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Channel: shiotch7 の 明日なき暴走
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中島みゆき名曲選 90's~

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 私は中島みゆきの大ファンだが、80年代中期のいわゆる “ご乱心の時代” と呼ばれるサウンド模索期のアルバムは滅多に聴かない。過剰になったアレンジが彼女の生歌以上に物語を語ろうと空回りした結果、却って彼女のメッセージが伝わりづらくなってしまっているからだ。結局、彼女の持ち味を上手く生かしてくれるアレンジャー、瀬尾一三との出会いによって彼女は迷走状態を脱し、再び様々な名曲を世に送り出していくことになるのだが、今回はそんな彼女が90年代以降に発表した楽曲の中から特に気に入っているナンバーをピックアップしてみた。

①空と君のあいだに / ファイト!(1994)
 90年代に入って日本の音楽市場ではテレビドラマのタイアップ効果によって次々とミリオン・ヒットが生まれたが、中島みゆきもその例外ではなく、ドラマ「家なき子」の主題歌であるこの「空と君のあいだに」が100万枚を超える大ヒットを記録、現時点でも彼女にとって最も売れたシングルとして(←「わかれうた」や「悪女」の2倍近く売れたという、まさにCDバブルの時代ですな...)ファンの間でも絶大な人気を誇っている。いわゆるひとつの “トレンディ・ドラマ” に何の興味もない私はこのドラマを観たことがないので詳しいことはわからないが、聞くところによるとこの歌詞はドラマ主人公の愛犬の目線で書かれたらしい。まぁ犬の気持ちはさておいて、“君が笑ってくれるなら ボクは悪にでもなる~♪” と力強く歌うみゆき姐さんが惚れ惚れするほどカッコ良く、“ご乱心” 時代の試行錯誤を経て彼女が到達したマイルストーン的な名曲名唱であり、今や彼女の代名詞となった “心に寄り添い、エールを届ける” 路線の原点となった記念碑的なナンバーと言っても過言ではないと思う。両A面扱いの「ファイト!」(←1983年のアルバム「予感」に収録)も言わずもがなの大名曲という神カップリング・シングルで、両曲とも様々なベスト・アルバムに入っているが、手持ちの盤の中では2006年に出たコンピレーション盤「元気ですか(リマスター)」の音が一番良かった。
空と君のあいだに


②永遠の嘘をついてくれ(1996)
 1990年代初め頃、もう昔のような曲が作れないとスランプに陥っていた吉田拓郎が中島みゆきに曲を書いてほしいと頼み、出来上がったのがこの「永遠の嘘をついてくれ」だ。敬愛する拓郎からの依頼に応えて彼女が作ったこの曲はまさに拓郎の作風そのもの、それも全盛期といえる「ペニーレーンでバーボン」の頃の拓郎を彷彿とさせるような疾走感溢れる拓郎節が全開で、拓郎へのリスペクトに溢れたこの曲を聴くたびに彼女の職業作家としての腕の冴えに感銘を受けると共に、両者の大ファンの私としては姐さんホンマに拓郎が大好きなんやなぁと嬉しくなってくる。この曲は拓郎のアルバム「Long Time, No See」(1995)に収録されたほか、姐さんのアルバム「パラダイス・カフェ」(1996)にもセルフ・カヴァーという形で入っているが、何と言っても2006年のつま恋コンサートにシークレット・ゲストとして登場した姐さんが拓郎とデュエットしたヴァージョンこそが極めつけで、何度観ても胸が熱くなる。まるでチャック・ベリーと共演した時のジョン・レノンのように、嬉々として拓郎とデュエットするみゆき姐さんの笑顔が最高だ。
永遠の嘘をついてくれ 


③地上の星 / ヘッドライト・テールライト(2000)
 両A面扱いとなったこの「地上の星 / ヘッドライト・テールライト」はNHKの「プロジェクトX」という番組のオープニング/エンディング・テーマ曲に使われたことが大ヒットにつながったらしいのだが、「プロジェクトX」を1度も観たことがない私は曲単体で凄い!と感銘を受け、ず~っと愛聴してきた。「地上の星」は90年代以降の彼女に増えつつあったロック・テイストの強いナンバーで、イントロからして強烈なリズムの乱舞に驚かされるし、間奏のヴァイオリン・ソロも実に効果的に使われているのはさすがは瀬尾一三という感じだが、そういったバックの演奏と混然一体となってスケールの大きなヴォーカルを聴かせる中島みゆきのシンガーとしての実力を思い知らされるキラー・チューンだ。一方「ヘッドライト・テールライト」は彼女の伸びやかなヴォーカルと聴く者を包み込むようなストリングスに癒される壮大なスロー・バラッドで、“アッパーなロックンロール命” の私でさえも頭を垂れて聴き入ってしまう美しさ。未来を照らす “ヘッドライト” と過去を照らす “テールライト”... そして人生を “旅” に例えるなど、様々な比喩を散りばめた歌詞も奥が深い。絵に描いたような名曲というのはこういうのを言うのだろう。
地上の星 / 中島みゆき [公式]
ヘッドライト・テールライト


④あわせ鏡(2004)
 彼女が瀬尾氏と出会う以前にリリースした楽曲の中からセレクトして新アレンジで2004年にリメイクしたアルバム「いまのきもち」の中で私が一番気に入っているのがこの「あわせ鏡」だ。元々はアルバム「臨月」に入っていたもので、このニュー・リメイク・ヴァージョンは松任谷正隆によるオーソドックスなアレンジのオリジナル・ヴァージョンとは全く印象の違うジャジーな雰囲気がめちゃくちゃかっこいい。一番の立役者はドラマーのグレッグ・ビソネットで、デヴィッド・リー・ロスやスティーヴ・ヴァイのソロ・アルバム、更にB'zの「Real Thing Shakes」などに参加していることからハードロック系ドラマーのイメージが強いが、実はリンゴ・スターを敬愛するテクニシャン(←リンゴのオールスター・バンドにも抜擢されてた...)で、そんな彼が生み出すグルーヴがこの曲にクールで洗練された雰囲気を与えている。“軽妙洒脱” とはこういう演奏のことを言うのだ。
中島みゆき いまのきもち【21:16~】


⑤宙船(2006)
 この曲は中島みゆきがアルバム「ララバイSINGER」に収録予定だったものをジャニーズからの依頼を受けてアイドル・グループ、トキオに提供したものだが、私はトキオ版を聴いたことがないし、そもそもトキオなんてバラエティー番組で無人島に丸太小屋を建ててる大工のにーちゃんのイメージしかないので私にとってはどうでもいい。重要なのは結果的にセルフ・カヴァーとなった彼女自身が歌うこのヴァージョンだ。風雲急を告げるようなイントロに続いて低いキーでデビュー当時からは想像もつかないようなロック魂溢れるヴォーカルを聴かせる姐さんのカッコ良さは圧巻の一言に尽きるし(←オールナイトニッポンでDJやってる時のおちゃらけた喋りと同一人物とは思えない...)、そんな彼女の歌声をドラマティックに引き立てている器楽アレンジの妙も聴きどころ。アレンジャー瀬尾一三の才気煥発といえるナンバーだ。
歌旅-中島みゆきコンサートツアー2007 【6:15~】


⑥恩知らず(2012)
 この「恩知らず」という曲は2012年にアルバム「常夜灯」のリード・シングルとしてリリースされたもので、跳ねるようなリズムに乗って貫録十分なヴォーカルを聴かせるみゆき姐さんが超カッコ良い。“恩を仇で返します... 恩師らずになりました~♪” という一見ネガティヴに聞こえかねないフレーズの裏にある、“相手の人生を想うからこそ敢えて自分が去る” という深~い愛情に涙ちょちょぎれる。これこそまさに70年代後半から80年代初めにかけてふられ女の歌を歌っていたみゆき姐さんによる “21世紀版わかれうた” と言えるのではないか。野外で風に髪をなびかせながら颯爽と歌うミュージックビデオも話題になったし(←還暦過ぎとはとても信じられない若々しさよ!)、B面(?)に名曲「時代」のライヴ・テイクが入っていることでもポイントが高いシングルだ。
中島みゆき「恩知らず」ミュージックビデオ(Short ver.) [公式]


ということで色々あった2024年もなんとか無事終了。結局12月は “中島みゆき月間” になったが、やっててめちゃくちゃ楽しくて、洋楽邦楽を問わず自分がリアルタイムで聴いて育ったアーティストはいくつになって聴いてもエエもんやなぁ...と改めて実感した。それでは皆さん、良いお年をお迎え下さい。

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