなんである。だからA②「ディグ・ア・ポニー」やA④「アイ・ミー・マイン」なんかはすごくロックな音になっているし、A⑥「レット・イット・ビー」ですらロック魂を感じてしまうくらいカッコイイ仕上がりなのだ。又、A③「アクロス・ザ・ユニバース」やA⑦「マギー・メイ」ではジョンのヴォーカルがしっかりと前に出てくる音作りなのも気に入った。
 B①「アイヴ・ガット・ア・フィーリング」からB②「ワン・アフター・909」と続くルーフトップ・ナンバー2連発でもリンゴが躍動しており、“これのどこが眠たい音やねん?” と言いたくなるようなバリバリのロック・サウンドだ。ただ、問題のB③はストリングスがポールのヴォーカルに両外側から覆いかぶさってくるような感じで鬱陶しい。これを聴いたらフィル・スペクターは大喜びかもしれないが、ポールは激おこやろなぁ。続くB④「フォー・ユー・ブルー」とB⑤「ゲット・バック」はもうノリノリのゴキゲンな歌と演奏が楽しめて言うことナシ。これはあくまでも私の想像だが、ドラムスの音一つとってみても明らかなように、この「レット・イット・ビー」のカッティング・エンジニアは「ホワイト・アルバム」や「アビー・ロード」の2枚とは違う人なんじゃないかと思う。センター・レーベルに描かれたリンゴの絵柄もかなり違うし...(笑)
 ということで過去3回にわたってビートルズのインド盤を取り上げてきたわけだが、個人的な音の好みで言うと「レット・イット・ビー」が断トツで気に入った。ここのところ “世界のビートルズ” ということでアナログ・レコードで各国盤を色々買い集めて聴きまくっているが、まだまだ未知の高音質盤に出会えそうで楽しみは尽きない。

Roots / John Lennon

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 ジョン・レノンの「ルーツ」というアルバムは、ジョンがフィル・スペクターをプロデューサーに迎えてレコーディングしたロックンロール・オールディーズ・カヴァー・アルバムのラフ・ミックス・マスター・コピーを当時「カム・トゥゲザー」の盗作騒動で揉めていたモーリス・レヴィという人物に(多分お詫びのしるしとして)あげてしまったものをレヴィが自分の通販レーベル “アダムⅧ” から勝手にリリースし、これに激怒したキャピトル・レコードがすぐに販売差し止め訴訟を起こして勝訴、結局短期間(←たったの3日間らしい...)だけ市場に出回った(←3,000枚という説が有力だが裁判所の公式記録では1,270枚とのこと)「ルーツ」は法外なプレミア付きで取り引きされているというのが現状だ。
 私が持っているのは中学生の時にこのレコードに関するややこしい諸事情など全く知らずに大阪ミナミにあった「ウッドストック」という輸入レコード屋で買ったもので(←多分1,800円ぐらいやったと思う...)、市場に出回っている盤のほとんどがカウンターフィット盤、すなわち偽物であるという無慈悲な現実を知ったのはそれからずっと後のことだった。自分としては本物であろうが偽物であろうがジョンが歌う炎のロックンロールが聴けるだけで十分だったが、その後更に高音質なブートCDを手に入れたこともあっていつしかこの盤はレコード棚の奥で埃をかぶるようになっていた。
 で、つい先日レコード棚を整理していた時のこと、ブートレッグ盤のコーナーに入れてあったこのレコードに目が留まり、久々に聴いてみようという気になった。しかし “まぁカウンターフィット盤やから大したことなかろう...” という私の予想に反し、A①「ビー・バップ・ア・ルーラ」の出だしでジョンの “ウェ~♪” がスピーカーから怒涛の勢いで飛び出してきたのにはビックリ。パチもん(←関西でイミテーションのこと)の分際でえらい生意気な音しとるやんけ...と思いながら聴き進めていったのだが、どの曲も実に生々しいサウンドで、調子に乗ってヴォリュームを上げていくと、リスニングルームはまさに音壁ワンダーランド、ロックンロール名曲絵巻、掟破りの盗作騒動、究極のロック・ヴォーカル数え歌、アックスボンバー三つ又の槍(←何じゃそりゃ)と化したのである。盤起こしでこの音はありえない。
 A面を聴き終えた私がすぐにデッドワックスをチェックしたところ、そこには何と Bell Sound の刻印が...(゜o゜)  いくら何でもベル・サウンドがカウンターフィット盤作っとるはずないし(笑)、まさか本物ちゃうやろな???とワケが分からなくなってきた私はすぐにネットで本物と偽物の識別法を調べてみた。
 Discogsによると、偽物の特徴は以下の9つ:
①スパイン(背表紙)の表記が GREAT ではなく GREATEST になっている
②ジャケットが(60年代キャピトル盤仕様の)貼り付け式になっている
③ジャケットのジョンの左肩部分に薄いピンク色の部分が見えていない
④ジャケット右下のSTEREOの文字がそれぞれくっついている
⑤裏ジャケの SOUL TRAIN SUPER TRACKS の広告の文字が不鮮明で読めない
⑥レコード盤が異常に分厚い
⑦センター・レーベルが異常にデカい
⑧デッドワックス部分に機械打ちの Bell Sound 刻印が無い(ただし、刻印ありのカウンターフィット盤の存在も確認されているとのこと)
⑨本物のマトリクス№は「A 8018 A / A 8018 B」だが偽物には両面とも最初の A が無い
 私の盤は①②③④⑥⑦⑨はクリアしているが⑤に関しては微妙で、老眼が進んでいるせいか私には虫眼鏡が必要だ(笑) ⑧に関しては何とも言いようがないので、“困った時の B-SELS 頼み” の私は信頼する Sさんに鑑定を依頼することにした。
 その週末に B-SELS にこのレコードを持ち込み Sさんに手渡すと、“私も本物は見たことがないので鑑定はできませんが、Bell Sound の刻印やったら分かります。” とのこと。Sさんによると US盤の「レット・イット・ビー」は偽物が多く出回っているので、しっかりと識別するためにわざわざカウンターフィット盤を何種類も買って研究したというから凄い。そんな Sさんがルーペを使ってデッドワックス部分に刻まれた Bell Sound 刻印を、お店にあった本物「レット・イット・ビー」の刻印とも見比べながらじっくりと時間をかけて鑑定。結果は “本物で間違いありません。” とのこと。早速お店のプレーヤーでかけてもらったのだが、やはり Bell Sound カッティングならではの Hi-Fi サウンドが爆裂、二人して大盛り上がりしたのは言うまでもない(笑)
 ということで私の持っている「ルーツ」は限りなく本物に近いということが分かったのだが(←少なくとも盤に関しては本物やと思う...)、まだ少しだけ疑ってる自分がいるのも確か。これはあくまでも私の推測だが、もっともっと売りまくるつもりでプレスしていたのが裁判で負けてしまい、デッドストックとなってしまった盤をレヴィが横流ししたものがたまたま日本に入ってきたのではないか。まぁ真相は薮の中だが、本物であれよくできた偽物であれ、自分としてはこれを売る気はさらさらないので別にプレミアの高値が付こうが付こうまいがどうでもいい。先に書いたようにオリジナル盤ならではの骨太なサウンド(←ここ重要!)でジョンのロックンロールが聴けるだけで大満足なのだから。

「Band On The Run」UKマト3/3盤の衝撃

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 先日いつものように B-SELS にお邪魔して色々とレコードを聴かせていただいていた時のこと、アルバムを一通り聴き終えて “次は何が出てくるのだろう?” と楽しみにしていると店主の Sさんがいきなり「バンド・オン・ザ・ラン」をかけられた。
 そのイントロを聴いた瞬間に “自分の知ってる「バンド・オン・ザ・ラン」と何か違う!” と直感した私が Sさんに “これ、どこの国の盤ですか?” と尋ねたところ、 “おっ、もう気が付かれましたか。実はこれ、UKのマト3盤なんですよ。” と嬉しそうに仰る。
 UK盤「バンド・オン・ザ・ラン」といえば何と言ってもレアな両面マト1のラウドカット盤が有名で、一般的には両面マト2の盤が流通していることは知っていたが、マト3なんて聞いたこともない。しかし今お店のスピーカーから流れている「バンド・オン・ザ・ラン」は明らかにめっちゃ良い音で、それも私が所有しているラウドカット盤とは又違った種類の “良い音” なのだ。
 誤解を恐れずに言えば、昔よく行ったオーディオ・ショーで聴いたような、まるで “レコード盤に入ってる音は全部出す...” といった類の “高音質盤” で、お店の DENON製のプレイヤーがまるでリンのハイエンド・プレイヤー、ソンデック12LPのような音を出したのだからビックリするなというのも無理な話。マトリクス№は何と手書きの ZYEX 929-3 / ZYEX 930-3 で、A面にのみ同じく手書きで Blairs と彫ってある。ということはマト1やマト2盤とはマスタリングやカッティングはもちろんのこと、ひょっとするとミックスまで違うのか???
 Sさんによるとどうやらこの盤は Philipsプレスらしいとのことなので、ようやく音の良さに合点がいった。Philips といえばヨーロッパ・オーディオ界のドンというか盟主的存在であり、音に対する拘りようはハンパない。ジャケットにもレコードにもフィリップスのフィの字も書いていないが、センター・レーベルの溝(←昔の盤で言うところの Deep Groove)の形状と直径から判断したとのこと。因みに帰って手持ちの Philips盤の DGの直径を計ってみたところすべて同じ形状で直径3cmだった。いつもながら Sさんの “レコードのプロ” としての眼力には唸らされますわ... (≧▽≦)


 レコード両面を聴き終え、やみくもにこの盤が欲しくなった私は “これいつ頃店に出されるんですか? 大体いくらぐらいになりますかねぇ?” と尋ねてみたところ、“まだ決めてないんですけど、お店にあるマト1のラウドカット盤と同じくらいかなぁ。一度ご自分でこのレコードのことを調べてみられたらどうですか? 多分もっと安く買えると思いますし、探す楽しみもあるでしょう?” とのこと。う~ん、ごもっとも。初めて聴かせていただいたその場で買うのは簡単だが、Sさんが仰るように自分で探して安くゲットしてこそコレクターというもの。知り合ってまだ5ヶ月しかたっていないが、Sさんは何から何までお見通しのようだ。それより何より、せっかくこれからお店に出そうという目玉商品を横からかすめ取るようなマネはできない。
 というわけでコレクター魂に火がついた私は(←何か最近しょっちゅう着火しとるな...)帰って早速ネットで検索したところ、このマト3盤は Export Issue(輸出仕様)で、やはりミックスが違うらしくマト1とは対照的な雰囲気があるとのこと。「バンド・オン・ザ・ラン」にミックス違いがあるとは初耳だ。これは絶対にゲットせねば。因みに東京の某店では 19,440円で売約済みだった。
 色々探してみたところ Discogsには数枚この盤が出品されていたが、盤質が怪しかったりヤバそうな出品者だったりでリスクが大きい。お店で聴かせていただいた盤は NM盤だったので、やはりここはピカピカ盤が欲しい。そもそもココに出品しているセラーはマト番に無頓着な連中が多いので、マト番違いの盤を送りつけられてはたまらない。
 焦ってカスを掴みたくなかったので、次に eBay で探してみると1枚だけ出品されており、しかもラッキーなことにワンオーナー盤で盤質表記も EXだ。£25でも十分安いと思ったが OFFER 表示があったのでいつものように9掛けの£22.5でオファーしてみた。
 結果を待つ間、テレビ録画しておいた刑事コロンボを観て時間をつぶし(←久々に見た「パイルD3の壁」面白かった...)、再びパソコンをつけると Offer Accepted メールが eBayから届いており、結局初めて聴かせてもらってからわずか半日という電光石火の早ワザで「バンド・オン・ザ・ラン」の UKマト3盤をゲット。送料込みで約4,500円だった。
 それと、セラーの商品説明に “Have heard mentioned that this matrix indicates an export copy but as this was bought in Dartford I have my doubts...”(このマト番は輸出仕様って言われてるのを聞いたことがあるけど、この盤は私がダートフォードで買ったもので、輸出云々っていうのは疑わしい...)と書いてあったこともあって、このマト3盤の謎はいよいよ深まるばかりだ。
 届いた盤はセラーの説明通りの極上コンディション。ベースが太く、ギターもエッジが効いており、1つ1つの楽器がくっきりとした音像を持って立体的に迫ってくる。音圧はマト1盤よりもほんのわずか低いものの、その分レンジが広くて音の響きもナチュラル。クリアー&クリスプでありながら尚且つ腰の据わった粘っこい音がスピーカーから飛び出してくるのだから、これは実に衝撃的だ。
 私は単純な性格なのでオリジナル盤というとついついマトリクス№の若い盤ばかりを追い求めてしまうのだが、こういう盤の存在を知ってしまうと一概にマト番が若ければ良いとは言い切れないな、とまた一つ勉強になった。Sさん、良い盤を教えてくれてホントにどうもありがとう!
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