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Channel: shiotch7 の 明日なき暴走
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モノラルのブラジル盤で聴く「RAM」

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 コレクターにとって探し物のないレコード・ライフほどつまらないものはない。もちろん欲しい盤を手に入れるために昼夜を問わず海外オークションのサイトをこまめにチェックしているわけだが、かといってウォント・リストの最後の1枚を手に入れてしまったら、その後はきっと目標を失ってしまって空虚な日々が待っているに違いない。未聴の盤とのスリリングな出会いこそがコレクターの生きがいなのだ。
 かく言う私も去年の夏頃、ビートルズ各国盤の目ぼしいところはほぼ手に入れてしまい、世界の国一覧表を眺めながら “これから俺は一体何を楽しみに生きていったらエエんや???(←大袈裟な...)” と途方に暮れかけていたのだが、そんな時ある考えが閃いた。そうそう、ビートルズにはまだソロ作品が山のようにあるではないか! よっしゃ、次はビートルズ・メンバーのソロ作品を各国盤で集めてやろう… こう考えると俄然元気が出てきた。
 最初のターゲットはポールの最高傑作にして我が “無人島ディスク” 候補筆頭の「ラム」である。その時点で持っていた「ラム」はUKオリジナル盤だけだったので、ビートルズ各国盤蒐集で培った知識を駆使して音が良さそうな国の「ラム」を軒並みゲットしていったのだが、一つだけ心に引っ掛かっていたのが「ラム」のモノラル盤の存在だった。
 「ラム」のモノラル・ミックスはもちろん2012年のスーパー・デラックス・エディションに入っていた CDで聴けるが、あれは最新のテクノロジーでリマスターされたハイテク・モノラル・サウンドであり、アナログ・レコードならではの古き良きモノラル・サウンドとは似て非なるもの。モノラル大好き人間の私としては是非ともヴィンテージなモノラルの轟音で「ラム」を堪能したい。
 ということで「ラム」のリリース当時に出たモノラル盤LPを探したところ、2種類しか存在しないことが判明した。すなわちプロモ・オンリーの US盤とブラジル盤である。ビートルズのコレクターとしては当然前者の方に魅かれるが、一説によるとこの USプロモ盤はアメリカ国内の AMラジオステーション用に作られたものでプレス枚数は100枚以下というから、コレはもう金パロステレオ盤よりも稀少なスーパー・ウルトラ・コレクターズ・アイテムである。今現在も1枚だけ Discogsに出ているが、お値段は何と驚愕の166万円… 宝くじでも当たらない限り買える金額ではない。
 ということで私の興味関心はもう一方のブラジル盤に向かったのであるが、そもそも私のブラジル盤に対する心象はあまり良くない。10年ほど前にポルトガル語入りのジャケットが珍しいという理由だけで衝動買いした「ア・ハード・デイズ・ナイト」のブラジル盤がピッチの狂った変な音で、それ以降ブラジル盤は1枚も買っていないのだ。だから今回も“「ラム」のモノラル盤は聴いてみたいけど、ブラジルはちょっとなぁ...” という感じで二の足を踏んだのだ。
 しかしよくよく考えれば私のガラード401にはピッチ・コントロール機能が付いており、万が一ピッチが変やったら調節したらエエだけの話。それに USプロモ盤の「ラム」が買えない以上、ブラジル盤は私にとって「ラム」を大好きなモノラル・サウンドで聴ける唯一の選択肢なのだ。イジイジと迷っている場合ではない。
 ということでブラジル盤を買うぞと心を決めていつものようにネット検索すると、eBay に1枚だけ VG+の盤が $62で出ていたので9掛けの $55でオファーしたところ、めでたく承認されて $25というブラジルにしては安い送料(←ふつう$30~40ぐらい取られる...)と併せても1万円を切る値段で買うことが出来た。
 69年~71年頃のブラジルのモノラル盤(←カタログ№のアタマはBTL- か BTX-)はステレオ盤から作った(←英語で fold down というらしい...)いわゆるひとつの “偽モノ” なのだが、同じ偽モノのUK盤「イエロー・サブマリン」が結構ごっつい音で楽しめたので今回も密かに期待しながら聴いてみた。
 まず1曲目のA①「トゥー・メニー・ピープル」のイントロがガツン!ときてめっちゃ気持ちイイ(^o^)丿  これぞモノラルの醍醐味である。しかしヴォーカルが入ってくるとイントロで荒ぶっていたサウンドが少しおとなしくなってしまい、聴いてるこちらとしては何か狐につままれたような感じ。まるで、録音時に我々ド素人が時々やるように、イントロで針が振り切ってしまってヤバそうやから歌の始まる所でちょっと入力ヴォリュームを下げた... みたいなそんな感じなのだ。事の真相は分からないが、何にせよやっぱりブラジル盤はちょっと変だ(笑)
 A面を聴き進んで行って感じたことは、ドラムスが奥に引っ込んでいて逆にピアノが前に出てくるように聞こえること。だからA④「ディア・ボーイ」なんか実に気持ち良く聴けてしまうのだが、その一方で、私が「ラム」で大好きなポイントの一つであるリンダのバック・コーラスがステレオ盤ほど目立たないのでA⑥「スマイル・アウェイ」なんかは魅力半減だ。
 B面では何故かB③「イート・アット・ホーム」だけ音が籠っているように聞こえるのがマイナス・ポイント。B④「ロング・ヘアード・レディ」になると音が回復するのも謎だ。全体的にモノラル特有のガッツというかエネルギー感は今一歩だが、カートリッジをモノラル専用のものに変えるとこの欠点はかなり改善される(←B③だけは何をやってもダメだが...)ことが分かった。
 というワケで私にとって10年ぶりのブラジル盤は可もなし不可もなしという感じで点数を付ければ65点といったところ。ただ、この盤をきっかけに私のブラジル・モノラル盤に対する関心が高まり、その結果としてとんでもなく凄い轟音盤に巡り合うことになるのだが、それはまた別のはなし...(^.^)

モノラルのブラジル盤で聴く「Hey Jude」

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 「モノラルのブラジル盤で聴く~」シリーズ第2弾は「ヘイ・ジュード」だ。60年代の後半というのはちょうどモノラルからステレオへの過渡期と言える時期で、アメリカを含む多くの国々では「ホワイト・アルバム」から本格的ステレオ時代に突入(←私の知る限り「ホワイト」のモノ盤がリリースされたのはUK、オーストラリア、スペイン、コロンビア、アルゼンチン、ブラジルの6ヶ国のみ)、“モノラル盤は時代遅れ” というのが世界の趨勢だったようだ。
 一般的に “エコーが強くて音像が広がる” のを好む傾向にあるアメリカ人と違い、“隙間のないソリッドな音の塊” を好む人が多いと言われるビートルズの母国イギリスではステレオ・オンリーへの移行はもう少し後で、モノラル/ステレオの分水嶺は「ヘイ・ジュード」//「ジョンとヨーコのバラード」、アルバムが「イエロー・サブマリン」//「アビー・ロード」ということになるのだが、私のようなモノラル盤信者はついつい “出来ることなら「アビー・ロード」以降のアルバムもモノラルのごっつい音で聴いてみたい...” という“無いものねだり”をしてしまう。そしてそんな願いを叶えてくれるのが、ブラジルを始めとする南米諸国でリリースされたモノラル盤なのだ。
 Discogsによると、1966年から1972年の間にブラジル・オデオンからリリースされたモノラル盤はすべてステレオ・ミックスをモノにしただけの“偽モノ”(←ちょうど「イエロー・サブマリン」の UKモノラル盤と同じ手法)なのだが、唯一の例外がこの「ヘイ・ジュード」LPで、既にブラジルにあったシングル盤用のモノ・ミックスを使ってこのレコードを製作したのだという。つまり「ジョンとヨーコのバラード」と「オールド・ブラウン・シュー」以外の曲はすべて純正モノ・ミックスで作られているという実にユニークな「ヘイ・ジュード」LPなのだ。
 まずA①「キャント・バイ・ミー・ラヴ」とA②「ユー・シュッド・ハヴ・ノウン・ベター」の2曲は初期ビートルズのモノラルらしい元気溌剌とした煌びやかなサウンド。特に①に関してはブラジル盤「ア・ハード・デイズ・ナイト」に入っている同曲が何故かめちゃくちゃ籠った音だったので、シングル音源を採用して大正解だ。A③「ペイパーバック・ライター」は高域の伸びが今一歩だが、分厚い中域のおかげでモノラルらしい押し出し感の強いサウンドが楽しめる。もちろん UKシングルのラウドカットには負けるが、コレはコレで十分健闘していると言っていいと思う。
 A④「レイン」はジョンのヴォーカルがめっちゃリヴォッてて聴いてて実に楽しい。ブラジル盤はトラックによる出来不出来の差が大きいことが多々あるが、私はこの曲の音作りがA面では一番面白かったし、サイケなビートルズが好きな人は一聴の価値アリだ。A⑤「レディ・マドンナ」はA③と似た音作りで、ガンガンくる武骨なモノラル・サウンドが◎。A⑥「レヴォリューション」はイントロのギターがめっちゃラウドに響き渡ってごっつうエエ感じ。この曲のハードロック的側面が強調された豪快なサウンドだ。
 B面では何と言ってもB①「ヘイ・ジュード」が断トツに面白い。前半部のポールのヴォーカルもパンチ力十分で、“ブラジルのモノ盤も大したもんやん...” と感心していると、後半部のリフレインはもっと強烈で、まるでコーラス隊の人数が増えたかのような錯覚を覚えるほどの大熱演。まさにリオのカーニバルさながらの大騒ぎである。コレはめっちゃエエわ(^o^)丿  B面残りの3曲はまぁ予想通りと言えば予想通りのモノラル・サウンド。さすがにB①ほどの熱量は感じられないが、音圧は必要にして十分で、モノラルならではのド迫力サウンドが十分に堪能できた。
 というワケで、このアルバムの満足度を点数化すると、前回の「ラム」を軽く上回る75点ぐらいか。もう少し点数をあげていいかもとも思ったが、後に控える遥かに強力な轟音盤との相対的な比較を考えると75点あたりが妥当な評価だと思う。

モノラルのブラジル盤で聴く「Abbey Road」

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 「モノラルのブラジル盤で聴く」シリーズ第3弾は「アビー・ロード」だ。本国イギリスではオリジナル・アルバムとしてはこのアルバムからステレオ盤オンリーになったわけで、世界的に見ても「アビー・ロード」のモノラル盤がリアルタイムでリリースされたのはブラジルのみ(←イギリスではモノラル・ミックスのオープンリール・テープが発売されたらしいが...)のようだ。
 「アビー・ロード」といえばシンフォニックなサウンドのイメージが強いので、それをモノラル盤で聴いたらどんな感じだろうと興味を持った私は「ラム」「ヘイ・ジュード」に続くターゲットとして早速 Discogs で検索。ブラジル盤らしくGやらG+が並ぶ中で1枚だけ VG+盤が出ており、しかもその商品説明に“Excellent copy almost without any hiss.”(盤質良好でほとんどヒスノイズ無し)とあったので即決。€50が高いのか安いのか分からなかったが、ブラジルのセラーにしては送料が €22と安かったので買いを決めた。
 届いた盤は前回の「ヘイ・ジュード」と同じくブラジル独自のサンドイッチ式ジャケット(←背表紙が無く、ビニールでペラペラの表ジャケと裏ジャケを包んである...)で、裏ジャケにもレーベルにも Her Majesty 表記は無い。一体どんな音で鳴るのか興味津々で盤をターンテーブルに乗せ、針を落とした。
 まず A①「カム・トゥゲザー」だが、ベースがゴツゴツした岩のようにドドドッと迫ってくる様はこれまで聴いたことのない面白さで、まさにベースがブンブン “唸る” という形容がピッタリの怪演だ。A②「サムシング」ではリンゴがパワーアップして “スーパー・リンゴ”(笑)になったような感じで、とにかくドラムスのアタック音が強烈。これぞモノラルの醍醐味である。ベースの重低音がズシリズシリと響く A③「マックスウェルズ・シルバー・ハマー」はポールのヴォーカルがめっちゃ近く感じられてビックリ。ただ、シンセの音は当然ながらステレオ盤と比べるとかなり控えめだ。
 A④「オー・ダーリン」ではポールのシャウトが火の玉ストレートとなってスピーカーから飛び出してくる。まさに硬質な音像が眼前に屹立するといった按配だ。A⑤「オクトパス・ガーデン」はポールの独創的なベース・ラインの妙技を存分に味わえるところがいい。ただ、例のブクブクという効果音はかなり引っ込み気味だ。A面で一番ステレオ盤との違いを感じたのが A⑥「アイ・ウォント・ユー」で、ステレオ盤の “左右にフワーッと広がって音の海に飲み込まれるような感じ” とはまったく異なり、音の世界がやや平面的で小さく感じられてしまうのが難点。高域の伸びもイマイチで、この曲にモノラルは合っていないと思った。
 B①「ヒア・カムズ・ザ・サン」ではポールのベースがしっかりと自己主張しており、まるでジョージのヴォーカルとタイマン勝負しているように聞こえるところが実にユニーク。いやぁ~、ブラジル盤って結構オモロイわ(^.^) しかし B②「ビコーズ」はイマイチ。B③「ユー・ネヴァー・ギヴ・ミー・ユア・マネー」も悪くはないが何か違和感があるし、B④「サン・キング」もステレオの方が合っている。
 B⑤「ミーン・ミスター・マスタード」~B⑥「ポリシーン・パン」~B⑦「シー・ケイム・イン・スルー・ザ・バスルーム・ウインドウ」と続くあたりはB面の大メドレーの中で唯一モノラルに合っていると思えたパートで、それまで休憩していた(?)リンゴが俄然張り切り出したように聞こえるのが微笑ましい。やはりロック色が強いトラックとシンフォニックな色合いの濃いトラックではモノラル・サウンドとの相性が段違いだ。
 B⑧「ゴールデン・スランバーズ」~B⑨「キャリー・ザット・ウエイト」~B⑩「ジ・エンド」と続くパートは音場が狭いモノラルには不向きで、“これじゃない感” が濃厚に漂う。ただ、B⑩におけるリンゴのドラム・ソロをモノラルのドスンとくる力わざで楽しめたのはよかった。 B⑪「ハー・マジェスティ」はステレオの方がいい。
 ということで、稀少なモノラル盤「アビー・ロード」を聴いてみて感じたのは、A面はモノラルで聴くと結構新鮮で面白いが、B面の大メドレーはやっぱりステレオの雄大なサウンドが合っているなぁということ。これは想定の範囲内ではあったが、実際に聴いてみると何曲か面白いトラックもあったので、ビートルズ・コレクションの中にこういうのが1枚ぐらいあってもエエかな...というのが正直な感想だ。よって満足度の点数評価は70点ぐらいか。

モノラルのブラジル盤で聴く「Let It Be」

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 「モノラルのブラジル盤で聴く~」シリーズも今日で4回目。モノラルの「レット・イット・ビー」といえば、UKでリリースされたオープンリール・テープを CD化したブートレッグを持っているが、あれはステレオ・ミックスをモノに落としただけの、ちょうどプリアンプの MONOスイッチをオンにした時のような古式ゆかしい音で、“まぁこういうのもアリっちゃアリかな...” というレベルだったが、ブラジル盤のモノラルはどうなのだろう???と、興味津々でネット検索を始めた。
 まず eBayだが、VG+盤が1枚だけ出ていて送料込みで $150... う~ん、さすがにコレはちょっと高すぎる...(>_<) ならばと Discogsでこのレコードを探すと7枚出品されていたが、どいつもこいつも盤質 G+やら VG-のガチャ盤ばかりで全く食指が動かない。そんな中で1枚だけ、盤質 VGで €50というブツがあり、送料も €20と良心的だ。説明を見ると “This copy is very good, with some risks. On my machine only presented a few clicks on the side A. Side B has very few hiss.”(盤質はまぁまぁエエけど、ちょっとリスクはあるヨ。ウチのシステムでは A面チリパチ音が少しだけあるけど B面はヒスノイズほとんど無しネ。)とのこと。60年代のモノラル盤で a few clicksなら上等なのだが、やはり risksという言葉がどうしても引っ掛かる。
 こういう場合、私には “買わない” という選択肢は存在しないので、リスクを取って €50盤で勝負するか、安全策を取って $120盤に行くか、の2つしかない。さて、どうするか... 私はそのレコードに対して自分で決めた限度額を超える場合は決して買わない主義なので、必然的に答えは一つ... つまりリスクに賭けろ!である。私は腹を決めて €50盤を即決購入した。
 届いた盤はジャケットのちょうどジョンの枠の左隅に“Marcelo Sanches”(←「マルセロ・サンチェス」ってなんかサッカーのブラジル代表みたいな名前やな...) と前所有者の名前が青のボールペンでハッキリと書いてある。センター・レーベルにもデカデカと書かれてあるが、達筆なので全然違和感がない(笑)
 肝心の音の方だが、これまで手に入れた3枚のブラジル・モノ盤とは激しく一線を画す爆音盤でビックリ(゜o゜)  まずA①の「トゥー・オブ・アス」だが、“「トゥー・オブ・アス」ってこんなに元気な曲やったっけ???” と疑いたくなるほど元気一杯のサウンドがスピーカーから飛び出してくる。特にリンゴのドラムの一打一打がめちゃくちゃ力強く、シンバルは乱舞するが如し。アコギのストロークもパワフルそのもので、1曲目から度肝を抜かれた。A②「ディグ・ア・ポニー」も気怠さが吹き飛ぶような快演で、ここでも絶好調なリンゴがビシバシとショットをキメまくる。ジョンの歌声もガンガン前に出てきて超気持ち良い(^o^)丿 これまで “ビートルズの全アルバム中一番生気に欠ける” と思っていたあの「レット・イット・ビー」がロックンロール・アルバムとして目の前にすっくと屹立しているのだ。グリン・ジョンズがコレを聴いたら何と言うだろう?
 A③「アクロス・ザ・ユニバース」はA①②に比べるとおとなしめだが、やはり音は分厚い。続くA④「アイ・ミー・マイン」のイントロはまさに “空間をつんざく” という感じで響き渡り、思わずのけぞってしまうほど。ジョージのヴォーカルは驚くほどエネルギッシュだし、ジョン・ボーナムばりのドラミングを聴かせてくれるリンゴにもビックリだ。これって別ミックスちゃうんか???と思わせるぐらい曲の表情が違うのが面白い。A⑤「ディグ・イット」のジョンはノリノリだし、A⑥「レット・イット・ビー」のジョージのギター・ソロも一曲入魂!という感じ。リンゴの鬼気迫るドラミングも圧巻で、こんなエゲツない「レット・イット・ビー」は初めてだ。A⑦「マギー・メイ」ではラウドなアコギのストロークが生み出す大きなノリがめっちゃ気持ち良くて、“もっともっと聴きたい!” という衝動に駆られてしまう。
 B①「アイヴ・ガット・ア・フィーリング」でもリンゴの勢いは止まらずで、ポールの怒涛のベースと相まってこの曲のハードな側面を強調している。まさに“リンゴ・スターは漢でござる!” と言いたくなるような快演だ。続くB②「ワン・アフター909」でもポールが言うところの“A Great Little Rock'n Roll Band” が生み出す痛快無比なロックンロールに思わず身体が揺れてしまう。
 B③「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」はモノラル化したせいでフィル・スペクターが施したオーケストラやバック・コーラスといった過剰な装飾が奥に引っ込み、その分ポールのヴォーカルが前に出てきて私的には絶妙なバランスに聞こえる。う~ん、これはたまりませんわ(≧▽≦)  大袈裟ではなく私が今まで聴いてきた中でベストの「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」かもしれない。
 B④「フォー・ユー・ブルー」はジョージの作品中最も過小評価されていると思う1曲で私の超愛聴曲なのだが、リンゴのドラミングが生み出すグルーヴが圧巻で、ジョージのヴォーカルも水を得た魚のように活き活きと響く。B⑤「ゲット・バック」もノリの権化と化したビートルズとビリー・プレストンが一体となってパワー全開で突っ走る爽快感がたまらない。全曲聴き終えての感想だが、こんな溌剌とした「レット・イット・ビー」は他では聴いたことがない。
 ということで、ブラジル盤(BTL 1013)のモノラル・サウンドで聴く「レット・イット・ビー」は素晴らしいの一言で、満足度は文句なしの100点満点だ(^o^)丿 正調ビートルズ・ファンからは邪道と言われるかもしれないが、ひょっとすると UKオリジナルのボックス・セットに入っていた -2U/-2Uの1stプレス盤より好きかもしれない、今年に入って早くも2枚目の “神棚盤” だ。

モノラルのブラジル盤で聴く「McCartney」

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 「モノラルのブラジル盤で聴く~」シリーズ最終回はポールのファースト・ソロ・アルバム「マッカートニー」だ。本来ならこの盤は昨年末に手に入れていたはずなのだが、最初にオーダーしたドイツのセラーから “ドイチェ・ポストが送料を240%値上げした(←まぁドイツから日本までLP 1枚でだいたい €6というこれまでの料金が安すぎたのかもしれんけど、それにしてもいきなり240%とはえげつないわなぁ…)のでこれ以上商売が続けられない” とのことでキャンセルされ、別のイタリアのセラーから再度買う羽目になったため(←値段の方は €30で、送料込みで約6,000円だった...)、結局盤を手にするまで約2ヶ月もかかってしまったが、いざ針を落としてみると凄まじい轟音盤で、これなら十二分に待った甲斐があったというものだ。
 A①「ラヴリー・リンダ」ではとにかくポールのヴォーカルが近くて、まるで目の前で歌ってくれているかのような錯覚に陥ってしまう。A②「ザット・ウッド・ビー・サムシング」は何と言ってもシンバル一閃のビシーッという引き締まった音ががめちゃくちゃカッコイイ(^o^)丿 これはたまらんですわ。 A③「ヴァレンタイン・デイ」ではギターとドラムスがくんずほぐれつしながら濃厚なグルーヴを生み出していく様にゾクゾクさせられる。
 A④「エヴリナイト」もA①同様にヴォーカルが生々しいし、まるでアコギの本数が増えたかのような分厚いサウンドが気持ち良い。A⑤「ホット・アズ・サン」のタイトルにある sun はこの盤で聴くと間違いなく熱帯の太陽ではないか、と思えるぐらい音の温度(?)が高い演奏だ。A⑥「ジャンク」は静かな曲だがポールの太いベースがボーンと響き渡って演奏に一本筋が通る感じ。A⑦「マン・ウィー・ワズ・ロンリー」は “But now we're fine all the while...♪”(でも今では僕達が寂しい時なんてない)という歌詞そのもののポールの幸福感がダイレクトに伝わってきて、良い音で聴くと曲の表情まで変わるなぁ... と実感させられた。
 B①「ウー・ユー」は “これぞまさしくラウドカット!” と快哉を叫びたくなるぐらいガンガン迫ってくる演奏で、ポールのヴォーカルも元気一杯だ。B②「ママ・ミス・アメリカ」はいきなりイントロのドラムスからエンジン全開で、まるでコージー・パウエルが叩いているかのような爆裂ドラミングが快感(≧▽≦)  曲の後半部なんてもう血沸き肉躍るハードロックそのもので、マイケル・シェンカーが乗り移ったかのような鬼気迫るギター・ソロに思わずのけぞってしまう。良いか悪いかは別にして(←私はめちゃくちゃ気に入ったが...)こんな「マッカートニー」は後にも先にもブラジル・モノ盤だけだ。
 B③「テディ・ボーイ」とB④「シンガロング・ジャンク」はさすがに一息つけるが、B⑤「メイビー・アイム・アメイズド」がこれまた強烈! 何よりもまず通常盤とはポールの声の張りが違うし、ギター・ソロもまるで「天国への階段」を弾く時のジミー・ペイジ御大みたいな感じで説得力がハンパない。これはもうすべてのポール・ファンに聴いてほしい痛快無比な「メイビー・アイム・アメイズド」だ。ポールがテレビで見た狩猟の雰囲気を音楽で表現しようとしたとされるB⑥「クリーン・アクロア」はラウドカット効果でプリミティヴなパワーが大幅にアップ、ポリリズミックなドラミングやポールの生々しい息遣いなどのダイナミックなサウンド展開が面白く、それまであまり真剣に聴いたことがなかったこの曲に思わず耳が吸い付いてしまうほど引き込まれてしまった。やっぱりラウドカットはエエですな(^.^)
 ということで、長々と続けてきた「ブラジル盤のモノラルで聴く~」シリーズもこれにて終了。今回の「マッカートニー」の満足度はもちろん100点満点で、前回の「レット・イット・ビー」に続く “神棚盤” となったのだが、それもこれも元を辿ればほんの思いつきで買った「ラム」のブラジル盤がすべての始まり。それまでは各国盤の収集対象としてはブラジルのブの字も頭になかったことを考えると、レコードとの出会いってホンマに不思議な偶然というか縁みたいなもんがあるんやなぁと考えさせられた。

「Ringo」US盤 vs UK盤

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 去年の12月に B-SELSでポールのソロ・アルバムの US盤を大人買いした話はこのブログにも書いた通りだが、思っていた以上に音が良かったこともあって、それ以降はジョン、ジョージ、リンゴのも安くて盤質の良い US盤を見つけたら逃さず買うようにしてきた。US盤は海外からネットで直に買うと送料だけで3,000円近く取られるので日本国内のお店で探すに限るのだが、2年ほど前に大阪や京都のレコ屋を廻ってみたところほぼ壊滅状態だったので、今となってはわざわざ電車に乗って県外にまで足を延ばす気には全くなれない。つまり私が行くレコ屋といえば地元の B-SELS一択なのだ。
 そういうわけで私は B-SELSに行くたびにソロのコーナーの US盤をチェックしているのだが、先日「リンゴ」の US盤で盤質 Ex+という掘り出し物を見つけた。リンゴの US盤は「ブラスト・フロム・ユア・パスト」しか持っていないので、これはコレクション充実のチャンスである。私はいつものように試聴させて下さいとお願いし、Sさんと一緒に聴き始めた。
 US盤はプレス工場によって微妙に音質が違うが、この盤はジャクソンビル・プレスで(←デッドワックスにあるアルファベットの Oみたいな刻印が目印)、以前ここで「ウイングス・オーバー・アメリカ」の US盤2種を聴き比べた時と同じく音圧はやや低め。音がフワーッと広がる感じでとても華やかだが、押さえるところはきっちり押さえてある感じがする。比較試聴した UK盤の「リンゴ」はカチッとしたソリッドな音で US盤よりもロックな音がするのだが、そもそもリンゴの歌というのは基本的にポップスなので US盤でも十分に楽しめるし、特に“パーティー気分でお気楽に楽しみましょう” というこのアルバムのコンセプトには合っているように思う。
 曲別に言うと、例えば A④「サンシャイン・ライフ・フォー・ミー」のようなカントリー色の濃い曲は US盤の方が雰囲気を上手く表現しており、さすが本場の音作りは手馴れているなぁという印象だ。一方、B③「シックス・オクロック」はどう考えても “イギリスの朝” という雰囲気の曲であり、UK盤の音作りがピッタリだ。又、B④「デビル・ウーマン」のドラム・ソロなんかは UKと USの特徴が如実に出ており、“押し出し感の UK” vs “派手さの US” という構図が実に面白い。私自身に関して言えば基本的に UKの音が好きなこともあって UK盤に軍配を上げたいが、US盤も捨てがたい魅力を持っている。
 それにしてもこのアルバムってさすがは元ビートルたちがこぞって参加しているだけあって絵に描いたような名曲名演のオンパレードで、ホンマによく作り込まれてるなぁ... と感心してしまう。特にジョージとの共作 A③「フォトグラフ」とポールが参加したジョニー・バーネットのカヴァー A⑤「ユア・シックスティーン」は絶品で、全米№1も納得のキラー・チューンであると再認識させられた。
 そういえばこのレコードを買った時に Sさんが “リンゴのレコードを一緒に聴いてあれやこれや言い合える人って中々いないですよ。まぁリンゴで UK盤と US盤の聴き比べやってる所なんか日本中探してもそんなにないでしょうけど...(笑)” とおっしゃっていたが、全く同感だ。好みの似通った音楽友達と一緒にレコードを聴いて語らい合うほど楽しいことは他にないのである。

ジョンの「ロックンロール」各国盤バトルロイヤル

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 ビートルズの各国盤蒐集という魔界にハマってかれこれ3年になるが、今回は初登場のアイルランド盤である。きっかけは各国盤蒐集のターゲットをビートルズのソロにまで広げたことで、とりあえず各メンバーのソロ作品で自分が一番気に入っているレコードに的を絞って収集を開始。ジョンでは何と言ってもヨーコ臭のない「ロックンロール」が一番好きなので、Discogsでどこの国のを買おうかと色々物色していた時に偶然目にしたのがアイルランド盤というわけだ。しかもこれがアップル・レーベルではなく何とシルバー・パーロフォン・レーベルなんである。値段を見ると NM盤にもかかわらず €12というお買い得価格で、送料込みでも2,500円程度だ。私は迷わず ORDER をクリックした。
 届いた盤は A面のマト枝番が UK盤と同じ -1U だったがB面は -3U ということでこちらの面は手持ちの UK盤とは違っている。つまり枝番 -1U/ -3Uというレアな組み合わせの盤なのだ。聴いてみたところ、-1Uの A面はめちゃくちゃ良い音で、例えるなら音の細部まで見えるような感じ。UK 1stプレス盤とも聴き比べてみたが、アイルランド盤の絶妙なステレオ感は UK盤をも凌駕していた。
 しかし -3UマトのB面はというと、音がやや硬くて -1U マトの A面とは微妙に違う感じ。両面 -1U マトのアイルランド盤があったら最強やろなぁ... などと無い物ねだりな妄想をしながら、ものはついでと「ロックンロール」の US盤と NZ盤を引っ張り出してきて聴き比べてみた。
 まず US盤だが、実に骨太で芯のあるサウンドで、そのゴツゴツした質感はまさにラフなロックンロールにピッタリだ。アイルランド盤とはまた違った意味での “良い音” で、ちょうど「レッド・ゼッペリンⅡ」の UK盤と US盤の音の違いに感じが似ている。60年代に多いエコーまみれの US盤はゴミ以下だが、70年代(←特に前~中盤のビートルズ・ソロとゼップ)の US盤に関してはイケイケのロックなサウンドが聴けるので要チェックだ。
 続いてかけたのが NZ盤で、私としては UK、US、アイルランドと四つ巴の戦いを期待していたのだが、スピーカーから出てきた音はめちゃくちゃショボくてガッカリ。音圧は低いし、音像もこじんまりしていて脆弱。これは断じてロックンロールの音ではない。この盤が届いた時は埃やカビでノイズが酷かったので木工用ボンドでクリーニングしたのだが、クリーニング後のチェックではノイズの有無に神経を集中したせいか、プアーな音質に気付かなかったようだ。とにかくこの NZ盤は論ずるに値しない軟弱サウンド盤だった。
 NZ盤が予想外の惨敗だったので、“ほんなら OZ盤はどうなんやろ?” と考えた私はすぐに Discogsで盤質の良さそうなのを見つけて即オーダー、15オーストラリア・ドル(約1,200円)で送料込みでも2,500円弱という安値で買えてラッキーだ。届いた盤を聴いてみたところ、NZ盤とは異次元の素晴らしい音だったので喜び勇んで B-SELSに持ち込み、Sさんにも聴いていただいたのだが、“バスドラの音が強烈で、ほとんどハードロックのサウンドになってますねぇ... いやぁビックリしました...” と驚かれたご様子。“これだけドラムの音が大きいのにヴォーカルがそれに負けてないところが凄いですよね。ブラスが鳴り響くところなんかもまるでジミー・ペイジの歪ませたギターに近い音で鳴ってますし... ほら、「カスタード・パイ」のイントロのあの感じですよ、コレ。” と感心しきりで、二人してジョンの大ロックンロール大会を満喫した。
 ということで私なりの「ロックンロール」音質格付けは アイルランド盤A面1U = OZ盤(10点)> US盤(9.8点)> UK盤 1U/1U(9.5点)> アイルランド盤B面3U(9.2点)>>>>> NZ盤(5点) となった。こうなってくると、“アイルランド盤が良かったからデンマーク盤やスウェーデン盤といった北欧勢もエエんちゃうやろか?” とか “「ロックンロール」以外のレコードも OZ盤で集めたろか...” とかいう風に好奇心が疼いてたまらない。これやから各国盤蒐集はやめられまへんわ...(^.^)

アイルランド盤で聴く「アイルランドに平和を」

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 ジョンの「ロックンロール」のアイルランド盤を手に入れた話は前回書いた通りだが、あのレコードがとても良い音で鳴ったこともあって、それ以来アイルランド盤も購入対象へと昇格した。しかしアイルランド盤ってプレス枚数が少ないのか、滅多なことでは市場に出てこない。こうなったらこちらからターゲットを絞ってこちらから積極的に探すしかない。ということで、“アイルランド盤ねぇ... 次は何を狙ったろかな...”と考えていてふと思いついたのがポール&ウイングスのシングル「アイルランドに平和を」だった。
 丸腰のアイルランド市民に向けてイギリス軍が発砲し13人が亡くなったという「血の日曜日事件」に激怒したポールがイギリスを激しく非難した歌詞のせいでBBCでは放送禁止になったという曰く付きのシングルだが、アイルランドでは当然の如く1位になったと聞く。もちろんUKオリジナル・シングルは持っているが、やはりこれはアイルランド盤で聴いてみたい。
 早速ネットで検索してみたところ、ラッキーなことに Discogsに1枚だけ出品されているのを発見。£18とシングル盤にしてはかなりのお値段だったが、この盤は popsikeで調べてみても過去数年間で1枚しか出てきてないほどレアなので、この機会を逃してなるものかと即決。シングルのため送料が安くてすんだおかげでこの貴重盤を約3,000円で手に入れることができた。
 届いた盤をUK盤と比較してみたところ、レコード№やマトリクス№は同じだがレーベル面の “Mfd in UK”のところが“Mfd in R. of I.” になっているのがアイルランド盤の証しだし、字体や緑色の濃淡も違っている。
 肝心の音の方だが、マトが同じせいもあって音質に大きな違いは感じられなかったものの、私の耳にはアイルランド盤の方が少しだけ音圧が高いように聞こえた。一番分かりやすかったのは打楽器系のバン!バン!と叩く音で、特に後半部の一番盛り上がるパートでアイルランド盤の方がより激しく叩いているなと感じられたのだが、これはひょっとするとこのレコードをカッティングしたアイルランド人エンジニアの怒りの感情がこもっているのかもしれない。コレクターの方はもし見つけられたらぜひゲットして自分の耳で確かめてみて下さいな。

南アフリカ盤で聴く「エボニー&アイボリー」

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 いつも思うのだが、私の悪い癖はすぐに調子に乗ることである。前回取り上げたアイルランド盤の「アイルランドに平和を」ですっかり調子に乗った私は他に何か面白そうなレコードはないかなぁ... と小一時間ほど考え、はたと思いついたのが「エボニー&アイボリー」の南アフリカ盤である。ポールがピアノの鍵盤に引っ掛けて黒人と白人の人種差別の問題を歌ったこの曲を、よりにもよってアパルトヘイト(人種隔離)政策で悪名高い南アフリカの盤で聴いてやろうという実に歪んだ発想である。
 このシングルは南アでは当然ながら放送禁止になったらしくどれだけ売れたのかは分からないが、eBayには1枚も出ていない。Discogs で探してみると2枚だけ出品されており、VG+ の方はシングル盤1枚に610ZAR(≒5,000円!!!)というアホみたいに高い送料だったので迷くことなく $4の VG盤をチョイス、送料込みで 1,200円なら御の字だ。尚、ネットの情報によるとこのシングルは何故かラウドカット盤だとのことなので、爆音好きの私としては非常に楽しみだった。
 届いた盤を早速ターンテーブルに乗せ、一体どんな凄い音が鳴り出すのかと身構えていると、いきなり物凄い音でイントロが炸裂! うわぁ、こいつは確かに凄いわ... と感心していると、ヴォーカルが始まると同時にバックの演奏が少し控え目になり、???という感じ。これって以前に聴いたブラジル盤「ラム」と同じパターンやん! つまりヴォーカルに合わせて音量を調節してるだけで、こんなものは真正ラウドカットではない。
 しかも悪いことに南ア盤に特有の弱点である高音域が伸びないせいで “チキチキチー♪” というハイハット・シンバルの音がヴォーカルの陰にに隠れてしまってほとんど聞こえない。念のため UK盤シングルと聴き比べてみたところ、完璧なバランスで鳴る UK盤に比べ、南ア盤の方は音圧は相対的に高いものの音のバランスがややイビツでとてもじゃないが高音質とは言い難い。湯浅氏の言葉を借りればこれこそまさに “ガサツな音” という感じであり、私に言わせればただの “なんちゃってラウドカット” である。
 ということで南アフリカ盤の「エボニー&アイボリー」は話のネタとしては確かに面白い音だが、決して良い音ではないというのが私の正直な感想だ。手持ちの南ア盤はこれで3枚目だが、どいつもこいつも音質イマイチでパッとしない。どうやら私と南ア盤の相性は最悪なようだ。

Wings「Wild Life」の音質最強盤を求めて①

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 ポールの、いや全てのビートルズ関連アルバムの中で最も過小評価されていると私が考えるのがウイングスのデビュー・アルバム「ワイルド・ライフ」だ。かく言う私も中高生の頃は “有名なシングル曲も入ってないし、何か地味なアルバムやなぁ...” と思っていたのだが、何度も聴き込むうちにすっかりハマってしまい、いつの間にか超の付く愛聴盤になっていた。特にこのアルバムのA面はリズミカルな曲が多くて何度聴いてもウキウキワクワクさせてくれる。
 私がビートルズ関連のUKオリジナル盤を買い始めたのは15年ほど前のことだが、その時に参考にした「Beatles' Vinyl Made in UK」という本の中で著者の和久井光司氏が「ワイルド・ライフ」の UK盤について “初版のマトリクス・ナンバーの末尾は A面が「‐1」で B面が「‐11」。B面は「1」を2度打ってしまったものと思われる。” と書かれていたので “へぇ~、そうなんや...” とその本の内容を盲信して(←まだ純真無垢なコレクターの卵でしたわ...笑)マト11の盤を eBayで買ったのだった。
 しかしいざレコードが届いてみると A面が「‐11」でB面が「‐1」と AB面のマトが逆であり、その後も「赤盤」「青盤」や「アット・ザ・ハリウッドボウル」、「マッカートニー」などで初版マトの間違いが数多く判明するにつけ、私の中で和久井氏の本の信憑性は著しく低下していったのだが、その極めつけがこの「ワイルド・ライフ」で、その後の調べでA面のマトが9の盤の存在を確認。こーなってくると和久井氏の言う「1を2度打ってしまった説」はどう考えても筋が通らない。
 私はこのマト9盤が欲しくなり、早速 eBayでチェックしてみたが待てど暮らせど出品される気配がない。そこで Popsikeで過去にどれほどの数が出品されたのかを調べてみたところ、2011年からの約8年間でたったの9枚、しかも2016年を最後にこの2年半ほどは出品すらされていないという激レア・アイテムであることがわかったのだ。このアルバムの人気の無さを反映してか、落札金額自体は£30前後なのだが、市場に出てこなければこちらとしても手の打ちようがない。
 そんな「ワイルド・ライフ」のマト9盤を実際にこの目で初めて見たのが他でもない B-SELSで、しかも泣く子も黙る Factory Sample盤である。当然ながらエサ箱ではなく壁面に飾ってあったのだが、欲しくて欲しくてたまらなかった私にとってはまるで後光が差しているかのような神々しさだ。当然私の心は激しく動いたが、さすがに超の付く稀少盤だけあって(←しかも盤質極上!!!)値段を見るとやはり桁が1つ違っており、貧乏コレクターの私にポンと払える額ではない。う~ん、これは実に悩ましい。
 悶々としながら家に帰った私は Discogsで「ワイルド・ライフ」の各国盤をチェック、UKマザーの盤をしらみつぶしに調べたところ、スウェーデン盤のマトが「9/1」であることを発見。これってもしかして...!(^^)!  しかも盤質 NMで値段の方も €15.99 とお買い得だ。これで UKマト9と同じ音が聴ければ儲けものと思った私は即買いを決めた。
 6日後(←早っ!)に届いた盤をワクワクしながらターンテーブルに乗せ、早速試聴。第1印象としては確かに高音質なのだが、どちらかと言うと高音が強調された派手な音作りで UK初版らしい重厚さに欠ける。 “ホンマにこれがマト9の音なんかいな?” と訝しく思った私はこの盤を B-SELSに持ち込んで(←いつもの展開...)本物の UKマト9盤と聴き比べをさせていただくことにした。 (つづく)

Wings「Wild Life」の音質最強盤を求めて②

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 その週末に B-SELSにマト9のスウェーデン盤「ワイルド・ライフ」を持ち込んだ私はいつものように Sさんと一緒に聴き比べを開始。私が持参した盤に加え、お店にあった UKマト9 Factory Sample盤と UKマト11の1st プレス盤の3枚をあーでもないこーでもないと言いながら聴いていくのだが、毎度のことながら一文の得にもならないマニアックな聴き比べに付き合って下さる Sさんにはいくら感謝しても足りない。
 まずはA①「マンボ」を取っ替え引っ替え聴き比べてみる。スウェーデン盤は我が家と同様の元気溌剌とした音で、Sさんも“盤もキレイやし、良い音してますねぇ...” と仰る。しかし次に聴いた UKマト9盤はスウェーデン盤と同じマトとは思えないようなどっしりした重心の低い音で、これこそまさに王道を行く UK 1stプレスの音である。音圧も高く、歪むか歪まないかのギリギリのレベルでカッティングしてある感じで、まるでヘヴィー級ボクサーのボディー・ブローのようにガンガン腹にくる重低音が心地よい。最後にかけた UKマト11盤はマト9盤の “やり過ぎ” な部分をうまく緩和して一般のリスナーにも聴きやすい音に仕上げてあるが、やはり一本筋の通った硬派な音だ。
 “同じマト9でもかなり違いますね。” と言いながらA②「ビップ・ボップ」、A③「ラヴ・イズ・ストレンジ」と、それぞれ違ったリズム・パターンの曲で聴き比べてみるがやはり結果は同じ。この3者で聴き比べるとスウェーデン盤の音がまるで US盤のようにふんわり広がって聞こえるから不思議なものだ。そしてトドメはブルージーな A④「ワイルド・ライフ」で、ごまかしの利かないこの曲ではスウェーデン盤の音が相対的に薄っぺらく感じられた。Sさんに “UKマト9盤の圧勝ですね!” と言うと“同じ UKマザーでも盤の厚さとかプレス技術で音が変わりますからねぇ...” とのこと。確かに UK盤の方がスウェーデン盤よりもソリッドでガッシリしている。A面を聴き終えた段階でもうかなり時間が遅くなっていたので “いやぁ~、参りました。顔を洗って出直してきますわ。” と丁重にお礼を言って B-SELSを辞した。
 家に帰った私は “やっぱりこれは UKマト9のサンプル盤買うしかないな...” と思ってもう一度「Wings Wild Life Factory Sample」でググってネット上を隅から隅まで探した結果、イギリスのコレクター向けサイトにこの盤が出ているのを発見、デニー・シーウェルのサイン入りで£75の値がついている。そこで念のためにメールで A面のマトを確認したところ、何と「11」という意外な返事が返ってきた。つまり FACTORY SAMPLE のステッカーが貼ってあるからといって必ずしもマト9だとは限らないということだ。あぶないあぶない... もう少しで無駄金を使うところだった (>_<)
 ということで、それから2ヶ月ほどの間 eBayで網を張ってはみたものの、待てど暮らせど「ワイルド・ライフ」のマト9盤は一向に出品される気配すらない...(>_<) さて、どうするか? このままひたすら出品されるのを待ち続けるというのもアリっちゃアリだが、ブツの数が極端に少ないのでかなりの長期戦を覚悟しなければならないし、仮に市場に出てきたとしても自分が落札できるとは限らない。もちろん試聴はできないので盤質の保証もない。しかし、マト9盤の音を知ってしまった以上、買わないという選択肢はもはや存在しない。これらの前提から導かれる最も論理的な結論は “B-SELSの盤を買う”... そう、それしかない。
 そういうワケで、この連休初日に B-SELSを訪ね、壁に飾ってあったマト9盤を再度聴かせていただいた後、唐突に “これ、売って下さい!” と Sさんにお願いすると “えっ? 本当に?” と驚かれたご様子。そこで “この前聴かせていただいたマト9の音がどうしても諦めきれなくて 2ヶ月越しで狙ってましてん!” と言うと “この音の良さが分かる人に買っていただけてよかったです。” と喜んで下さったのだが、お礼を言いたいのは私の方だ。「ワイルド・ライフ」のマト9盤はユニオン通販にも出てはいるが、その VG+盤とほぼ同じ額でピッカピカの NM盤を完全試聴して買えたのだから嬉しくって仕方がない。とにかく B-SELSに通い始めてからというもの、私のレコード・ライフは充実しまくりで、 ホンマにありがたいことである。
 結局その日はコーフンして眠れなかったので朝の5時まで何度も聴き返し(←寝たい時に寝て起きたい時に起きれる大型連休はエエなぁ...)、それからも毎日聴きまくっているのだが、やっぱり大枚を叩く価値は十二分にあったと胸を張って断言できる痛快無比なサウンドだ。特にA面なんか何度聴いても自然と身体が揺れてしまう躍動感に溢れていてたまらんたまらん(≧▽≦)  このマト9盤は私にとってはハイレゾをも含めた上で間違いなく「ワイルド・ライフ」のベスト音源であり、今年4枚目(←月1枚のハイペースやん!)の “神棚盤” なのだ。


【おまけ】B-SELSの壁面を飾っていた「ヴィーナス・アンド・マース」UK 1stプレスの初回稀少ジャケットを見ていて、表ジャケのタイトル文字を形成している赤球と黄球が UK盤と US盤で真逆になっていることを発見。それがどーしたソー・ホワット?と言われてしまえば身も蓋もないが、ビートルズ関連はほんの些細なことまで気になってしまう。困ったものだ(笑)

アイルランド盤で聴くビートルズ・ソロアルバム特集

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 興味本位で買ったジョンの「ロックンロール」とポールの「アイルランドに平和を」のアイルランド盤が両方とも大当たりだったこともあって、私は他のビートルズ関連の LPもアイルランド盤で聴いてみたくなった。まず本体のビートルズを Discogsで調べてみたが、リアルタイムで出たアイルランド盤は「ホワイト・アルバム」しか載っていない。次に popsikeで過去の eBayデータを調べてみたところ、「アビー・ロード」と「レット・イット・ビー」もアップルのレーベルで出ていることが分かったが、他のアルバムはみんな70年代リイシューと思しき2ボックス EMIの銀パロ・レーベルしか出てこない。
 ソロの方もアイルランド盤は少なくて、ジョンでは「ロックンロール」以外に「ジョン魂」「イマジン」「シェイヴド・フィッシュ」、ポールでは「バンド・オン・ザ・ラン」と「バック・トゥ・ジ・エッグ」が出ているだけという厳しい状況である。私はそれらの中から盤質の良さそうな「バンド・オン・ザ・ラン」「バック・トゥ・ジ・エッグ」「ジョン魂」の3枚をオーダーした。
 まず最初に届いたのが「バンド・オン・ザ・ラン」で、センター・レーベルは他国盤とは違ってシルバー・パーロフォン(盤の重さは128g)。マトは -2/-5(IRL刻印あり)ということで70年代後半のプレスと思われる。私が持っているUK盤はパワフルな音が楽しめるラウドカット盤(マト-1/-1, 132g)と精緻を極めた極上サウンドが絶品のフィリップス・プレス盤(マト-3/-3, 130g)の2枚だが、このアイルランド盤は中庸を行くとでも言えばいいのか、手堅くまとめたカッチリとした音に仕上がっている。特にマト5の B面でもマト2の A面に遜色のないソリッドな音が聴けるので、Bラスの「1985」なんか結構力強いサウンド展開が楽しめる。とにかくマト番が若くないにもかかわらず芯がしっかりしたサウンドになっているのはさすがアイルランド盤といったところか。
 「バンド・オン・ザ・ラン」の翌日に届いたのが「バック・トゥ・ジ・エッグ」で、センター・レーベルはやはりシルバー・パーロフォンだ。マトは -2/-1で、やはり IRLの刻印がある。手に持った感触がズシリと重かったので量ってみると何と147gもある。比較対象としてUKオリジナル盤(マト-2/-2)を量ってみたが129gしかなかった。実際に音を聴いてまず感じたのは音が UK盤よりもデカいことで、A①「レセプション」のポールのベースが大音量でアグレッシヴに轟きわたるのを聴いて腰を抜かしそうになった。すぐに針をあげて UK盤をかけてみたが、こちらもかなりガッツのある音で鳴るものの、ラウドなアイルランド盤に比べると少々大人しく感じてしまう。特にA②「ゲッティング・クローサー」やA④「スピン・イット・オン」といったロック曲でその差が顕著なのだが、圧巻は何と言ってもB①「ロケストラのテーマ」とB⑥「ソー・グラッド・トゥ・シー・ユー」の2曲で、まるで巨大な音の塊が眼前に迫ってくるかのようなド迫力には言葉を失ってしまうほど。これだけでも “ホンマに買って良かったぁ...(^o^)丿” と大喜びした。
 それからかなり遅れて(←メールで催促するまで放置されてた... 他にもマト違いやレーベル違いを送ってきたりとか、最近の Discogsのセラーはホンマに質が低下しとるわ...)「ジョン魂」が届いた。こちらは1970年代初めということでグリーン・アップル・レーベルなのだが、マトは -2/-3 で重量も126gと軽め。UKオリジナル盤(マト -1/-1 で重量139gのホワイト・アップル・レーベル)と比較試聴してみたところ、こちらは完全に UK盤の圧勝で、A①「マザー」の鐘の音からして全然違うし、ベースの音の強さも雲泥の差。特にこのレコードは楽器構成が非常にシンプルなので、そのあたりの差が残酷なぐらいにハッキリと出てしまうようだ。それにしても「ジョン魂」UK 1stプレス盤の音ってホンマにエグいなぁ(≧▽≦)
 結局、今回のアイルランド盤チャレンジは、ポールの2枚が“当たり”で、ジョン魂は“ハズレ” という感じ。まぁ未知の世界に踏み込んでいくわけだからこれからも“ハズレ”盤をつかむことは多々あるかもしれないが、それと同じか上回る確率で“当たり”盤をゲットできれば御の字だ。「○○カヴァー」や「△△カット」といった有名なコレクターズ・アイテムもいいが、誰も知らない高音質盤を自分の手で発掘するのもまたファンの愉しみのひとつなのだ。

「Uncle Albert / Too Many People」のモノラル・シングル盤

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 この前のGW中に B-SELSを訪れた時のこと、この日はたまたま先客の方々とお店の奥のテーブルで相席することになったのだが、前々から目を付けていたレコードが売れてしまって(←さっさと買っておけばよかったのだが、こればっかりはしゃあない... )ちょっと落ち込んで口数が少なかった私に気を遣ってくださったのか、 Sさんが “shiotchさん、こんなんどうですか?” とかけてくださったのがポールの USプロモ・シングル「Uncle Albert ~ Admiral Halsey / Too Many People」(PRO-6278)だった。私はシングルのプロモ盤にはあまり興味はないのだが、この盤は違った。何とモノラル盤だったのである(゜o゜)
 この2曲が入っている「ラム」のモノラル盤と言えば2ヶ月ほど前にこのブログでも取り上げた邪道(?)のブラジル盤が頭に浮かぶが、こちらは王道中の王道を行く正真正銘の US盤、つまり例の激レア・プレミア付き $15,000盤の 12分の2、つまり $2.500(約28万円!)分の値打ちがある USモノの音が聴けるというワケだ。これはえらいこっちゃである。私は買い損ねた盤のことなどすっかり忘れ、お店のスピーカーから出てくる音に全神経を集中させた。
 出てきた音はブラジル盤ともニュー・リマスター盤とも激しく一線を画す古き良きモノラル・サウンドで、そのヴィンテージな味わいはとにかく素晴らしいの一言に尽きる。特に B面の「トゥー・メニー・ピープル」はモノラル効果が絶大で、そのまま「3レッグズ」へと突入してくれへんかなぁ... と思わず無い物ねだりをしてしまうくらいの野太いサウンドだった。
Paul & Linda McCartney - Too Many People - 45 RPM - RARE MONO MIX


 結局その日はスーパーが閉まる前に連休中の食材を買いに行かなくてはいけなかったので早目にお店を出たのだが、家に帰ってからは真夜中までこのプロモ・シングル盤のことを調べまくった。まず最初に Discogsで調べてみたところ、意外なことに3枚も出ていたのだが、最安の盤は G+の分際で£70(= 約1万円)という強気の値付けでビックリ。更に残りの2枚はどちらも NMながら $150というえげつなさで、eBayに至っては何と $175(= 約2万円)というのだからハナシにならない。
 こういう時は案外灯台下暗しで国内のサイトで安く買える場合があるのでヤフオクを見てみたが出品はナシ。それならばとディスクユニオンの通販サイトで検索してみたところ、1枚だけ在庫があるにはあったのだが、お値段の方は Ex+ 盤が17,400円と、Discogsとほぼ同じ価格設定だ。しかも商品説明欄には「最難関タイトル!!」と ! が2つも付いている。私は自分の無知を思い知ると同時にビートルズ関連のレコード蒐集の奥の深さを痛感した。
 B-SELS で聴かせていただいた盤は確か VG表記だったがそれはあくまでも Visual grade での話。実際の Play gradeは Ex+レベルで聴感上ほぼ問題ナシの良盤であり、しかもそれが7,800円というお値打ち価格なのだから実に良心的な商いをされていると言える。お店で聴いたあの音がどうしても忘れられなかった私は購入を固く決意し、その翌日にお店に電話を入れて「昨日聴かせていただいたモノラルのプロモ盤シングル、まだ売れてませんか?」と訊くと「そんなん、売れるワケないじゃないですか!」と大笑いされたのだが、大型連休を利用して全国のビートルズ・ファンが B-SELS詣でに来るのではないか... と気が気ではなかった私は電話を切って30分後には B-SELSで支払いを済ませていた(笑)
 Sさんによると「盤の表面に結構な数のスリキズがあるので、どうしても盤質表記を厳しめにせざるを得なかったんです。」とのことだが、私は音に出ないキズなんか全然気にならないので余裕のセーフ(^o^)丿  因みに「この盤いつ頃から置いてはったんですか?」と尋ねると「店のオープンの時からずーっと置いてました。」と言われ、こんな宝物がエサ箱に眠っていたというのに半年以上も見逃していたことを大いに反省した(>_<)  そういえばいつも真剣に見るのは LPの棚ばかりでシングル盤の方はほとんど見たことがなかったなぁ...
 ということで、これまではビートルズ関連のシングル盤は UK盤で揃えて(あとちょこっと NZ盤)安心していたのだが、B-SELSで USプロモのモノラル盤の存在を知ってしまった今となっては指をくわえて見ているわけにはいかない。野太いモノラル・サウンドが三度のメシより好きなヴィンテージ・レコード愛好家の血が騒ぐのだ。最近はブラジル盤やらインド盤、アイルランド盤といったマニアックな各国盤にかまけていたが、これから暫くはモノラルの USプロモ・シングルを徹底的に狙ってやろうと戦闘モードに突入した。
Paul & Linda McCartney - Uncle Albert/Admiral Halsey - Mono 45RPM


【追悼】このブログを書き終えてさぁアップしようとネットを開いたところ、トップページのヤフー・ニュースでドリス・デイが亡くなったと知ってビックリ... う~ん、ショック(>_<) 彼女は古き良きアメリカの象徴のような存在であり、私にとってはペギー・リーと並ぶ2大フェイヴァリット・フィーメイル・シンガーだった。悲しいなぁ...(*_*) もちろんビートルズ・ファンにもこの曲でおなじみだ。心より追悼の意を込めて... RIP Doris Day... Dig it, Dig it...
Dig It (Remastered 2009)

「Band On The Run」Nimbus Supercut 盤

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 ディスクユニオンの通販サイトでビートルズ・ソロの USプロモ・シングルを色々探していた時のこと、海外サイトに無かった「Band On The Run」を検索したら一応あるにはあったのだが、そいつが何とテストプレスということで30,400円という無慈悲な値付け(←いくら超稀少なテスト盤とはいえシングル1枚でこのお値段!)のため即撤退。ビートルズ・コレクターの道は厳しいのぅ... と凹んでいたら、その「Band On The Run」の検索結果の中に「NIMBUS SUPERCUT」という禁断のフレーズ(笑)を発見! その瞬間、頭の中からプロモ・シングルのことなど完全に消し飛び、“うわぁ、ニンバス・スーパーカット出とるやん! でもどうせお高いんでしょ?” と思いつつも一応値段を確認てみると、Ex+盤で 59,800円となっている。
 確かに高額ではあるが、安くても7~8万円、ヘタをすれば10万近くはいくだろうと思っていた私は一瞬 “ひょっとするとこれはお買い得なんか???” と誘惑に負けそう(←まともな神経しとったらLP1枚に6万円なんて論外なんやろうけど...)になった。しかしこの1週間だけで既に10万円近くをレコードに使ってしまっていた私は “やっぱり無理。こんなことしとったら破産してまうわ...(>_<)” と一旦は諦め、パソコンを閉じた。
 その日の夕方、久々に plinco師匠に電話して猟盤の近況報告なんぞをしたのだが、その時にたまたまディスクユニオンの話題が出て、「さっきもユニオンの通販サイトでポールのニンバス・スーパーカット盤っていうレア盤を見つけたんですけど、59,800円やったんで腰が引けましてん。」と言うと「それは shiotchさんらしくないなぁ... 昔の shiotchさんやったら即買うてたと思うで。」と言われ、「いやぁ、最近お金のやりくりが色々と大変ですねん(*_*)」と言ってその場は終わった。
 しかし電話を切ってから「確かに plincoさんの言わはる通りや。ワシとしたことが完全に弱気になっとったわ。あの超高音質ニンバス・スーパーカットを手に入れるチャンスやぞ... 6万ぐらいなんぼのもんじゃい!」と迷いが吹っ切れた私は即ユニオンにメールを送信。ダメ元でカードのボーナス一括払いが可能か確認するとラッキーなことにOKとのことだったので、その場で買いを決めた。長年憧れ続けたあのニンバス・スーパーカット盤を、何と衝動買いしてしまったのだ。その日はちょうど大型連休の最終日で、“明日から仕事かぁ... ホンマにイヤやなぁ...(>_<)” という鬱状態だったのが、この買い物のおかげで超ハイテンションでの社会復帰となった(笑) plinco師匠、背中を押して下さってホンマにありがとうございましたm(__)m
 2日後に届いた盤はさすがユニオンだけあって盤・ジャケット共に極上のコンディション。デッドワックスには手書きのマト番の他に機械打ちで NIMBUS ENGLAND と誇らしげに刻まれている。この喜びはぜひ Sさんと分かち合わねばと思い、到着翌日に B-SELSにこのレコードを持ち込み、“「Band On The Run」のニンバス・スーパーカット盤買っちゃったんですけど一緒に聴きませんか (^o^)丿” と言うと “それはぜひ聴きたいです!!!” ということで2人してワクワクドキドキしながら試聴開始。
 A①「バンド・オン・ザ・ラン」が始まってすぐに“う~ん、これは明らかに違いますねぇ~(≧▽≦)” と唸ったまま、目を閉じて聴いておられる。A②「ジェット」で目を見開き、“いやぁ、これは本当に凄い音です! ドラムの音がとてもリアルですね。” と仰るので、“そうなんですよ。「ヴァンデビルト」なんかもうブッ飛びますぜ。” と私。A③「ブルーバード」では “倍音がしっかりとキレイに聞こえますねぇ...” と感心されることしきり。で、いよいよ私がイチ押しのA④「ミセス・ヴァンデビルト」に突入したのだが、ポールのブンブン唸るベースの重量感が凄まじく、これまた重戦車のようなバスドラと相まって、2人とも大コーフン(笑) “タムタムが目の前に見えるようです!!!” と Sさん。 “そうそう、やっていることが見えますよね。オーディオのプロが本気だしたらこんなレコードが出来るんか... っちゅー感じですわ。” と私。A⑤「レット・ミー・ロール・イット」では “かぶりつきでライヴ聴いてるような生々しさですね!” と喜色満面の Sさん(^.^)
 A面が終わり、意気揚々という感じでB面にいく。B①「マムーニア」のアコギの響きが実に美しく、アコギ大好き Sさんはもうニッコニコ(^.^)  コーラス・ハーモニーの美しさも絶品で、まるでハイビジョンが 4Kにでもなったかのような精緻なサウンドだ。B②「ノー・ワーズ」後半のギター・ソロのパートでは “こんなに音が伸びるんですねぇ~” と感心することしきり。B③「ピカソズ・ラスト・ワーズ」では、このアルバムを何百回と聞いてきたであろう Sさんをして “こんな音が入ってたんですねぇ...” と言わしめたニンバス盤。そして Bラスの「1985」が異様なほどの盛り上がりで大団円を迎え、タイトル曲のサビに戻ってフェイドアウトすると、2人で大拍手(笑) 私が “究極の再生芸術を見た、っていう感じですね!” と言うと “いやぁ... エエもん聞かしてもらいました。まさか生きているうちにニンバス盤を聴けるとは思いませんでした。” と仰ったので “私もまさか自分がニンバス盤を買うことになるなんて正直夢にも思いませんでしたわ。” と言って2人で大笑い。“でも元はと言えば、先週聴かせていただいた USプロモ・シングル盤がきっかけなんですよ。あれがなかったらユニオンの通販サイト見てへんわけやし... ” と感謝すると照れくさそうに笑っておられた。
 とまぁこのように予想を遥かに上回る高音質を聴かせてくれた「バンド・オン・ザ・ラン」のニンバス・スーパーカット盤。今年に入って早くも5枚目の “神棚盤” となったワケだが、そーなってくると当然もう1枚のアレ、すなわちニンバス盤「ペパーズ」はどうなるんだ?という風に話が展開していくわけである。で、恐る恐る eBayを覗いてみると£1,750... 日本円にして約25万円で NM盤が、そしてシールドの正真正銘ミント盤が£3,000(43万円!!!)で出品されていた。ヤフオクを見たらユニオンから31万円のが1枚出ているのみ... う~ん、まいったなぁ。マグロ船に乗るか、あるいは原発で働くかでもしないかぎり、ポンと出せる額ではない。ビートルズ・コレクターの道は厳しいのである(*_*)

「With The Beatles」UKモノ盤のマト1/4/5/6/7聴き比べ

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 先の大型連休中はどこへも行かずにネットと B-SELSにへばりついていたお蔭で良いレコードを山ほど買えたのだが、そんな中でも以前取り上げた「Uncle Albert~Admiral Halsey / Too Many People」の USプロモ・シングルに次ぐ収穫が、今回ご紹介する「With The Beatles」UKモノラルのマト7N盤だ。
 「With The Beatles」UKモノラル盤と言えば私の中ではラウドカットで有名なマト1N盤が絶対王者として君臨しており、それ以外のマトリクスなど全くアウトオブ眼中だったのだが、2ヶ月ほど前に B-SELSにお邪魔した時に Sさんが「こんなの聴いてみませんか?」と仰ってかけて下さったのが「With The Beatles」UKモノラルのマト4N/3N盤だった。
 その時は “2ndプレスのマト4N/3N盤なんてどうせ大したことないやろ...” という軽い気持ちで聴き始めたのだが、実際にスピーカーから出てきた音はというと、確かにマト1N盤に比べると音圧は低いものの、これまで何百回と聴いてきたラウドカット盤のド迫力サウンドとはまた違った魅力があって、「2ndプレス盤の音も捨てたモンじゃないですねぇ...」と言うと、「でしょ。これはこれで結構良い音してると思うんですよね。」と Sさん。
 具体的に言うと、「All I've Got To Do」や「Till There Was You」、「Devil In Her heart」といったミディアム・テンポの曲が実に味わい深く、ヴォーカルが心に切々と訴えかけてくるのである。そしてあの「Please Mr. Postman」が今まで聴いたことがないような麗しい音で鳴ったのだ。これをラウドカット盤の “控え” として持っておくのも悪くないなぁと思ったが、盤質がめちゃくちゃ良かったせいもあって12,800円の値札が付いており即決とはいかず、それからというもの、B-SELSに来るたびにこの盤の存在を確認して “よしよし、まだ残っとるな... もうちょっと待っとれよ...” と秘かに狙っていた。
 そして迎えたこの GW、ようやくキャッシュの用意ができたので勇躍 B-SELSに乗り込んだところ、4日前まで壁面を飾っていた「With The Beatles」マト4N/3N盤が無い。慌ててエサ箱を探してもどこにも無い。 Sさんに尋ねると “あぁ、あの盤ね。あれは昨日常連さんが買って下さったんですわ。” とのこと。やはりコレクターの活動が活発になる大型連休は鬼門である(←自分のことを棚に上げてよぉ言うわ...)。そしてこの前ここに書いた “目をつけていたのが売れちゃって落ち込んだレコード” こそが他でもないその盤だったのだ。ということで、コレクターの教訓 “気になるレコードは見つけた時に買え。” を改めて実感させられた GWになった。
 この話にはまだ続きがあって、前に書いたようにその日は家に帰ってからネットで USプロモ・シングルを検索しまくったのだが、その時にふと思いついて「With The Beatles」のマト4N/3N盤も調べてみたところ、盤面ズタボロだったりジャケットのリンゴの顔部分がちぎれてなくなっていたり(笑)親の仇でも取るかのようにレーベル面が黒マジックで塗りつぶされていたり(?)といった “訳あり盤” だらけの中に1枚だけ盤質 VG+ でジャケットもそこそこキレイな 4N/4N盤が£20で出ているのを発見。13人のウォッチャーがいると表示されており、この時を逃せば買われてしまうに違いないと(← eBayの思うツボやな...)例の教訓が頭をよぎった私は送料が£8.95とめちゃくちゃ良心的だったこともあって、思わずその場で衝動買いしてしまった。
 その翌日、例の「Uncle Albert~Admiral Halsey / Too Many People」USプロモ・シングルを B-SELSに回収に行った時に Sさんに「マト4N/3N盤が売れたって聞いたので昨日の晩に 4N/4Nの盤を eBayで衝動買いしましてん。」と報告すると、「えー? いつものことながら速攻ですねぇ...」とビックリされてしまった。そこで調子に乗って「せっかくなのでお店にある 5N、6N、7Nの盤を聴き比べさせてくださいませんか?」とお願いすると、「喜んで!」と快諾していただいた。今年に入って何度となく繰り返されてきたいつもの展開である(笑)
 まずはマト5N盤だが、A①「It Won't Be Long」がスピーカーから流れ出てきた瞬間に “これじゃない感” が濃厚に漂う。リズム隊、特にベースがほとんど聞こえないに等しいこの 5Nサウンド... スッカスカではないか! さすがに高音域だけは USキャピトル盤が逆立ちしても出せないクリアネスがありUK盤の片鱗を感じさせるものの、ロックンロールに必要不可欠な “熱さ” が感じられないのだ。“よくできた日本盤の音” と言ったらみんな信じてしまうだろう。
 次に聴いたのはマト6N盤で、私と Sさんの予想通り “5N盤に少し低音を足した” という感じの音。しかし 5N盤よりも心持ちマシというだけで、ハッキリ言ってあまり変わり映えのしない中途半端なサウンドだ。ビートルズのヴォーカルとコーラス・ワークにスポットを当ててみました、というなら分からないでもないが、やはりこれはロックンロールの音ではない。
 最後に聴いたのはマト7N盤で、5N、6Nに比べると明らかに中低音が復活しており、マト1N盤の存在を知らなければもうこれで十分という感じの、非常にコスパの高いサウンドだ。B①「ロール・オーヴァー・ベートーベン」なんか、ラウドカット盤の耳に突き刺さるような鋭利なサウンドを絶妙なバランスにまとめ上げて聴き易くした感じだし、B⑦「マネー」のプリミティヴなリズムも(線は若干細いものの)しっかりとトグロを巻いて(?)おり、日常聴きならこれで十分と言っても過言ではないほど完成度が高い。UKモノの音がこの7Nをもって一応の完成をみたというのも大いに納得のいくシャキッとした音作りだ。
 ここで Sさんが「比較するためにラウドカットと7Nを交互に聴いてみましょう。」ということでマト1N盤をかけて下さった。う~ん、これこれ。やっぱり聴き慣れたこの音が一番エエわ...(^.^) と思ったが、続いてかかった 7N盤も決して捨てたモンではない。例えるなら、ラウドカット1N盤がスカイラインGT-Rで、7N盤がノーマルなスカイラインGTという感じ。ビートルズ・ファンのみんながみんな私のようなラウドカット中毒(笑)とは限らないので、“聴き易い” という理由から7N盤に軍配を上げる人がいても何ら不思議ではない。まぁ私の1N信仰は1ミリたりとも揺るがないが...(^.^)
 というワケで、「With The Beatles」UKモノラル盤についての私なりの結論は “爆音好きは1Nでコスパ重視は7N。好事家は3N, 4Nもアリ。” というのが正直なところ。尚、後日イギリスから届いた 4N盤は見た目は VG+ だが聴感上は余裕の NMといえるほどの盤質の良さで大喜び(^o^)丿 音作りの傾向は B-SELSで聴かせていただいた 4N/3N盤とほぼ同じで、ラウドカットでない分ビートルズの音楽にじっくりと向き合ってしっかりと聴き込めるところがかえって新鮮に感じられた。最後になったが、マト違いのレコードに関する私の視野を広げ、このような非常に興味深い聴き比べに誘ってくださった Sさんに感謝!!!

「With The Beatles」各国盤バトルロイヤル

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 B-SELSでの「With The Beatles」マト番違い聴き比べがとても面白かったので、調子に乗った私は “UK盤同門対決であれだけ違いが出るんやから各国盤同士のバトルロイヤルをやったらもっとオモロイやろな...(^.^)” と考え、手持ちの「With The Beatles」モノラル盤をかき集め(←いくら何でもこのレコードを泣き別れステレオ・ミックスで聴いて幸せ... というビートルズ・ファンはいないでしょ?)、B-SELSに持ち込んだ。
 Sさんが “今日は何を持ってこられましたか?” と仰ったので “「With The Beatles」の UKマト番違い聴き比べが面白かったので今度は各国盤でやりませんか?” と言うと “それはいいですねぇ!” と眼鏡の奥の眼をキラリと光らせながら快諾して下さった。一応スウェーデン ⇒ デンマーク ⇒ ニュージーランド ⇒ オーストラリア ⇒ インド ⇒ イタリア ⇒ フランス ⇒ カナダの順で聴いていき、締めはお店にあった UKラウドカット1N盤。もちろん全曲聴いていると真夜中までかかりそうなので、A①「It Won't Be Long」とB①「Roll Over Beethoven」に絞って聴くことにした。
 聴き比べは最初モノ針でスタートしたのだが、出力が小さくて私的にイマイチな感じがしたので無理をお願いしていつものステレオ針に戻していただき(Sさん、わがまま言ってすんません...)聴き比べリスタート。以下、Sさんとの会話形式で各盤の感想を書いていこうと思う。

①スウェーデン盤
 Sさん:これは中々上質なラウドカットの音ですね。ハイハットの音がとても良いです。
 私:確かにエエ音やとは思いますが、ちょっと高域寄りじゃないですか?
 Sさん:それは言えますね。UKマザーの音なんやけど、微妙に違う感じです。
 私:この前やった「Wild Life」聴き比べを思い出しました。スウェーデン人はこういうシャキシャキした音が好きなのかもしれませんね。

②デンマーク盤
 Sさん:これは素晴らしい! 文句ナシです。ラウドカットの王道を行く音ですね。
 私:同感です。スウェーデン盤に比べるとこっちの方が中域が分厚くてヴォーカルの押し出し感が強いです。
 Sさん:とにかく生々しい音ですよね。「With The Beatles」にゴールド・パーロフォンがあったらこんな感じで鳴るんじゃないでしょうか。
 私:名言ですね。その言葉がすべてを物語ってると思います。

③ニュージーランド盤
 私:何じゃこりゃ?
 Sさん:音、小さいですね...
 私:さっきのデンマーク盤との落差が激しすぎますよ。ジョンの「Rock 'n' Roll」NZ盤と同じ症状が出てますね。コイツはダメです。

④オーストラリア盤
 Sさん:う~ん、UKマザーのはずなのに、何か変ですね。
 私:悪くはないけど、UKやデンマークに比べると確実に何かが足りない。
 Sさん:低域は良いんですが、中高域が足りてない。
 私:同じ UKマザーなのに... まぁこれがアナログの面白さでもあるんですけどね。

⑤インド盤
 Sさん:これは以前聴かせていただいた盤ですね。
 私:そうです。今回は他との比較の意味も込めて持って来ました。
 Sさん:典型的な7Nの音ですね。UKマザーに忠実な音...
 私:良くも悪くも “7Nの音” そのものという感じですね。

⑥イタリア盤
 Sさん:うわぁ、さすがイタリア。センター・レーベルが真っ赤ですね(笑)
 私:そりゃあフェラーリの国ですから(笑)
 Sさん:ローカル・リカットで、イタリア独自の音してますね。
 私:まぁイタリアだから、これはこれでエエんとちゃいますか(笑) ドライで何の悩みも無いといった感じのノーテンキな(?)音ですよね。聴いてて気持ちEです。

⑦フランス盤
 Sさん:うわっ、音がデカいですね。
 私:音はデカいけど、雑すぎません?この音。デリカシーに欠けるというか...
 Sさん:私もそう言おうと思ってました(笑) これはダメですね。
 私:ジャケットのタイトル文字のオレンジ色はホンマにキレイなのに...

⑧カナダ盤
 Sさん:おぉ、これは面白い。同じキャピトルなのに US盤とは違う音ですね。
 私:そうなんですよ。私もビックリしたんですが、中々聴かせるでしょ?
 Sさん:特にヴォーカルが良いですね。「Till There Was You」なんかまるで「ポール・マッカートニー&ザ・ビートルズ」みたいな感じです(笑)
 私:またまた上手い例えですね。器楽演奏よりも「歌」にスポットを当てた音作りですよね。
 Sさん:これを聴いていると当時の北米大陸でビートルズがどのように捉えられ、どんな風に売り出そうとされていたのかが垣間見えて興味深いです。

⑨UKラウドカット盤
 Sさん:最後にコレ聴いてみて下さい。入ったばかりの盤なんですが、ラウドカットなのに音がつぶれていないんです。どうですか?
 私:ほほぉ~、これは面白い。確かに音圧が高いのに音がキレイですね。
 Sさん:でしょう? スタンパーは3桁なのに、本当に不思議です。
 私:最後にエエもん聴かせてもらいました。やっぱりラウドカットはエエなぁ...(←結局それかよ...笑)

 とまぁこんな感じで延々3時間ほどかけて9枚の「With The Beatles」を取っ替え引っかえしながら聴いたのだが、思っていた以上に各国盤の特徴がハッキリ出て実に面白い聴き比べとなった。私の個人的な評価としては、基準となる UKラウドカット盤(1N)を10点満点とすると、①デンマーク(10点)、②カナダ(8.5点)、③イタリア(8点)、④スウェーデン(7.5点)、⑤インド(7点)、⑥オーストラリア(5.5点)、⑦ニュージーランド(4.5点)、⑧フランス(4点)、という感じ。何かサッカーのワールドカップ特集みたいになってきたな...(笑)
 ということで「With The Beatles」各国盤バトルロイヤルのウィナーはデンマーク盤に決定!!! 最後になりましたが、こんな思い付きの珍企画に最後まで付き合って下さったSさん、ホンマにどうもありがとうございましたm(__)m  よかったらまたやりましょね(笑)

【追記】この聴き比べの後、Sさんにレコードをお貸ししてじっくり聴いていただいた結果、イタリア盤の音がえらく気に入られたようで、“このカラッとしたラテン系の音作りがアルバムの性格に合っていてとっても気に入りました。” とのこと。又、“スウェーデン盤の「マネー」のピアノの音が他の盤とは違ってとても鮮明に聞こえたのが印象に残ってます。” とも仰っておられた。試聴時に評価が低かった盤に関してもポジティヴなポイントを見つけられたようで、音圧不足だった NZ盤は “ヴォリュームを上げてやればとても整った良い音” だったし、高音成分が不足気味だった OZ盤も “それなりに大きな音で聴くとバランスが改善されたし、何よりも音の鮮度が良かった。” と評価 UP。最低評価だったフランス盤ですら、“雑な音を得意とする(?) GRADOのモノ・カートリッジに変えたらかなり改善された” とのことで、“こーやって色んな国のレコードを一気聴きできてとても貴重な経験になりました(^o^)丿” と喜んでおられた。

「Imagine」のインド盤3種聴き比べ①

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 ジョン・レノン「Imagine」のインド盤といえば、ビートルズの各国盤コレクターならカッと熱くなる珍盤である。例のガイド本「アナログ・ミステリー・ツアー」の中に “インド盤の奥深い世界” というコラムがあって、そこで “レーベルのジョンの顔の人相が悪くなっているが、そんな見かけに反して音は大変に良い。インド盤の特徴である真空管カッティングの効果からか、アンビエンスの出方が他の国のプレスとは全く異なる。” と紹介されているのだ。コレを読んで “聴いてみたいな...” と思わなければビートルズ・ファンではない。
 ちょうどビートルズ・ソロの各国盤蒐集が面白くなってきたところだったので、私はこのインド盤「Imagine」を手に入れてやろうと決意。早速 Discogsで調べてみたのだが、そこでとんでもないことが判明した。何とこのレコードにはマトリクス№の組み合わせが何種類も存在し、しかもそれぞれレーベル・デザインが異なっているのだ。もちろんどれが1stプレスなのか、はたまたどれの一番音が良いのか全く分からない(>_<)
 私はとりあえずローカル・リカットされたマト末尾 “T1” の盤で盤質の良さそうなのを1枚オーダーして聴いてみることにした。本で紹介されたとはいえ、ソロ作品にまで手を伸ばそうという人はそれほどいないらしく、価格設定も全体的に低めで、たったの €5.99 で買うことができた。
 届いたレコードは60年代のインド盤とは違って分厚いカードボード・スリーヴに入っており、表ジャケは印刷の不具合か、インクの色が薄い。センター・レーベルは本に書いてあったようにジョンの人相が少し悪くなっている。う~ん、やっぱりインド盤は色々と面白い(^.^)  盤はずっしりと重く、デッドワックスに刻まれているマトは「-1U / -??T1」(←?? の部分は Ri に見えるのだが、字が潰れていてよく分からない...)で、更にA面にのみ手書きで「PORKY」と彫ってある。DiscogsではB面「PECKO」となっているが、私のレコードにはペコのペの字も無い。
 で、肝心の音の方だが、A面を聴き始めてビックリ(゜o゜)  めちゃくちゃ良い音ではないか! ラウドカットかと思わせるような音圧の高さもあるが、どの曲も1つ1つの楽器の音に温かみを感じるし、正直言って音質がどーのこーのと分析するのがアホらしくなるぐらい音楽に引き込まれてしまうのだ。A①「Imagine」なんかもう天上の世界のような美しさを湛えているし、A②「Crippled Inside」のダイナミック・レンジの広さやA③「Jealous Guy」の音の響きの素晴らしさも特筆モノ。“コレってひょっとすると UK盤よりエエんちゃうか?” と直感した私は B面に行く前に手持ちの UK 1stプレス(マト末尾1U)盤と聴き比べてみたところ、同じ「1U」「PORKY」なのにインド盤の音の方に魅了されたのだ。これはエライコッチャである。
 私は小躍りしながら再び盤をインド盤に取り替えて今度はB面を聴き始めたのだが、何たることか A面の魔法が消え去ってしまったかのようなガサツな音でビックリ(゜o゜)  音圧は高いものの、音場が狭いのが致命的で、例えるならゴミゴミしたインドの街中のようなむさくるしい音とでも言えばいいのか、とにかくデリカシーに欠ける音である。B③「How Do You Sleep」に至っては過大入力なのか音がビリつくような感じでガッカリ(>_<) 思わず盤に埃が付いているんじゃないかと確認したぐらいだ。A面とのこの落差は一体何なのだ? 念のため木工用ボンド・パックでクリーニングしてみたが全く変わらずで、万策尽きた私はいつものように “困った時の B-SELS頼み” ということで、この盤を Sさんに一緒に聴いてもらうことにした。 (つづく)

「Imagine」のインド盤3種聴き比べ②

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 私は Discogsに載っていたレーベル写真をそれぞれプリントアウトし、レコードと一緒に B-SELS に持ち込んだ。開口一番 “ジョンの「Imagine」のインド盤を手に入れたんですけど、興味あります?” と訊くと “そりゃあ、普通にあります(笑)” と Sさん。それではということで持参したレーベル写真をお見せすると “ほぅほぅほぅ...” と好奇心に火がついたご様子だ。次にレコード盤をお見せして私が読めなかった B面マト末尾のアルファベットの解読をお願いしたが “これはちょっと... どうなんでしょうねぇ...” と仰ったきりしばし無言。“Ri にも見えるし、そもそも活字が潰れてませんか、これ?” と私。結局解読不能ということで、今度は実際に音を聴いてもらうことにした。
 まずは A面。微動だにせずにじっと目をつむって聴いておられたが、A①②③と聴き進んで A④に入り、“これは良い音ですねぇ。チューブカットの効果でしょう。音の響きがホントにキレイです。曲の途中で針を上げる気になりませんね...”と大絶賛された。 “でしょう? でも問題は B面なんですよ。ぜひ感想を聞かせて下さい。” と私。さぁ、いよいよ問題の B面に突入だ。
 B①「Give Me Some Truth」が始まってじっと無言で聴いておられた Sさんがしばらくして重い口を開かれた。 “あぁ、これはダメですね。音が濁ってる...”。B③「How Do You Sleep」では私がしたのと同様に盤面の埃をチェックされたのを見て “私も家で同じことしましてん。” と大笑い。更に B⑤「Oh Yoko」に至っては “エンジニアがよぉこんな音でOK出しましたね...” と呆れ顔。 “インド人もビックリですわ!”(←わかる人にはわかるネタ...)と私。尚、後日2回目に持っていった時はB面単独で聴いたせいか1回目の時よりはマシに聞こえたものの、それでもやはり平均点以下の音であることに変わりはない。
 両面を聴き終えたところで私が3枚の写真を指して “これ、どういう順番で出たんでしょうね?” と意見を求めると、お店にあったUK盤のレーベル・デザインと比較しながら “最初はUKマザーでしょうから 1U盤のどちらかが 1stプレスでしょうね。印字が潰れてる方の盤は、ひょっとすると予定より多くプレスしすぎたんとちゃいますか? それで音がビリついてるのかもしれませんね。で、最後がこの枝番なしの、新しい番号がついたヤツやと思います。ほら、33 & 1/3 の分数の表記方法がこれだけ違ってるでしょ?” とのこと。う~ん、確かに。さすがは何百枚何千枚というレーベルをチェックしてこられた “レコードのプロ” である。やっぱり目の付け所が違いますわ。
 ということで、プレスされた順番まではほぼ特定できたのだが、気になるのはそれぞれの音である。因みに「アナログ・ミステリー・ツアー」で音を絶賛されていたのは枝番なしのレイター・プレスだ。Sさんが残りの盤を指さされて “全部聴いてみないと何とも言えないですけどね。” と仰ったので “実は2枚とも、もうオーダー済みでして、ちょうど今頃日本に向かって海の上を飛んでるはずですわ。こーなったら徹底的に調べたろ、って思うとりますねん。” と言うと Sさんは目を輝かせながら “届いたら是非聴かせて下さい。” とのこと。そんなん言われんでも持って来ますがな(笑)
 結局この日の「Imagine」研究はこれにて一応終了。家に帰って例の分数の “括線” 表記について手持ちのインド盤を片っ端から調べていったところ、“横線”⇒“斜線” の分水嶺はジョンの「Shaved Fish」とジョージの「The Best Of George Harrison」だったので、上記のレイター・プレス盤はちょうどインド盤のレーベルがイエロー・パーロフォンに切り替わった1976年以降に作られたものだと推測できた。何だか考古学者にでもなったような気分だ(笑)
(つづく)

「Imagine」のインド盤3種聴き比べ③

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 何やかんやでこの話もパート3まできてしまった。このブログの読者の中には “何でまた「Imagine」のインド盤にそこまで拘るねん?” と不思議がられる方もおられるかもしれない。私はビートルズに関する限り(もちろんソロも含めて)、少しでも良い音で聴きたいというその一念でレコードを集めており、最初に聴いたインド盤「Imagine」A面に完全 KOされ、インド盤が持つポテンシャルの凄まじさを身をもって体験した私としては、現存する3種類のインド盤「Imagine」を納得いくまで聴いて自分なりのオトシマエをつけようとしているだけなのだ。
それではここで改めてもう一度3種類のインド盤「Imagine」を整理してみよう。

タイプ①:マト枝番 -1U/-RiT1(に見える)、盤の重量は 191g、1stプレス?
 レーベル左側に“An EMI Recording”と 33 1/3(括線は水平)と Made in India、右側に Stereo と PAS 10004 と (YEX 865)と Side One。デッドワックスには手書きで PORKY(A面)と彫ってあるが、B面に PECKOは無し。

タイプ②:マト枝番 -1U/-1U-T1、盤の重量は 166g、2ndプレス?
 レーベル左側に MADE IN INDIA(大文字)と Stereo、右側に 33 1/3(括線は水平)。PASと18004の間にドットあり。デッドワックスには手書きで PORKY(A面)と彫ってあるが、B面に PECKOは無し。

タイプ③:マト枝番 -1/-1、盤の重量は 135g、3rdプレス?
 レーベル左側に STEREO(大文字)と 33 1/3 r.p.m. (括線は斜め)と Side One と “An EMI Recording”、右側に PAS 10004 と (YEX 865)があってその下に28-211という新型番あり。①②③とは違って Made in India表記なし。デッドワックスには機械で 28-211(A面)28-212(B面)と打ってあり、両面ともに PORKYも PECKOも無し。

 そういうワケで、私の調べた限りではインド盤「Imagine」には①② A面のポーキーさんしかおらず、B面のペコちゃんは結局1枚も見つからずだった。しかも B面はローカル・リカットばかりで、B面マト1Uの盤は見つからなかった。Discogsのデータも結構ええかげんやのぉ...(>_<) 
 尚、レーベルのジョンの人相に関して言うと、①はまだマシだが②なんかめっちゃ凶暴そうな顔つきに描かれているし(←殺人犯かよ...)、③に至っては目つきがヤバすぎて(←何となくサイコパスっぽい...)思わず笑ってしまう。そう言えばインド盤「ヘルプ」裏ジャケの “頬紅入りのジョン” も大概だったが、インド人のセンスってこちらの予想の遥か斜め上を行ってますな... 
 ということで、前回の時点では①だけ試聴済みだったが、その後③⇒②の順で無事我が家に到着したのでその感想を書いていこう。
 まず③だが、届いた荷物の梱包を解いてレコードを取り出してビックリ... 何じゃいこのピンク色のジャケットは??? そう言えば別のセラーによる商品説明に “misprinted sleeve colors... mostly in pink” とあったのだが、こういうことか...(>_<)  多分インクの不具合か何かだろうが、これで音が悪かったら最悪やな... と思いながら盤を取り出すと中身はピッカピカのNMで一安心。Discogsではマト枝番なしとなっていたが、この盤は -1/-1 とちゃーんと枝番が打ってある。一体どーなっとるんや??? 実際に聴いてみた感想は評判通りのキレイな音で、これならジャケットがピンクであろうが何色であろうが許せますわ(^.^) ただ、音圧は低めでパンチ力に欠けるので、チューブカット特有のあの濃厚な味わいを楽しみたければアンプのヴォリュームを上げてやる必要がある。どちらかというと冒険をせずに無難にまとめた音、という感じだ。尚、3枚中このレコードだけがコーティング有りだった。
 最後に届いたのは②で、ジャケットはペラペラで発色も薄く60年代キャピトル盤のように写真をペタッと貼り付けただけの簡素な作りになっている。B面のマトは A面とは違う字体でハッキリと YEX 866 - 1U - T1 と打ってあるので①とはやはり別モノのようだ。聴いてみた感想としては、A面は①とマトが同じにもかかわらずスタンパーの若さ(①がAで②がRL)や盤の重量(①が191gで②が166g)の違いが如実に音に影響しているのか、音質面で①より劣っている。一方ローカルリカットの B面はチューブカットの良さがハッキリと音に出ており、特にB③「ハウ・ドゥー・ユー・スリープ」なんかもうめちゃくちゃ粘っこくて説得力に溢れた音になっている。一緒に聴いていた Sさんが “音の重なり方がツェッペリンの「カシミール」みたいな感じですね。レイター・プレス③の方は「カシミール」じゃない。” と仰ったが実に上手い例えである。B面に限って言えば3種のインド盤「Imagine」の中でコレが一番良かった。
 ということでアルバム「Imagine」に関しては、インド盤タイプ①の A面と UK盤(1U PECKO)のB面を貼り合わせてハイブリッド重量盤(笑)を作るのが史上最強という結論に達した。やっぱりインド盤ってオモロイですわ(^_^)

「Sgt. Pepper's」の Nimbus盤買った(^o^)丿①

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 先月買った「Band On The Run」のニンバス・スーパーカット盤の高音質ぶりに衝撃を受けてからというもの、私の頭の中はもう1枚のニンバス盤である「Sgt. Pepper's」一色になってしまった。あの「Pepper's」の万華鏡サウンドを是非ともニンバス盤で聴いてみたい... そう考えると居ても立ってもいられなくなり、とてもじゃないが仕事なんか全く手につかない。しかし軽く20万円を超えるプレミア価格(←ディスクユニオンの買取価格が20万円という凄まじさ...)は簡単に手が出せるものではないし、かと言って私にはマグロ船に乗る体力も原発で働く勇気もない(笑) やっぱりニンバス盤ペパーズは夢のまた夢なのか... と悶々としながら自問自答する日々が続いた。
 そんなある日、そろそろこのモヤモヤ状態に決着をつけねばと再度ネット上を徹底検索。eBayには相変わらず£1,750で NM盤が出ていたが、こちらは Import Charges とやらが£132もかかるし eBayの息のかかった Pitney Bowesの送料が£38というボッタクリ価格で、トータル26万円オーバーとなるので論外だ。結局その時点での再安値は Discogsの NM盤 £1,450で、送料も保険込みで£14.50と(←eBayの Import Chargesって何やってん???)超良心的。トータルで約20万円か...(-。-)y-゜゜゜ 為替レートはイギリスの EU離脱ドタバタ劇がカオスに陥ってるおかげでポンドが7年ぶりに136円台まで下落してきており、エルヴィスなら “It's now or never!”、林先生なら “いつ買うか? 今でしょ!” と言うだろう。
 ビートルズのレコード・コレクションという修羅の道を歩む上で我が行く手に立ちはだかる数々の高額稀少盤の中で、その頂点と言える第一の羅将をゴールド・パーロフォンのステレオ盤とすれば、ニンバス盤ペパーズはさしずめ第二の羅将というところ。ビートルズ・レコード・コレクターをオリジナル盤蒐集という名の魔界へと誘うその抗いがたい魅力を考えればこの例えもそれほど間違ってはいないだろう。
 そんな “雲の上の、そのまた上の存在” として高嶺の花と諦めていたニンバス盤ペパーズをこのオレは買うのか? そんな大それたことが本当にできるのか? 20万円やぞ? と自分に問いかける。私がこれまでに買ったレコードの中での最高値盤は通称 “イントロのペッパー” と呼ばれるジャズの超稀少盤で10万円だったから(→因みに2位が金パロ・モノラル盤で3位がゼップの青ロゴ盤)、ニンバス盤ペパーズ購入となると最高値が一気に倍額更新ということになる。そもそもレコード1枚に20万円なんて、一般ピープルから見れば狂気の沙汰だろう。
 だがしかし、ビートルズに関する限り私は狂気の人なんである。大好きなビートルズを少しでも良い音で聴けるのなら狂気という言葉すら耳に心地良い。それに、世間の女性たちだってヴィトンやエルメスのバッグに大枚を叩くではないか。エルメスのバーキンなんて軽く100万円を超えると聞く。それに比べたらニンバス盤なんてまだまだカワイイもんだろう。それに20万円と言ったって、1万円のレコードを20枚買うと考えれば特に大騒ぎするほどのことでもない(ですよね?)。そもそも私のレコード購入予算額はだいたい月に10万円前後なので、2ヶ月かそこらレコード断食をすれば何とか買える金額だ。それに、買わずに一生後悔するよりは、経済的に苦しくても買って死ぬまで聴き続ける方が良いに決まっている。そう考えると俄然勇気が湧いてきて、勇躍 Discogs の商品ページを開いた私は、ひと思いに “注文する” をクリック。ちょうど土曜日の真夜中だったが、その後はコーフンしすぎて朝方まで寝付けなかった(笑)
 レコードが届いたのは翌週の土曜(←早っ!)の朝だ。土曜はいつも昼過ぎまで寝ていることが多いのだが、その日はなぜか午前中に目が覚め、リビングに降りていくとテーブルの上に届いたばかりのパッケージが無造作に置かれていた。送り元を見るとイギリスからだ。この時点でイギリスのセラーから届く予定なのはニンバス盤しかない。ついに来た!!! 震える手でレコードを取り出すと、ジャケット右上に“Supercut | Mastered and Pressed Exclusively for Readers of HI-FI today BY Nimbus Records” と印刷された黄金色のステッカーが貼られている。う~ん、神々しい...(笑) 続いてそーっと中身のレコードを取り出し、デッドワックス部分を見ると、そこには「Band On The Run」と同じく“NIMBUS ENGLAND” の刻印が刻まれている。う~ん、たまらん...(笑) 盤質はセラーの説明通りの NM盤で、見た目ピッカピカ。スピンドル・マークも皆無と言っていい(^o^)丿 そしていよいよ音出しだ。手を滑らせないように慎重にターンテーブルにレコードをセットし、針を落とした。 (つづく)
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