Quantcast
Channel: shiotch7 の 明日なき暴走
Viewing all 808 articles
Browse latest View live

The Beatles (German Record Club Issue: J 033)【Chair Cover】

$
0
0
 先月は「リヴォルヴァー」の独ゴールド・オデオン盤に東独“バグパイプ・カヴァー”盤と2枚立て続けにドイツ関連でハズレ盤を買ってしまったが、その程度のことで凹んでいてはレコード・コレクターはやっていけない。実は4月に入って上記2枚の失敗を補って余りある逸品をゲットしたのだ(^o^)丿 そのレコードというのがドイツ・レコード・クラブ・イシュー・シリーズの第1弾で、マニアの間で “チェア・カヴァー” と呼ばれている1枚である。
 ドイツのレコード・クラブ・イシューと言えば以前取り上げた “バルーン・カヴァー” 盤が有名だが、この “チェア・カヴァー” 盤もビートルズ・レコード・コレクターの間では負けず劣らずの人気盤。このレコードの存在を知ったのは半年ほど前のことで、ちょうど横野正憲氏のレコード・コレクション・サイト(←めちゃくちゃ重宝してます...)で “バルーン・カヴァー” について調べていた時に同じレコード・クラブ・イシュー盤として紹介されているのを見て “おっ、こんなジャケット初めて見たわ... デゾ・ホフマンやん!” と興味を引かれたのがそもそものきっかけだった。
 そこでいつものように発作的に eBayやDiscogsで検索してみたところ、€300~€400 というとんでもない値付けにビックリ(゜o゜)  横野氏の解説によると、このレコードは1964年にドイツ・レコード・クラブが通販用レコードとして製作したもので、クラブ会員のみが入手できたとのことなのだが、わずか数百枚ほどしかプレスされなかったという超稀少盤らしいのだ。
 “欲しいけど、さすがに4万も5万も出せんなぁ...(>_<)” ということでその時はそれで終わったのだが、先月末に職場で仕事の合間に eBay を色々見ていて(笑)このレコードが BUY IT NOW €120で出品されているのを偶然発見、その時はあまり時間がなく商品説明がすべてドイツ語だったこともあって “家に帰ったらすぐに翻訳サイトで調べて盤質が良かったら即決や!” とウキウキしながら仕事に戻った。
 急いで仕事を済ませて速攻で帰宅した私はすぐにeBayをチェック。ところがいくら検索しても私が目を付けたレコードはどこにもない。“6 watching”という表示が出ていたので “さてはもう売れてしもうたんか...(>_<)” とガックリしながらも念のためにpopsikeで確認したところ、どこにも売れた形跡はない。何だか狐につままれたような気分だ。まだセール日は数日残っていたはずなのだが、ひょっとするとセラーが途中で引き上げてしまったのかもしれない。
 諦めきれない私は商品説明にあった単語を出来る限り思い出してググってみることにした。半日前にネット上にあったページならまだキャッシュが残っているはずだ。結果はまさにビンゴ!で何故か ebay.de(イーベイ・ドイツ)に行きついたのだが、そこには “このセラーは4月5日まで休暇中で、今は一切の取り引きはできません” という旨のことが書かれてあった。休暇って... 何やそれ(>_<) とりあえずまだ売れてなかったんや...と胸をなでおろしながら商品説明を翻訳サイトにかけてみると “Accoustically: M−, Optically: G... scratches cannot be heard”とのこと。M−とGって何か差があり過ぎる気もするが、私としてはたとえ見た目が満身創痍のスリキズ盤でも音にさえ出なければ大丈夫。送料もドイツからということで€10と格安だ。私はこのレコードを絶対に手に入れてやろうと心に決め、このセラーの出品リストをお気に入りに登録し、彼が休暇から戻って活動を再開するのを一日千秋の思いで待った。
 ところが4月5日を過ぎて“休暇中”の表示は消えたのに、このセラーはいつになっても活動を再開する気配がない。私は “何をグズグズしとるねん、はよ再出品せえよ!” と焦りながら1日に数回リストをチェックするが、何日たっても出品数は0のままだ。セラー復帰から10日が過ぎ “もうアカンかな~” とほぼ諦めかけていた金曜日の夕方のこと、仕事から帰ってリビングにパソコンを持ち込み、ナイター中継が始まるまでの暇つぶしにeBayチェックをしていたところ、いきなり私の目にあのデゾ・ホフマンのジャケット写真が飛び込んできたのだ。おぉ、ついに来たか!!! と大コーフンした私は速攻で BUY IT NOW をクリックし、ペイパルの支払いを済ませた。いや~執念深く毎日チェックしてきた甲斐があったというものだ。“チェア・カヴァー” ゲットで1週間の疲れも吹き飛び、ついでにタイガースも憎っくきカープを粉砕して(笑)ルンルン気分の週末になった(^.^)
 イースター休暇を挟んで(←ホンマに休暇の好きなセラーやわwww)火曜にドイツで発送したブツが翌月曜には日本に到着するという郵便屋の鑑とでもいうべきドイチェ・ポストさんの優秀さに感謝しつつ届いたばかりの盤をターンテーブルに乗せる。確かに細かいスリ傷は目につくものの、セラーの説明通り音に出ないものばかりで全く問題ない。
 1964年リリースのドイツ・ステレオ盤の音というのがどういうものか非常に興味があったのだが、実際に聴いてみると同時代のUKステレオともUSステレオとも違うサウンドで、UK盤と同様の “左右泣き別れ” 状態でありながら音が左右にフワ~ッと自然に広がる感じはドイツ独自のもの。かといってUS盤のような過剰なエコーはかけられていないので(←何故か「ロール・オーヴァー・ベートーベン」だけはエコーが強め...)聴いてて違和感を感じることも無い。ただ、私としてはふんわり感が強すぎてもう少しガツン!とくる感じが欲しい。
 そこで一計を案じた私はカートリッジをオルトフォンのSPUモノに替えてみた。ステレオ盤をモノ針で聴いてどこが悪い!というワケだ。結果は大成功で、不自然な“左右泣き別れ”感も“フワフワ”感も解消され、音のエネルギー感も明らかにアップといい事ずくめなのだ。ステレオ盤をモノ針で聴くと盤を傷めるという話をよく耳にするが、聴いてて気持ち良ければそれでエエやないかと思う。この盤をお持ちの方はモノ・カートリッジをぜひ一度お試しあれ(^.^)

ビートルズのUKエクスポート・シングル特集

$
0
0
 60年代にリアルタイムでイギリス国内向けにリリースされたビートルズのシングル盤22枚は以前にこのブログでも特集したが、彼らのUK製シングルはそれら以外にも本国プレスの無い近隣ヨーロッパ諸国への輸出用に作られた “エクスポート仕様” のレコードが存在する。「イフ・アイ・フェル / テル・ミー・ホワイ」、「ディジー・ミス・リジー / イエスタデイ」、「ミッシェル / ドライヴ・マイ・カー」、「ヘイ・ジュード / レヴォリューション」、「レット・イット・ビー / ユー・ノウ・マイ・ネーム」の5種類なのだが、後ろの2枚はイギリス国内向けの盤と同じカップリングなので別にどうでもいい。問題は前の3枚である。
 「プリーズ・プリーズ・ミー」や「シー・ラヴズ・ユー」、「ペイパーバック・ライター」といった盤でビートルズUK45回転盤の音の凄さを骨の髄まで味わった私は、イギリス国内でシングルで出ていない曲もあの轟音で聴きたくなり、“エクスポート仕様” の盤も手に入れたいと思うようになった。これらの盤は流通枚数が少ないせいかプレミア付きの高値で取り引きされており、中には落札価格が $100以上にまでハネ上がることも少なくないようだが、貧乏コレクターの私としては何とか$50以下に抑えたい。ということでシングル盤をたった3枚揃えるのに2年近くもかかってしまったのだが、このたびようやく最後の1枚をゲットできたので、今日はUKエクスポート・シングル盤の特集でいきたいと思う。

① If I Fell / Tell Me Why (DP 562)
 3枚の中でまず最初に手に入れたのがコレ。オリジナルLP(←これも大概な轟音だが...)の2割増しぐらいはある高音圧で、音がスピーカーから鉄砲水のように飛び出してきたのには驚いた。ジョンのシャウトが炸裂する「テル・ミー・ホワイ」はある程度予想通りだったが、驚いたことに「イフ・アイ・フェル」のような美しいバラードでさえそうなのだから恐れ入谷の鬼子母神だ。この盤は時々オークションでも見かけるし値段も大体£50ぐらいで安定しているので他の2枚に比べたら比較的入手はしやすいように思う。私のはEx−盤がeBayで£30だった。

② Dizzy Miss Lizzy / Yesterday (DP 563)
 これまで何度も書いてきたように私はビートルズを最高の音で聴くならUK 1stプレスLPに限ると信じているが、唯一の泣き所がLPの宿命とでも言うべき内周歪みだ。そういう意味で言うとアルバム「ヘルプ」のB面ラスト2曲をカップリングしたこのレコードはその2曲をベスト・オブ・ザ・ベストの音で聞かせてくれる “神シングル” ではないか。「イエスタデイ」のアコギの力強い響きにも驚かされたが、何と言っても45回転盤の超弩級パワーで迫ってくる「ディジー・ミス・リジー」が圧巻だ。Discogs でたったの €20で取れた時は “ひょっとして偽物ちゃうか...???” と半信半疑で、実際に届いたブツを見た時は本物とわかってめちゃくちゃ嬉しかった。

③ Michelle / Drive My Car (DP 564)
 今回の3枚はいずれも甲乙付け難い轟音盤だが、中でも群を抜いて強烈なインパクトを受けたのがこの「ドライヴ・マイ・カー」だ。驚くなかれ、何とあの「ラバー・ソウル」UKラウドカット盤をも凌駕するスーパーウルトラ高音圧で(←ちょうど赤パロが金パロに勝ったのと同じ原理か...)ポールのベースがブンブン唸るのだからたまらない(≧▽≦)  いやはや、まったく45回転盤恐るべしだ。さっきからこの文章を書きながら繰り返し繰り返し聴いているのだが、体中のアドレナリンがドバーッと出まくってロックな衝動がマグマのようにこみ上げてくる。ラウドカット盤では歪んでいた「ミッシェル」も実にクリアーなサウンドで楽しめて言うことナシだ。このレコードはプッシュアウト・センター付きでNM状態の完品ならヘタをすると$300~$500という空恐ろしい値段になるが、私は敢えてプッシュアウト・センター無しで盤質のヴィジュアル・グレードが低くてプレイ・グレードが高いブツに狙いを絞り(←“音に出ないキズ大歓迎”作戦...)、Discogs で €35で手に入れることが出来た。とにかくこの爆音は一度聴いたら病み付きになりますぜ(^.^)

Les Beatles 1965

$
0
0
 ビートルズ・ファンなら皆やっていると思うが、私はブルーレイ・レコーダーのおまかせ録画のキーワードに “ビートルズ” を登録している。こちらが何もしなくてもビートルズ関連の番組を勝手に録画しておいてくれるので超面倒くさがり屋でテレビの番組表をチェックするのが大嫌いな私にとっては非常にありがたい機能だ。
 半年ほど前だったか、「極上お宝サロン」という番組が録画されていたので何じゃこりゃ?と思って見てみると、色んな分野の超一流コレクターがMCの石坂浩二を相手に自分のコレクションを紹介していくという内容で、あの「なんでも鑑定団」のスピンオフ番組という位置付けらしい。
 で、その回のゲストとして登場されたのがビートルズ・レコード・コレクターの横野正憲氏だった。“横野” ってひょっとして私がいつもお世話になっているビートルズのオリジナル盤コレクションHP(←これホンマに凄いです!)の管理人やってる人ちゃうん? これはエライコッチャである。私はどんな垂涎盤が出てくるのか、固唾をのんで見守った。
極上!お宝サロン 開運!なんでも鑑定団【木曜夜は鑑定団アワー】 | BSジャパン


 最初に出てきたのは「ハード・デイズ・ナイト」の半掛け帯付き国内盤だ。普通のコレクターなら半掛け帯というだけでスワと身構えるのだろうが、国内盤には何の興味も無く、ましてやジャケットが中途半端に日焼けするだけから帯なんて百害あって一利なしと思っている私にとってはどうでもいい盤だ。次に出てきたのは以前ここでも取り上げた「ヘルプ」のオランダ盤 “シェル・カヴァー” で、自分が苦労して手に入れた盤が “お宝” として取り上げられると何だか嬉しくなってくる。
 そして次に紹介されたのがフランス盤の「ビートルズ・フォー・セール」、つまり「Les Beatles 1965」というレコードだった。この盤はUKオリジナル盤と同じくレコードを内側から出し入れするという実用性度外視の(笑)ゲートフォールド・ジャケットなのだが、ユニークなのは表ジャケに丸窓があいたダイカット構造になっていてジャケット写真のカードボードを挿入するという非常に凝った作りになっていることで、そのカードを抜き取ると映画「ハード・デイズ・ナイト」のモノクロ写真が現れるという仕掛けなのだ。フランス盤にめっちゃ疎かった私は “へぇ~、こんな盤があったんか... さすがはフランス、やることが粋やなぁ...” とすっかりこのレコードに魅了されてしまった。
 しかしその評価額が20~30万円と聞いてビックリ...(゜o゜) 鑑定士であるビートルズ研究所代表の本多氏によると “フランス独自のもので元々プレス枚数が少ないから” とのことで、そのせいもあって “世界的に一番有名なフランス盤” なのだという。う~ん、これはめっちゃ欲しいけど、さすがにレコード1枚に何十万も出せるワケがない。ひょっとして安く出品されてへんかなぁといういつものスケベ心でeBayやヤフオクを覗いてみたが怪しげなカウンターフィット盤が1枚出ていたのみで本物はゼロ。 “やっぱりコレは自分のような庶民コレクターが買える盤ではないな...(>_<)” とその時は諦め、“高嶺の花”盤として記憶の隅に留めるだけにしておいた。
 それから何ヶ月か経ったある日のこと、CD and LP.com というサイトでビートルズ・レコードのプレス国別検索を試していた時に偶然この「Les Beatles 1965」がヒット、€530 ということで少しは射程圏に近づいてきた感じだが、送料込みで6万円オーバーというのはまだまだキツイ。まるで焼けぼっくいに火がついた(?)ような気になった私はすぐに Discogsを検索、すると何と VG/VGの盤が €300 で出ているではないか! ネットで色々調べてみたところテレビで言っていた20~30万円というのはさすがに盛り過ぎで、東北の某レコード屋の12~15万円前後という値付けが順当な相場なのだと思うが、それが3万6千円で買えるのなら御の字だ。ただ、それでも高い買い物には違いないので念のためにセラーにメールして写真を送ってもらったところ、ジャケットもカードボードもそこそこ良い状態だったので、私は迷わず ORDER をクリックした。
 そして待つこと1週間、ついにブツが届いた。4万円近い衝動買いだったが、やはり憧れの稀少盤を実際に手にする喜びは格別だ(^.^)  スパイン部分がかなり傷んでいてレコードの出し入れがヤバそうな以外は(←レコはジャケットから出して保管しよっと...)写真で確認した通りの良好な状態で、手に取って眺めているだけで思わず顔がにやけてきてしまう。


 盤が少し反っていたのが玉にキズだがプレイに支障があるというほどではないし、恐らくそのせいで安く買えたのだろうから文句はない。盤質は典型的なVGサウンドで、時々チリパチ音は入るものの普通に音楽を楽しむだけならそれほど気にならないレベルだ。まぁ少なくともこのレコードに関しては盤質よりもジャケットの状態の方が遥かに重要なので、反っていようがノイズがあろうが大した問題ではない。早速部屋に飾って悦に入りながら野太いモノラル・サウンドを楽しんでいるのだが、コレをきっかけに独自ジャケットのフランス盤にハマりそうでちょっとコワイ...(笑) ポールの来日ブートもそろそろ出揃うみたいやし、早よボーナス出ぇへんかな...(-。-)y-゜゜゜

ビートルズのフランス盤特集

$
0
0
 ジャケット違いやミックス違い、意外な高音質盤etc、コレクター心理をくすぐるアイテムが目白押しのビートルズ各国盤蒐集はビートルマニアにとって最後の秘境と言っても過言ではない奥の深い世界である。一度その世界に足を踏み入れた者は生涯そこから抜け出せないとさえ言われている。去年の12月にドイツDMM盤を制覇した時は “まだ他にも色々興味を引かれる国はあるけど、この調子で世界各国の盤を手当たり次第にガンガンいっとったらさすがにヤバイかな...(>_<)” と考え、後ろ髪を引かれながらも各国盤からすっぱりと足を洗ったつもりだった。
 そういうワケで年が明けてしばらくの間は eBay も Discogs もあまり見ないようにしていたが、やはりというべきか3月に入るとコレクターの虫が疼きだし、今度は大物一点狙いに切り替えて垂涎盤を1枚ずつゲットしていった。前回取り上げた「Les Beatles 1965」もその内の1枚なのだが、フランス盤の知識が皆無に等しい私はセンターレーベルやカードボードについて色々と調べるに当たって例の横野氏のHPに大いにお世話になり、それをきっかけにしてフランス盤に興味を持つようになった。
 私がフランス盤に魅かれた一番の理由は独自のジャケット・デザインにある。「ラバー・ソウル」以降は基本的にUKオリジナル盤と同じデザインになってしまうが、それ以前の「ウィズ・ザ・ビートルズ」(←フランスではコレがデビュー・アルバムやったなんて初めて知ったわ...)から「ヘルプ!」までの初期5枚は他国盤とは激しく一線を画すユニークなデザインやフランスならではの洗練された色使いがめっちゃエエ感じなのだ。“ホース・カヴァー”の通称で知られる「Dans Leurs 14 Plus Grands Succes」や「Les Beatles 1965」なんかもう中身のレコードよりもそのジャケットのせいで目の玉が飛び出るような高値が付いていると言っていいだろう。
 「Dans Leurs 14 Plus Grands Succes」や「Les Beatles 1965」以外のフランス盤も欲しくなった私は勉強不足でカスをつかまないようにターゲットの盤について自分なりに整理してみた。初期フランス・オリジナル盤のレーベル色の変遷は以下の通りだ:
--------------------------------- Dark Green Label --------------------------------
①Les Beatles          OSX 222      [= With The Beatles]
---------------------------------- Dark Blue Label --------------------------------
②Les Beatles N°1        OSX 225      [= Please Please Me]
------------------------------------ Orange Label ---------------------------------
③4 Garçons Dans Le Vent   OSX 226      [= A Hard Day's Night]
④Les Beatles 1965       OSX 228     [= Beatles For Sale]
---------------------------------- Dark Blue Label --------------------------------
⑤Help !            OSX 230
-------------------------------------------------------------------------------------
 私は既に入手済みの④を除いた残りの4枚を求めて色んなオークション・サイトを覗いてみたが、①と②の初期プレス盤はレアなのか最低でも数万円はするようなのでパス、比較的安く買えそうな③と⑤に的を絞って徹底リサーチし、ヨーロッパ盤に強い Discogs で③を €40、⑤を €45でそれぞれゲットした。
 届いたレコードはどちらもレコードの取り出し口が破けていたので早速内側からセロテープで補修、「4 Garçons Dans Le Vent」は映画のワンシーンをフィーチャーしたモノクロ写真に緑と赤の文字が映えるジャケットが粋そのものだし、「Help !」の方も白地に浮き上がる草色のLES BEATLES と赤色の HELP! のコントラストが絶妙だ。やっぱりフランス人の色使いのセンスはひと味違いますな。
 盤質は典型的なVGで曲間の無音部分ではチリパチ音が目立つものの、曲が始まると野太いモノラル・サウンドがノイズなんか笑い飛ばしてしまう感じでVG++ぐらいに聞こえる。薄水色レーベルのフランス盤(←1968年以降のプレス)の音が薄っぺらいという悪評はよく耳にするが、60'sにリリースされた仏モノラル1stプレス盤のゴツゴツした骨太サウンドは一聴の価値アリだ。

Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band [Anniversary Super Deluxe Edition]

$
0
0
 「サージェント・ペパーズ」の50周年記念スーパーデラックス・エディションが届いた。4月の初めにアマゾンで予約し、その後は各国盤LPやらポールの来日公演ブートやらで頭が一杯だったので5月の末に発送連絡メールがきた時は “あぁそういえば「ペパーズ」予約してたなぁ...” ぐらいの軽い気持ちだったのだが、実際に届いたアマゾンの段ボールを手にしてビックリ... めちゃくちゃデカくて重いやん...(>_<)  「ウイングス・オーヴァー・アメリカ」のボックス・セットを彷彿とさせるスーパーヘビー級のパッケージだ。CD4枚+BD+DVDの計6枚組で、毎度のことながらブックレットやら何やらの付属物をゴテゴテ付けて15,000円オーバーというファンの足元を見た姑息なボッタクリ商法には正直ウンザリだが、まぁこればっかりはどうしようもない。
The Beatles – Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band – Anniversary Edition Trailer


 ストーンズの「サタニック・マジェスティーズ」みたいな3Dスリップケースからマスターテープの写真付きボックスを引き抜いて(←日常聴きの邪魔になるこういう面倒くさい作りはハッキリ言って大嫌い。無意味な所に金をかけずにその分値段を下げろよと思ってしまう...)中を見るとポスターやらブックレットやらハードカヴァーの豪華本やらが入っている。LPジャケットを模したゲートフォールド・カヴァーの中に薄っぺらい紙ジャケを差し込むようになっていて肝心のCDやBDはその中に収められているが、実用性無視の取り出しにくい作りなので紙ジャケ6枚を引き抜いてCD棚・DVD棚に並べている。
 CDはディスク1が「サージェント・ペパーズ」のニュー・ステレオ・ミックス、ディスク2と3が収録曲の未発表アーリー・テイク、そしてディスク4がニュー・モノラル・ミックスということで、イの一番にターンテーブルに乗せるのは当然ディスク1の最新リミックスだ。プレイボタンを押すと例の観衆のざわめきのSEに続いてヘヴィーなギターが唸りを上げるのだが、これがもうめちゃくちゃパワフルな音でビックリ(゜o゜)  ポールのベースがゴツゴツした岩のような引き締まった音で音楽の根底を支え、ユンケルでも飲んでパワーアップしたかのようなリンゴのダイナミックなドラミングの一打一打がズシリ、ズシリとまるで軍隊の行進のように響く。音像がまるで万華鏡のように3次元的にパァ~ッと広がって眼前に屹立するのだからまたらない(≧▽≦)  とても50年前の録音とは思えない瑞々しいサウンドである。冒頭の空耳 “ポールのアホ!” もめっちゃクリアーに聞こえて思わず笑ってしまう(^.^)
 ビートルズのリミックスと言えば賛否両論喧しかった「イエロー・サブマリン・ソングトラック」が思い浮かぶが、この2017リミックスはハッキリ言って次元が違う。ジャイルズ・マーティンへのインタビューによると、今回のリミックスは “ビートルズが渾身の力を込めて制作したモノ・ヴァージョンをステレオにする作業” であり、そのせいかヴォーカルが中央寄りに移されて各楽器の定位もオリジナル・ステレオ・ミックスとは変えられているのだが、音の細部まで徹底的に磨き上げ、丹念に作り込んだこのニュー・リミックスの素晴らしさは筆舌に尽くし難い。音圧が高くブライト&クリアーなサウンドで聴く “スリー・ディメンション” な「サージェント・ペパーズ」は圧巻だ。とにかく可能な限りの大音量で音の洪水の中に身を投げ出すようにして聴くと、その凄さが実感できると思う。
 ディスク2と3の未発表アーリー・テイクは結構興味深いものが多く、 “へぇ~、この曲って元々こんな感じやったんか...” という驚きや発見が多々あったが、この手の未発表テイクはあくまでも interesting な音源であって所詮は未完成品。私的には決して日常聴きするようなものではない。というか、ディスク1の衝撃が大きすぎてどうしてもそっちばっかり聴いてしまうというのが正直なところだ。
 ディスク4のニュー・モノラル・ミックスは、ディスク1の直後に聴くと幻滅するので要注意(笑)  私はそれをやってしまって “何じゃいこの味気ないサウンドは...” 状態に陥ったので日を改めて、2009モノ・ミックスと同時再生してプリアンプのスイッチを切り替えながら聴き比べを敢行してみたが、ウチのシステムでは2017ミックスの方が少しクリアーかなという程度で、普通に聴く分にはその違いはほとんど分からないレベルだった。興味本位でUKモノラル1stプレス盤も聴いてみたが、やっぱりアナログの音は全然違いますな(^.^)  ということで私の「ペパーズ」は今後、モノラルはUKオリジナル盤、ステレオはこのセットのディスク1がベースになりそうだ。
 BDに収録のハイレゾ音源に関しては再生環境がないので何とも言えない。まぁそのうち5.1chサラウンドにハマる時が来るかもしれないのでそれまでのお楽しみに取っておくとしよう。「メイキング・オブ・サージェント・ペパーズ」に関しては、ブートDVD-Rで持ってはいたものの、やはりオフィシャルのクリアーな音と映像は別格だ。内容については以前このブログで取り上げたのでここには書かないが、故ジョージ・マーティンが「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」(テイク1)を流しながらジョンの “シュガー・プラム・フェアリー♪” というカウントに聴き入る時に見せる何とも言えない優しげな表情が最高に好きだ。
 イギリスでは今回の「サージェント・ペパーズ」が1週間で37,000セットを売り上げてチャート1位になり、“50年ぶりのチャート1位返り咲き”という新記録を打ち立てたという。いやはやまったくもう、ビートルズのアーティスト・パワーは凄いとしか言いようがない。この勢いに乗って来年あたり「ホワイト・アルバム・ボックス」出してくれへんかなぁ... というか、ジャイルズには是非とも偉大なる父親の衣鉢を継いでもらって「リヴォルヴァー」や「ラバー・ソウル」といった他のアルバムもどんどんリミックスしてほしいものだ。
【行列】ビートルズファン

Budokan April 25, 2017 The Movie / Paul McCartney

$
0
0
 この1ヶ月ほど、“ポール日本公演ブート祭り” みたいな感じで一人盛り上がっている。先週あたりからIEM(イヤモニ)のSBD録音盤やIEMをAUD録音とミックスしたいわゆるひとつのマトリクス盤がぼちぼち出始めてきてはいるが、ガチのAUD録音盤と映像DVD/BD-Rに関しては主要各メーカーほぼ出揃った感がある。ファンとしては嬉しい悲鳴だが、私の財布も同時に悲鳴を上げている(>_<)
 今回のジャパン・ツアー、セトリを見れば前回前々回とそれほど大きな変化はないのだが、「エイト・デイズ・ア・ウィーク」→「マジカル・ミステリー・ツアー」→「ハード・デイズ・ナイト」と変わったオープニング曲や毎回ファンが楽しみにしている “ハツ コーカイ”曲など、注目ポイントは少なくない。私は残念ながら今回のライヴには参戦出来なかったので、2013年や2015年のように“行った日のブート全部集めるもんね”というワケにはいかない。そこでとりあえず映像作品に絞ってライヴの全体像を把握することにした。
 まずは2017年最初のステージとなる4/25の武道館公演だが、最初に買ったのはNEMOという未知のレーベルから出たBD-R + DVD-R + CD-R 3点セット。これはライヴから数日とたたないうちにヤフオクに出ていたもので、レーベル名といい(笑)美辞麗句を散りばめたメーカー・インフォといい胡散臭さ満点だったが、一日でも早くポール武道館公演を観てみたいという好奇心には勝てず落札。BD-Rの映像自体は確かにHDクオリティで綺麗なモノだったが、1曲終わるごとに画面が真っ暗になるというアホバカ編集は完全に興醒めで、最後まで観るのに苦痛すら伴うクソゴミ盤だった。唯一の救いは付属のCD-Rの音質が予想よりも良かったことぐらいか... やっぱり知らんレーベルに手ぇ出したらアカンね。
 NEMOのリベンジにと買ったのがNANKER RECORDのBD-Rだ。このレーベルは前回の来日時に武道館や京セラの映像をクロース・ショットとステージ・ショットの2種類ずつ出しており、そのどれもが私的にはかなり満足のいく出来だったので今回も大丈夫だろうと考えて購入。ヤフー・カード新規入会特典の5,000ポイントのおかげでたったの1,000円で買えたのが嬉しい(^.^)
 映像はこのレーベルらしくアリーナ・ショットとスタンド・ショットの2種類のディスクが用意されているが見ものは当然アリーナ・ショットの方だ。時々前の人の頭が映り込む箇所はあるものの、NEMOのような不快な編集はされていないので安心してポールに見入ることができる。例のSGTコスプレ軍団が登場する場面では連中を避けてポールだけを映しているが、これって肖像権か何かの問題なんかな? まぁどうせこのチャプターはスキップボタンで飛ばすのでどーでもエエけど。
 ということでGWの頃はNANKERのBD-Rで一応満足していたのだが、5月の半ばにワンダーラストHPの新着情報で見たピカデリーDVDのサンプル映像にビックリ(゜o゜)  オーディエンス・ショットとしてはこれ以上は望めないんじゃないかと思えるくらいポールのアップ連発で、コレを買わずに何を買う?というレベルの衝撃的な映像だ。こんな神映像DVDが1枚3,600円、4公演全部買っても15,000円でお釣りがくるのだからホンマにありがたい。
 届いた盤は全編がサンプル映像通りの超クロース・ショットで、ポール・ファンならその一挙手一投足に目が釘付けになること間違いなし。これまでもピカデリーの来日公演DVDはほとんど全て買ってきたが、手ブレがひどくて酔いそうになった2013年盤や至近距離まであと一歩迫りきれずに寸止め状態だった2015年盤に比べ、今回の2017年盤は手ブレ白とび極小で至近距離ショット満載の見事な映像作品に仕上がっているのだ。
 この盤はアリーナから2台、スタンドから1台という3カメラ・ミックスの編集になっているので、ポールがステージ中央に立とうが、ステージ右手でピアノに向かって歌おうがカメラを切り替えて最適なアングルからライヴを楽しめるところがいい(^.^)  1カメだとどうしても単調な映像になってしまうし、角度によってはライトの加減でポールの顔が白光りしてしまうのが避けられないからだ。この3カメ体制ひとつをとっても有象無象の他メーカーとは激しく一線を画しているし、SGTコスプレ軍団のシーンがバッサリとカットされているのも嬉しい。武道館公演最大の汚点と言うべきこの小っ恥ずかしいだけの「オーディエンス・オン・ステージ」をキレイさっぱりカットしたピカデリーはファンがブートに何を求めているかをよく分かってるなぁと感心させられた。
【額の汗までクッキリ】

【ナンジャコリャァア!】

【ツギノ キョクハ...】

【お約束の ETタッチ】

【モウソロソロ...】


 音声の方は別の音源をシンクロさせてあるとのことだが、ブラビアを核とするウチのAVシステムでは申し分のないド迫力サウンドが楽しめた。中でも私が一番気に入っているのは「ラヴ・ミー・ドゥ」で、会場全体が一体となった手拍子が武道館独特の音響効果と相まって絶妙なマッタリ感を生んでおり、この曲の新たな魅力に気付かせてくれた私的ベスト・ヴァージョンだ。
 これだけ完成度の高い映像作品なので欲を言えばブルーレイで出してほしかったところだが、贅沢を言い出したらキリがない。そういうワケで、ピカデリー・サーカス・レーベルが “ポールのスペシャリスト” としてのメンツをかけてリリースした “映像良し、編集良し、音声良し” のこのライヴDVDは4・25武道館を体験できなかった私にとってはかけがえのない1枚なのだ。
Paul McCartney / Love Me Do 25 April 2017 Nippon Budokan TOKYO JAPAN

Tokyo Dome April 27, 2017 The Movie / Paul McCartney

$
0
0
 今回のポール日本公演は4/25武道館、そして4/27, 29, 30の東京ドームと計4回行われたが、参戦できなかった私が客観的に見て一番気に入っているのが4/27の東京ドーム初日の公演だ。話題性から言えば圧倒的に武道館ということになるのだろうし、リリースされたブートの数も断トツで武道館モノが多いのだが、前回の “49年ぶりに聖地に帰ってきたポール” という特別な思い入れもなければ “「アナザー・ガール」世界初公開!” のような衝撃性もなく、セトリも短縮ヴァージョンということで私的にはイマイチだ。だから今回の日本ツアーに関する限りは武道館よりも断然東京ドームの方に魅かれるし、そのドーム3公演の内でも「ジュニアズ・ファーム」や「レッティング・ゴー」といった貴重なウイングス・ナンバーが聴けるセトリを考えると “ドーム初日がベスト” という結論に達するのだ。
 そんな4・27公演の映像だが、現時点で私の知る限りではNANKER とピカデリーからしか出ていない。先に出たのはNANKERの方だが、メーカー・インフォに “1階最前の素敵な席からステージをほぼ真正面に映した極上安定ショット” と “普通の録画では捉える気にはならない、スクリーンを映したショット” の2種類を用意したと書いてあるのを読んで購入を思いとどまった。いかに美辞麗句で取り繕おうと(“素敵な席”って何やねん...)、これって “ポールが遠いステージ・ショット” と “16:9の横長画面で見るケータイ動画みたいな縦長のスクリーン映像ショット” の2点セットということやん? そんな半端な商品に6,000円以上も出せるほど寛大じゃない私はコレをスル―、その数日後にピカデリーのDVDサンプルを目にしてそちらを即買いしたというワケだ。
 しかしこのドーム初日のピカデリーDVD、単体で観ればまぁまぁ満足のいく映像なのだが、他の日のピカデリーDVDに比べるとクオリティーが少し落ちると言わざるを得ない。まぁ武道館の映像が神ってたのでしゃあないのかもしれないが、ドーム2日目や3日目と比べても負けている感は否めない。メインとなるのがアリーナ席からの映像なのだが前の客の頭や手が邪魔で、画面左側で激しく振られる緑のサイリウムもウザい。画面左上の真っ赤なロゴはじっとしとるから(笑)慣れたら全然気にならないが、蛍光色のサイリウムはチカチカするので気が散ってポールに集中できないのだ。
 それと、奇声が少ないのが売りのピカデリーにしては珍しく“ホー! ホー!” という、まるでエンプレス・バレイみたいな(笑)奇声を拾っているのも残念(←もちろんEV盤ほど酷くはないが...)。いくら良席を確保しても周りのオーディエンスの中にアタマのおかしなのが一人でも混じっておればそれでブチ壊しなので、こればかりはピカさんも運が悪かったと言うしかないだろう。仮に前回取り上げた武道館を100点満点中の95点とすれば、このドーム初日は前半65点後半85点で平均75点といったところか。まぁそれでも3時間近くスクリーン・ショットを拝ませられるよりはこっちの方が遥かに良い(^.^)
【Let's go, let's go, let's go, let's go♪】

【This is for the Wings fans!】

【ポール・マッカートニー & ハンドクラッピング・リズム・セクション】

【Now, you!】

【モット キキターイ?】


 このドーム初日で一番気に入っているのは “みんな僕に聞くんだ... どうやって曲を書くのかって。次の曲はこんな感じで始まったんだ...” というポールの語りからスーッと曲に入っていくアレンジがめちゃくちゃカッコ良い「ユー・ウォント・シー・ミー」だ。この曲は“ニホン ハツ コーカイ” であるだけでなく、ライヴでもあまり演奏されたことがない貴重なナンバーで、私の手持ちのブートでこの曲が入っているのは2004年のロシア・サンクトペテルブルク公演盤とスペイン・マドリッド公演盤の2枚のみ。しかもその時はオリジナルに忠実なアレンジだったのに対し今回は斬新でカッコいいアコースティック・アレンジなのだからたまらない。コレを生で聴けてたら鳥肌モンやったろうなぁ... (≧▽≦)
Paul McCartney One On One Tour Tokyo Dome 4/27 - You Won’t See Me


 又、「ジュニアズ・ファーム」「レッティング・ゴー」「レット・ミー・ロール・イット」「1985」と最初の10曲中4曲をウイングス・ナンバーが占めるというセトリはリアルタイムでウイングスを聴いて育った私にとっては涙ちょちょぎれる選曲だし、中でもこの日にしか演奏されなかった「レッティング・ゴー」はめっちゃ貴重なナンバーだ。これでオープニングが「ヴィーナス・アンド・マース~ロック・ショウ」とかやったらたまらんやろなぁ。
170427 Tokyo Dome Paul McCartney Letting Go


 ラス前で一気呵成に畳み掛ける「バースデー」も最高だ。2015武道館の時もこの曲で会場全体が異様なくらいに盛り上がっていたが、アウト・ゼア・ツアー時の「ヘルター・スケルター」よりもこっちの方がイケイケでノリやすいので、アンコールにピッタリの名選曲だと思う。この日に観に行けた人がホンマに羨ましいわ。
170427 Tokyo Dome Paul McCartney Birthday

Tokyo Dome April 29, 2017 The Movie / Paul McCartney

$
0
0
 “ピカデリーDVDで振り返るポール2017ジャパン・ツアー” もいよいよ後半戦に突入だ。過去の日本公演では日によってほんの少しセットリストが異なることがあり、その微妙な違いが各公演の見どころ聴きどころになっていたが、今回のドーム2日目も例外ではなく、セトリが他の日と少し変えられていた。
 中盤のアコースティック・セット最初の曲がこの日だけ「ウィー・キャン・ワーク・イット・アウト」ではなく「アイヴ・ジャスト・シーン・ア・フェイス」にスイッチされていたことには特に違和感を感じないが(←これに「アナザー・デイ」も含めてアコギの定番曲やもんね...)、オープニングの「ハード・デイズ・ナイト」に続く2曲目がこの日だけ “アウト・ゼア・ツアー” で耳タコ(笑)の「セイヴ・アス」というのはちょっと肩透かしを食った感じ。私が現地組だったら “何か前回と変わり映えせんなぁ... 「ジュニアズ・ファーム」はどこ行ったんや???” と思っただろう。そういえば2015年の時もドーム2日目だけオープニング・ナンバーが「マジカル・ミステリー・ツアー」ではなく2013年と同じ「エイト・デイズ・ア・ウィーク」で、ファンの間で“エイトの日”って呼ばれてたっけ。
 今回のドーム3日間ではラス前のアンコール・ナンバーとして初日は「バースデー」、3日目は「ゲット・バック」と日替わりでアッパーなキラー・チューンが選ばれており、この日は「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」がセット・イン。ノリの良い曲で盛り上げておいて “モウソロソロ...” →「アビーロード・メドレー」という流れはもはや様式美の世界と言っていいと思う。
I Saw Her Standing There / Paul McCartney 29 April 2017 Tokyo Dome JAPAN ポールマッカートニー


 セトリの違い以外でこのドーム2日目の一番の聴きどころと言えば「1985」だろう。この日はいつもと違ってポールが左手でピアノを連打し “That's the note... and that's the riff...” と言いながら曲に入っていくのだが、コレがもうめちゃくちゃクールでカッコイイのだ。一部の隙もなく完成されたエンターテイメント・ショーというのがポールのライヴの売りだが、だからこそと言うべきか、このようなちょっとしたアドリブ・プレイが斬新に耳に響くのだろう。
1985 That's the note...and that's the RIFF Rare Cool Intro / Paul McCartney 29April2017 Tokyo JAPAN


 武道館で発症(?)したポールの“カタカナ英語病” は日本滞在中にどんどん進行していったようで、“ビィトル ズゥ”“ポォル マカァトニィ” では飽き足らず、「マイ・ヴァレンタイン」の曲紹介MCで嫁さんのことを“ナンシィ” と発音して自分でウケていたのが笑えた。私的にはカタカナ英語乱発はあまり好きではないが、ポールのこういうお茶目な一面は大好きだ。
Paul McCartney - My Valentine (live at Tokyo Dome) 29.04.2017


 このように見どころ聴きどころ満載のドーム2日目をバッチリ収録したピカデリーのDVDだが、ドーム初日よりも断然見やすい映像で(←さすがに武道館には負けるが...)奇声も十分許容レベルなので観ていてストレスを感じることはほとんどない。ドーム初日が75点ならこちらは85点あげてもいいと思う。ブートCDの方は極上オーディエンスやらイヤモニやらマトリクスやらで百花繚乱の様相を呈しているが、ブートDVDに関してはピカデリー・サーカス・レーベルの一人勝ちと言っていいだろう。やっぱり映像はあった方がエエぞう(^.^)
【ボクハ ポォル マカァトニィ...】

【オッス!】

【コノ キョクハ コンカイ ハツ コーカイ...】

【I'm not even fifty...(寒っ)】

【She was just seventeen ♪】

Tokyo Dome April 30, 2017 The Movie / Paul McCartney

$
0
0
 いよいよ東京ドーム公演も最終日... 前日の29日から休憩日を挟まずに2日連続のコンサートという強行日程だが、日本ツアーの千秋楽ということもあってポールの気合いも十分だし、前日のやまびこコール&レスポンス(?)ではかすれ気味だったポールの声もこの日はしっかりと出ているようだ。ホンマに恐るべきスタミナを誇る74歳である。
 この日のポールは終始上機嫌で、覚えたてのカタカナ英語を使いたくて仕方ないかのように “ゴォルデン ウィクだっ!”を連発(笑)、前日に “SGT Pepper's album is 50 years old this year... 50!? I'm not even 50.” と「ミスター・カイト」前のMCで寒いジョークを飛ばして見事にスベったにもかかわらず、この日も懲りずに “I can't believe it. I'm only fifty-two.”(50周年だよ... 信じられない。僕だってまだ52歳だというのに...)とこのネタで笑わそうとするが反応イマイチ(笑) でもこういう人間臭いところがポールの大きな魅力なんよね(^_^)
 この日の一番の目玉は何と言っても「ゲット・バック」がセット・インしたことだろう。ビートルズ後期の名曲群の中でも一二を争うノリの良いナンバーなので、この曲を予想してなかったであろうオーディエンスの盛り上がり様も凄まじいが、面白いのは「ゲット・バック」のイントロが「ハイ・ハイ・ハイ」とごっちゃになったような怪しい始まり方をしていること。これはドーム初日と2日目のセトリが「SGTペパーズ」→「ハイ・ハイ・ハイ」→「日替わりアッパー・チューン」という順番だったのに何故かこの日だけ「ハイ・ハイ・ハイ」が後ろに回ったためにラスティーが間違えたせいなのだが、こうった “やらかし” をも含めたスポンティニアスなプレイが楽しめるのがライヴの醍醐味というものだろう。
Sgt. Pepper's LHCB ~モットキキタイ?~GET BACK / Paul McCartney 30 April 2017 Tokyo Dome JAPAN ポールマッカートニー


 今回の日本公演で気に入っている曲の一つが「アイ・ウォナ・ビー・ユア・マン」だ。ビートルズのオリジナル・ヴァージョンはリンゴがヴォーカルだったこともあってグルーヴが軽くなりロックとしての重厚さに欠けていたが、ポールが歌うとバリバリの正調ロックンロール・ナンバーに早変わり。これならストーンズのカヴァー・ヴァージョンと十分にタイマンを張れそうだ。ノリノリでロックンロールを歌うポールは何度観ても惚れ惚れするわ... (≧▽≦)
I Wanna Be Your Man / Paul McCartney 30 April 2017 Tokyo Dome JAPAN #Beatles #Wings


 ロック魂溢れるプレイと言えば、「アイヴ・ガット・ア・フィーリング」の後半に付け加えられたジャム風パートでギンギンにリード・ギターを弾きまくるポールがめっちゃカッコイイ! 甘いバラードを歌うポールも悪くはないが、私の心を強く震わせるのは、喉が張り裂けんばかりにシャウトし、自由闊達なベースでバンドをドライヴさせ、先鋭的なギターで聴く者を圧倒するロッカーとしてのポールなのだ。ヴォーカルに関してはさすがに衰えは隠せないが、ベースやギターのプレイはまだまだ健在(←武道館の「ブラックバード」ではやらかしてしまったが...)なように思えた。
I've Got A Feeling / Paul McCartney 30 April 2017 Tokyo Dome JAPAN ポールマッカートニー


 この日のピカデリーDVDはドーム初日・2日目からアリーナ・カメラをもう1台増やした4カメ体制という力の入れようで、前の客のスマホや腕ワイパー(?)に視界を遮られそうになるとすぐに別カメラに切り替わるのでほとんどストレスを感じることなく観賞できる。随所にクロース・ショットも満載で、ドーム3日間のDVDの中でどれか1枚をと言われれば迷うことなくコレを選ぶだろう。
【気合い十分のポール】

【オクサーン (^o^)丿】

【ゴォルデン ウィクだっ!】

【ポールのジョークにすかさず巨大スクリーンの日本語訳を映すピカさんGood Job!】

【Do you wanna get back???】


 ということで家ではピカデリーのDVDを観ながら、そして車の中では何種類もあるLHのオーディエンス録音CDを取っかえ引っかえ聴きながら、今回のポール4公演の音や映像を頭の中で再構築して渇きを癒しているのだが、やっぱり生で観たかったなぁ... というのが正直なところ。まぁ有言実行が売りのポールのことだから “マタ アイマショウ!” という約束を果たしに来年か再来年あたり日本に来てくれることを期待してその日を待ちたいと思う。

【おまけ】
この日の “ファン・オン・ステージ” のコーナーに静岡から来たスズキマユという女の子が登場するのだが、英語が通じない彼女に対して当意即妙なトークで会場を笑いの渦に巻き込んでいくポールがめっちゃ面白い。特にポールの“What's your name?” という問いかけを誤解して “マッカートニー!” と答えた彼女に対して間髪を入れずに “That's me.” とツッコミを入れるところなんかもう大笑い(^.^)  この掛け合い漫才みたいなやり取りはDVDではカットされてるのでYouTubeで楽しんでくださいな。
Lucky Visitors on Stage / Paul McCartney 30 April 2017 Tokyo Dome JAPAN #Beatles #Wings

ビートルズのフィギュア買った (^o^)丿

$
0
0
 少し前のことになるが、「なんでも鑑定団」の “おもちゃ鑑定大会” の回に何とビートルズの首振り人形が “お宝” として登場した。レコードの値段ならおおよその見当はつくが、いわゆるひとつのメモラビリアと呼ばれる分野はまったく未知の領域だ。“ボブルヘッドって確か昔スミザリーンズが「抱きしめたい」をカヴァーしたビデオに出てきたあの首振り人形か。ちゃーんとご本尊のもあるんやなぁ...” などと考えながら “ビートルズの人形って一体いくらぐらいするもんなんやろ?” と興味津々で鑑定を見守った。
 依頼主による本人評価額は13万円。それを聞いて “そんなアホな... 金パロのモノラル盤余裕で買えるやんけ... せいぜい数万円がエエとこやろ...” と思ったのだが、鑑定結果は何と驚異の20万円! 解説によると、この首振り人形は1964年にアメリカのカーマスコット社が日本に発注して作らせたMADE IN JAPAN の逆輸入ヴィンテージ・ボブルヘッド・ドールで、状態が良くて箱付きということでこれだけの値が付くのだという。
 さすがはビートルズやなぁ... と感心しながら興味本位にヤフオクでビートルズのフィギュアを商品検索してみたところ、約80件ほどヒット。しかしそれらのほとんどが “これのどこがビートルズやねん!”とツッコミを入れたくなるような、4人に似ても似つかぬフィギュアばかりで、安かろう悪かろうというべきか、特に数千円で買えるブツにはロクなものがない。
 そんな中で私の目を引いたのが1994年にHallmark社から発売されたフィギュアで、スーツからステージセットまで1964年のワシントン・コロシアム公演のステージを模して作られている。4人の表情はそれほど似ているというワケではないのだが、私が気に入ったのは両足を踏ん張ったジョンのガニ股を見事に再現しているところで、ちょっと前かがみになって1本のマイクをシェアするジョージとポールもビートルズな雰囲気を巧く醸し出している。それが約1万円というお買い得価格で出品されていたのだ。たまたまその時はオークションで狙っているレコードも無かったので、1万円ぐらいで手に入るんならスピーカーの上に飾るアンティークとしてエエかもと思いスナイプを敢行、結局ライバルは1人だけで、10,240円でゲットすることができた。
 届いたフィギュアをスピーカーの上に飾り、“これは思てた以上にエエ雰囲気やわ...(^.^)” と悦に入りながら「ミート・ザ・ビートルズ」をターンテーブルに乗せ、針を落とす。モノラル盤の重低音がズンズン腹に響いて心地良い。ところがあまりの振動の大きさに耐えかねたのか、A面2曲目「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」の途中でリンゴがドラム台からストンと転げ落ちてしまったのだ。う~ん、まいった(>_<)  まぁ大型スピーカーの上に置くことを想定して作られてはいないのだから当然と言えば当然だ。
 そこで外付けHDDの振動対策なんかに使われる防振パットを買ってきてステージ台の下に敷いてみたところ、状況は大きく改善。更に4人の靴とマイクスタンドの裏に両面テープを貼ってステージに固定してみると微動たりともしなくなった。試しに赤パロ、金パロ、ラウドカットに「死ぬのは奴らだ」ライヴのマグネシウム大爆発と、どんな轟音盤を鳴らしてみても4人はピクリとも動かない。ホコリが積もらないように透明のフィギュアケースもアマゾンで追加購入。これでようやく一安心だ(^.^) 
 初のビートルズ・フィギュア購入で浮かれ気分の私はもう一方のスピーカーの上にもビートルズを飾りたいと考えて今度は eBayで検索してみたところ、タイのセラーから4人そっくりのフィギュアが出品されているのを発見。例の「ヘルプ」の手旗信号ポーズなのだが、ハンドメイドで4人の表情がめちゃくちゃ精巧に再現されているところに一目惚れしてしまい、BUY IT NOWで$150のところをmake offer の設定があったので9掛けの$135 で値下げ交渉してみるとagreedの返事が来たので即決でこの逸品をゲットした。
 こちらはフィギュア本体の高さが27cmもあって予想していたよりもかなりデカかったが、いざスピーカーの上に4人並べてみるとコレがサイズ的にピッタリでめっちゃ見栄えが良いし、4人の顔をじっくり見れば見るほどそれぞれの特徴をよくつかんでるなぁと感心させられる。タイの職人さん、ホンマにGJやで (^o^)丿

Beatles For Sale【Mit Cutistad Cover】

$
0
0
 アナログ・レコードの魅力は何と言ってもそのジャケットにある。LPが登場した時には “初めて一般庶民がアートを手に入れた” ということで “30cmのアート・ギャラリー” と呼ばれたそうだが、1枚のジャケットが音楽への想像力をかき立てるという意味でも、音源パッケージとしてのレコード・ジャケットは必要不可欠なものだろう。これに比べればCDなんておもちゃみたいなモンでアートもヘッタクレもないし、ましてやジャケットの無い今時のダウンロード型音楽配信など私にとっては何の興味関心も湧かない、論ずるに値しないシロモノなんである。
 世界中で発売されたビートルズのレコードの中にはUKオリジナル盤とは又違ったその国独自のジャケットを纏った盤も少なくないが、特に優れたデザインのレコードは “〇〇カヴァー” という愛称で親しまれ、高価なプレミア付きで取り引きされている。かく言う私も今年に入ってから「バルーン・カヴァー」「バグパイプ・カヴァー」「チェア・カヴァー」「ビートルズ1965ダイカット・カヴァー」といった秀逸ジャケット盤を首尾よく手に入れてきたが、最近また1枚、貴重な盤をコレクションに加えることが出来た。それが今回紹介する「ビートルズ・フォー・セール」のドイツ・リイシュー盤で、コレクターの間では “Mit Cutistad Cover” の通称で知られる1枚だ。
 このレコードはスタダ・アルツナイミッテルというドイツの大手製薬会社が1981年にドイツ・オデオンとのタイアップで制作したもので、cutistadという足に塗る軟膏の販促目的で数百セットが作られて関係者や新規の顧客に配られたとのこと。販促目的という点ではオランダの「シェル・カヴァー」と似たようなものだが、皮膚の炎症と闘うマッシュルームのキャラにマッシュルーム・カットのビートルズを引っ掛けてコミカライズしたアウター・スリーヴが実にチャーミング!!! そのスリップケースの中に「ビートルズ・フォー・セール」のドイツDMM盤がオリジナル・スリーヴごと入っているという仕掛けになっているのだが、とにかくアウター・スリーヴに描かれた紫色のマッシュルーム君たちのインパクトは絶大で、ビートルズ・ファンなら手元に置いて眺めたくなること請け合いだ。因みにネットで見つけた cutistad の販促ステッカーがコレ↓


 この盤の存在はディスクユニオンのビートルズ廃盤レコードセールの広告で知ったのだが、その愛らしいジャケットを一目見て気に入った私がすぐにメールで値段を問い合わせてみたところ、何と68,000円(!)ということでビックリ(゜o゜)  いくら何でもジャケットだけのために(←中身は手持ちのドイツDMM盤と全く同じ...)7万円近くのお金を出せるワケがない。 eBayやDiscogs にも滅多に出てこなくて、たまに出品されても$300~$800というニンピニン価格で手も足も出ない。私はとりあえずこのレコードを eBay で “お気に入り” に、Discogs で “ほしい物リスト” に登録してチャンスがくるのを辛抱強く待つことにした。
 その後 eBay で2回ほど勝負して惨敗し、“やっぱり2万円以下で買うのは無理なんか...” と半ば諦めかけていたところ、1ヶ月ほど前に Discogsから「ほしい物リストのアイテム1点が出品されています」というお知らせメールが届いた。値段を見ると何と€49.99という信じられない低価格だ。“どーゆーこっちゃねん???” と訝しく思いながら商品説明を読むと、ジャケットにウォーター・ダメージがあるのでこんなに安いのだという。ただ、ウォーター・ダメージに関しては “Only spots, most of them on the back... no heavy damages, smells a bit.(シミだけで、ほとんどは裏面。大きなダメージはなく、少々臭う程度。)” ということなので、とりあえずどの程度のダメージなのかを知るためにメールで写真を送ってもらうことにした。
 届いた添付写真を見たところ、商品説明通り表ジャケのシミは気にならない程度だったので、“smells a bit” の件は少し気になったが(笑)このチャンスを逃せばこのレコードはもう手に入らないかもと考えた私は意を決して “注文する” をクリック。少々ジャケットが傷んでいようが、こんな垂涎盤が送料込み7,000円で手に入るのだから嬉しくてたまらない(^.^)
 1週間ほどしてブツが届き、私は中身のレコードそっちのけでアウター・スリーヴをチェック。確かにウォーター・ダメージで少々ブヨブヨになっていたが、心配していた臭いはほとんど問題なし。私はとりあえず消毒用アルコールで表面を拭いた後、のり付きビニール外袋に密封して冷凍庫に半日ほど入れ(←テレビでやってたのを見てダメ元で試してみたが、確かにかなり水分が抜けた...)、ファブリーズしてから半日ほど天日干しして出来上がり。ジャケット・コンディションで言えば F → VG+ ぐらいまで修復できたと思うのだが、美品を7万円で買うことを考えればその1/10の値段でVG+盤を買ったことになるのだから、コスパは抜群に高いと言えるだろう。念願の“Mit Cutistad” カヴァーをついに手に入れることができて浮かれまくっている今日この頃だ(^o^)丿

Magical Mystery Tour EP ニュージーランド盤

$
0
0
 私がeBayを始めたのは2002年の7月なので、かれこれもう15年も海外から直接レコードを買っていることになる。さっき見たら評価の数が1369にもなっていて、一体いつの間にこんなに増えたんや???とちょっとビックリ。更にここ数年はeBayのオークションだけでは飽き足らず、DiscogsやMusicstack、CDandLPといったセット・プライス販売のサイトにまで手を出しているので、大体2~3日に1枚のペースでブツが届くというレコード三昧の日々を過ごしているのだが、これだけ色々買いまくっているとレコードの神様が微笑んでくれるのか、時々めっちゃオイシイ思いをすることがある。つい最近もひとつそういう経験をしたので今日はその件について書こうと思う。
 私が仕事から帰ってイの一番にするのはリビングのテーブルに置かれている郵便物のチェックなのだが、おととい家に帰ってみるとA4サイズぐらいの国際小包が1つ届いていた。どう見ても7インチ盤の大きさなのだが、この2ヶ月ほどはポールの日本公演ブートにかまけていたのでシングル盤もEP盤も買った記憶はない。“一体どこの誰が何を送ってきたんやろ?” と訝しく思いながら封を開けてみると、中から出てきたのは「マジカル・ミステリー・ツアー」EPのニュージーランド盤だった。
“こんなん買うた覚えないけど、一体どーなってんねん?” と狐につままれたような気分で送り主を見ると Sophia Knoff と書いてあり、住所はニュージーランドのウェリントンという町になっている。eBayでもDiscogsでも、取り引き相手は基本的にIDしか分からないので、コレだけではどうにもこうにも調べようがない。今年の4月から5月にかけてNZ盤を何枚か獲ったのでその時の取り引き相手の内の誰かという可能性が高いが、それにしても買ってもいないレコードを送ってくるなんて一体どういうことなのか、まったくワケがわからない。
 「マジカル・ミステリー・ツアー」のNZ盤EPはすでに持っていたので “同じ盤が2枚あってもしゃーないなぁ...” と思いながら中身のレコードを取り出したのだが、よくよく見るとセンター・レーベルのデザインが何かちょっと違う。慌てて手持ちの「マジカル・ミステリー・ツアー」NZ盤を引っ張り出してきて比べてみたところ、上記の写真のように同じイエロー・パーロフォンでありながら明らかな違いがいくつもあるではないか! これはエライコッチャである。マニア魂に火がついた私はこれら2種類のNZ盤「マジカル・ミステリー・ツアー」EPについて細かく比較してみることにした。
 曲名表記の文字が色も字体も大きさも配置も全然違うのは一目瞭然だし、レーベル面自体の色も送られてきた①はUK盤と同じような濃い黒色なの対し、手持ち盤②の方は少しグレーっぽい黒色だ。レーベル面右上の “45 RPM” の下に書かれている “MMTA1” も①はドット無しで②はドット有り(MMT.A1)となっている。盤の重さは①が39gなのに対し、②は34gだ。しかしランオフ・エリアにはどちらも手書きで “7XCE 18435” と刻まれていて全く同じなのだからややこしい。ジャケットはどちらもUK盤とは違う鮮やかなブルーでしっかりとコーティングされており、デザインも作りも全く同じ。UK盤のようなブックレットは付いていない。
↓左が今回送られてきた盤①、右が元々持ってた盤②


 肝心の音の方は私の耳では違いが分からないレベルで、どちらもがっしりした低音域に分厚く張り出してくる中音域、そして伸びやかな高音域のバランスが絶妙という、実に気持ちの良いモノラル・サウンドが楽しめる。特にポールのベースの押し出し感が強烈で、ボディーブローのように腹にズンズン響いてくるのだ。モノラルの「マジカル・ミステリー・ツアー」としては UKオリジナル盤EPとタイマンを張れるレベルの高音質盤と言えるだろう。やっぱりNZ盤って凄いわ... (≧▽≦)
 とまぁこのようにどちらも良い音でメデタシメデタシなのだが、レコード・コレクターの性というヤツなのか、どちらが1st プレスなのかが気になって仕方がない。レーベル内周に書かれているリム・クレジットはどちらの盤も MADE IN NEW ZEALAND BY HIS MASTER'S VOICE (N.Z.) LIMITED となっており、この表記が MADE IN N.Z. BY EMI (NEW ZEALAND) LIMITED に変わる1973年以前にプレスされたものであることは間違いない。
 唯一の手がかりになりそうなのが曲名表記の文字だ。私は「ヘイ・ジュード」のNZ盤のシングルを1stプレス盤とリイシュー盤(←アホなセラーが前者と間違えて送ってきたものを処分せずに残しておいたものでめっちゃショボイ音)の2種類所有しているのだが、ゴシック体で文字がくっきり読めて字体が小さい①は60's後期プレスのものに、ローマン体で文字色が薄くてフォント・サイズが大きな②は70'sプレス盤に酷似しているのだ。以上のことから、今回送られてきた①が68年に出た 1stプレス盤、私が(1stプレスと信じて)持っていた②は70~73年の間に作られた 2ndプレス盤ではないかというのが私の推測だ。
↓左が「ヘイ・ジュード」のNZ盤 1stプレス、右が1978年に出た再発盤


まぁどちらにせよ、どこの誰かは知らんけど、希少な NZ 1stプレス盤と興味深いネタを提供してくれてありがとさん(^.^)

More Get Back Session / The Beatles

$
0
0
 私のリスニングルームはごく普通の六畳間で、LP約1,800枚、シングル約1,200枚、そしてCD約1,500枚を並べた棚を天井近くまで積み上げた、それこそまるでレコ屋みたいな部屋の中で暮らしている。阪神淡路大震災の時はCDがドバーッと落ちてきてかなりヤバかったが、LPが増えた今となっては大きな揺れが来たら確実にレコードの下敷きになるだろう。そういえばレコスケ漫画で、寝てる時に地震でレコ棚が倒れてきた時に大好きなジョージのレコードで死ねるようにと「オール・シングス・マスト・パス」が頭に当たる位置に置くというお話があって(←レコスケの “危うくローラーズで死ぬところだったよ” には大笑いwww)、“頭に落ちてきて怪我するんやったら「ホワイト・アルバム」がエエかな...” などと考えていた私はあれを読んでレコスケに強く共感を覚えたのだが、いずれにせよ無精者の私にとって膨大な数のレコードの整理・収納ほどやっかいなことはない。
 この部屋に置いてあるのは自分がよく聴くレコードやCDで、あまり聴かない盤は容赦なく隣室行きになる。例えるならプロ野球の1軍と2軍みたいなものだ。私は月平均で大体20枚ぐらいのペースでレコードを買っているので、定期的にこの1軍と2軍の入れ替えを行っているが、特にこの1年間でビートルズの各国盤が激増したせいもあって配置換えの必要に迫られ、テプラで新たに国別のラベルを作り直して本格的にレコード棚の整理を行った。
 アーティストやジャンル別のラベルを貼って整理してある1軍の棚に比べ、隣室にある2軍の棚は整理が全然出来ておらず、どこに何があるのかサッパリ分からない。そんな、ミルト・バックナーとブームタウン・ラッツと石野真子が一緒くたに並んでいるというあまりにもカオスな状態の中で偶然目に留まったのが中学時代に買ったブートレッグLPたちで、ジャケットが “俺を聴いてくれ!” “いや、私を聴いて下さい!”と訴えかけてくるのである。忘れかけていたレコードを聴き直して新たな発見をするというのはこれまでに何度も経験しているので、私は久しぶりにブートのレコードでも聴いてみるか... と考え、「ゲット・バック・セッション」を1軍に連れ帰ることにした。
 このレコードは私が初めて買ったブートレッグで(←当時は「海賊盤」って呼んでた...)、DVDやブルーレイどころかビデオデッキすらまだ持っておらず、年に2~3回開かれていたフィルム・コンサートでしか「レット・イット・ビー」の映画を観れなかった私は、ガチのサウンドトラック盤として選曲・音質共に最高だったこのレコード(←「シネローグ」という完全収録版もあったが音質が悪くてとてもじゃないが聴く気になれない...)をそれこそ針が擦り切れるほど聴きまくったものだった。ブートに関しては便利なCD一辺倒になっていたこともあって、この「ゲット・バック・セッション」も2軍暮らしで不遇をかこっていたのだが、久々に1軍即スタメンという感じ(?)で早速聴いてみることにした。
 A①の「マックスウェルズ・シルバー・ハンマー」からA②「ベサメ・ムーチョ」、そしてドライヴ感溢れるA③「トゥー・オブ・アス」へと続く流れ... う~ん、この音といい、この曲順といい、ホンマに懐かしいわぁ...(^.^)  もちろんリマスターされたTMOQ盤「レット・イット・ビー・ザ・ムービー」の洗練されたサウンドに慣れた耳には古臭い音に聞こえるが、そのラウドで武骨なモノラル・サウンドには高音質なリマスター音源には無いレトロな味わいがあって、70年代ブートのレコードも結構やるやん!という感じ。それこそあの時代にフィルム・コンサートで聴いた懐かしい音そのものだ。
 そんなゴツゴツしたサウンドで聴くA④「ワン・アフター・909」やA⑤「シェイク・ラトル・アンド・ロール」、A⑥「ゲット・バック」といったロックンロール・ナンバーの迫力はこの盤でしか味わえないものだし、B①「ピアノ・ブギー」(←ジャケットには「ホール・ロッタ・シェイキン・ゴーイング・オン」と表記されているがどこをどう聴いても違うやろ...)の強烈無比なノリには思わず身体が揺れてしまう。B④「アイヴ・ガット・ア・フィーリング」(←ジャケットには「ディグ・ア・ポニー」とあるがもちろん誤り)でのポールのシャウトもモノラルならではのギュッと凝縮された音の塊がスピーカーから飛び出してくる感じが実に気持ちイイ(^.^)
 B⑤「ポール・ラップス」はポールがジョンにライヴの必要性を説いているシーンを丸ごと収録したもので、買った当時は “何で音楽入れんと喋りなんか入れとんねん...” と不思議に思ったものだが、何度も聴くうちにポールが訥々とジョンに語りかけるそのリヴァプール訛りのイントネーションが耳に残るようになり、いつの間にか愛聴トラックになってしまった(笑) 本編映画ではこの喋りの後に「トゥー・オブ・アス」に続くのだが、私的にはアルバートホールがスベッたとかストラヴィンスキーがコロんだとかの話の後にこのレコードの曲順通りのB⑥「レット・イット・ビー」が流れるのが一番しっくりきてしまう。困ったものだ(笑)
 ということで両面併せてもわずか25分30秒というこのレコード、私の思い入れが大きいのかもしれないが、客観的に見ても映画「レット・イット・ビー」の“ベスト・オブ・ザ・ベスト”的な選曲とその秀逸な曲配置で、今でも十分傾聴に値する1枚ではないかと思う。こいつはずっと1軍に置いとこ。
MORE GET BACK SESSIONS The Beatles


【おまけ】B⑤「ポール・ラップス」を怒涛のワーディング。これで大体あってると思うけど、ポールの “you know” 乱発(約2分弱の間に何と16回も!)に、何とかジョンの共感を得ようとするポールの気持ちが見て取れた。
'Cause, you know, whenever we talk about it, we have certain rules... like George was saying. "What do you want to do?"... and he says, "No films," you know. But it's wrong, though. It's very wrong, though, because you don't know. He says... what he means is, "No Help! or Hard Day's Night," you know, and I agree, you know. But like, no films... 'cause this is a film... and he now doesn't mind this. But it's like... it's that kind of thing... like no TV shows, no audience. But, I mean, see, it's like when we came back from Hamburg and did Leicester Du Montfort Hall, or wherever it was, Coventry, you know... we played the ballroom, and we had the worst first night then, and we were all nervous, and it was terrible. Then we played another the next night, and we got a little bit better... the next night... hmm... and then the next. It was just too much, and we got into the playing because we got over the hang-up of the audience, and it was just like there was no one there, but it was a ner... a new sort of thing, and there was some fella in the front watching how you were playing, you know. And you just... we were just right into it. And those would have been... if we could have recorded those things, you know, they would have been the greatest, 'cause it is... it's like Mal was saying, he said, "It's the bounce thing," you know. And we're good at that, you know, once we get over the nervousness. But it's like, it's the hurdle of that nervousness is there now. So that... you know, we're... we can't get over it now, unless... well, you know, unless we really sort of, like, go to the Albert Hall and get in a black bag, you know. See, and then the only other alternative to that is to say, well, we don't... we will never do it to an audience again, you know. But if we... if we intend to... to keep any kind of contact on that scene... Yeah I do understand George's just saying, "There's no point," you know, 'cause it's like it is... it is like we're Stravinsky, and it's in the music, you know. And he doesn't sort of get up and play his Joanna for them any more, you know.
【対訳:Let It Be J Edition より】
だって俺たちは何か決める時は合議制っていうのが原則だからさ。だからジョージに訊いたんだよ。「お前はどうしたいんだい?」ってさ。そしたら「映画は絶対にイヤだ」ってさ。でもそれは大間違いだと思わないかい?だってやってみなきゃわからないだろ?彼は「HELP やHARD DAY'S NIGHTはウンザリだ」って思っているんだよ。それは俺だって同じ意見さ。だからって映画そのものを全否定されてもね。実際今だって撮影してるじゃん。でもジョージは全然気にしてないだろ?多分こういうことだと思うんだ...「テレビには出ない!客の前にも出たくない!」でもさ、俺たちハンブルグから戻った時にレスターでライヴやっただろ?レイセスターデモントフォートホールでさ。あとコベントリーとか色々さ。でっかいダンスホールのギグでアガっちゃって、初日のライヴは最悪の出来だったよな。それで次の日にまたライヴがあってさ。ちょっとはマシになった。その次またその次ってやっていくうちにどんどん良くなっていっただろ?しまいにゃ最高のライヴが出来るようになった。観客のプレッシャーを乗り越えたんだ。観客にビビらなくなったのさ。そして俺たちのプレイを真剣に聴いてくれるファンが増えてきた時だって、そういうファンを満足させるくらいの技量を身につけたんだ。当時のそういう状況をだよ... もしあの時ちゃんと記録しておいたらビートルズの最高傑作になっただろうな。だってマルも言ってたんだぜ...「あの頃のライヴは最高にハジけてた!」ってさ。そうさ、俺たちは確かに最高だった。ステージでビビらなくなった俺たちにはもう怖いモンなんてなかったんだ。でも一方でさ... “ビビりのハードル”の高さはあの頃よりも上がっていると思うよ。だからさ... 今の俺たちに“人前での演奏にビビるな”って言われても無理だってことは分かってるさ。でも、だからってさ、アルバートホールのステージに立って客にこう言えるかい?「僕たち人前が苦手なんでメンバーそれぞれ黒い袋に入って演奏しま~す」ってさ。な?あとはもう宣言するしかないだろ?「もう絶対にコンサートはやりません!」ってさ。だけど、もし何らかの接点をファンと持ち続けたいと思うならさ... 何かをしなくちゃ。俺はね、「ライヴなんて意味ねぇぜ」っていうジョージの意見も理解してるつもりさ。それは例えばストラヴィンスキーみたいに活動するのも一つの方法だっていう意味でね。作曲や音楽の制作に専念してさ... ステージに復帰してジョアンナを観客の前で演奏することは二度とないっていうスタンスさ。

ジプシー・ジャズで聴くビートルズ特集

$
0
0
 この1年ほどビートルズの各国盤蒐集で忙しくて他ジャンルの音楽はあまり聴いていなかったが、最近になってそちらの方も一段落したので、この前の休みの日に “オール・マヌーシュ” と題して久しぶりに朝から晩までローゼンバーグ・トリオやビレリ・ラグレーンといったジプシー・ジャズ三昧をやってみた。う~ん... 久々に聴くあのザクザク刻むリズム・ギターの音はめっちゃ気持ちエエなぁ... (≧▽≦)  私が好んで聴くジャズは50年代のものがほとんどで最近の新譜には全く食指が動かないが、ジャンゴ・ラインハルト以来の古き良き伝統を頑なに守り続けるジプシー・ジャズに限っては新譜や新人をこれからもどんどん聴いていきたいと思っている。
 そんな “オール・マヌーシュ” をやった翌日のこと、リズム・ギターのザクザク音が脳内リフレイン状態の私はふと、“ビートルズをジプシー・ジャズ・スタイルでカヴァー、って今まで聴いたことがないけど、やっぱり無いんやろか?” と考えた。そこで仕事が超ヒマなのをこれ幸いと YouTubeで検索してみるといくつかヒットしたのだ。もちろん “何じゃいコレは???” というトホホなカヴァーもあったが、逆に“おぉコレは中々エエやん(^o^)丿” と快哉を叫びたくなるような秀逸カヴァーにもいくつか巡り逢えたのだ。そういうワケで、今回は “ジプシー・ジャズで聴くビートルズ” の特集だ。

①Honey Pie(その1) 
 まず驚かされたのがフレッド・アステアへのオマージュ的なポールの作品「ハニー・パイ」の異常なまでの人気ぶりである。選曲がもっと色んな曲にバラけるのかと思っていたら猫も杓子も「ハニー・パイ」なのだ。私のようなド素人には知る由もないが、この曲の中に潜む何かがマヌーシュ達を惹きつけるのかもしれない。
 そんな“マヌーシュ版”「ハニー・パイ」の中で気に入ったのがスウィング・ドゥ・ジタンというイスラエルのジプシー・ジャズ・トリオによるカヴァーだ。ギリギリと軋むような音を立てるアコベとザッザッと正確にリズムを刻むギターの絶妙な絡みぐあいが私の嗜好のスイートスポットを直撃。最後までこのまま行くのかなぁと思わせておいて2分48秒あたりでテンポを上げるアレンジもマヌーシュならではだ。この曲が入ったCD「Muza」をeBayで$9で見つけた時は嬉しかった。
Honey Pie


②Honey Pie(その2)
 上記のスウィング・ドゥ・ジタンと甲乙付け難い名演がエイドリアン・ホロヴァティの「ハニー・パイ」だ。ジプシー・ジャズが盛んな街、シカゴでブイブイいわしているアメリカン・マヌーシュ・シーン(?)の重鎮ギタリストだけあって、まさに王道を行くマヌーシュ・アレンジでポールの名曲を料理している。凄いのは独り二重奏でこれだけの作品に仕上げていることで、ノリ良し、センス良し、テクニック良しと、三拍子揃った名演になっている。
"Honey Pie" Beatles gypsy jazz guitar


③Girl
 ジプシー・ジャズの魅力の一つに曲の途中で一気にギアを上げるチェンジ・オブ・ペースの妙があるが、まるで絵に描いたようにそれを具現化した演奏がこの「ガール」だ。0分42秒からまるで鎖を解き放たれた犬のように猛然とスイングを開始、2分台に入って更なる緩急をつけ、トドメは2分38秒からの歌心溢れるギター・ソロ... 何の違和感も感じさせずに中期ビートルズ屈指の名曲をマヌーシュ化しているところが凄い。ジプシー・ジャズでは珍しいコーラスワークのアレンジも秀逸だ。
The Beatles - Girl (gypsy jazz version)


④Lady Madonna
 ブラディ・ウインテルステインがビレリ・ラグレーンの右腕として活躍している叔父のホノと組んだクインテットによるビートルズ・カヴァー。名手ホノのリズム・ギターに乗って気持ちよさそうにスイングするブラディの歌心溢れるソロが素晴らしい。マヌーシュ・バンドならではのヴァイオリンをも含めた、色んな楽器の音が混然一体となって大きなグルーヴを生み出しているところがめっちゃエエ感じ。アットホームな雰囲気の中ででワイワイやりながら音楽を楽しんでいる、といった按配の寛ぎに溢れた演奏だ。
Brady & Hono Winterstein Quintet - Lady Madonna (Gypsy Jazz)

Center Stage / Tommy Emmanuel ~超絶アコギで聴くビートルズ・メドレー~

$
0
0
 前回取り上げたジプシー・ジャズ・スタイルによるビートルズ・カヴァーをYouTubeで色々と検索していた時に偶然凄い動画を見つけた。アコースティック・ギター1本でビートルズの名曲をメドレー形式でカヴァーしているのだが、とにかくその超絶テクニックが凄すぎてパソコンの画面に目が釘付けになってしまった。それがこの↓映像だ。
Tommy Emmanuel - Beatles Medley - While my guitar gently weeps


 恥ずかしながら私はこのトミー・エマニュエルというギタリストの名前すら知らなかった。ネットで調べてみると、この人はフィンガー・ピッキングを得意とするオーストラリアのギタリストで、2,000年のシドニー・オリンピック開会式でも演奏したとのこと。ジョージ・ハリスンにも多大な影響を与えたチェット・アトキンス御大から “間違いなくこの地球上で最高のギタリストの1人” と絶賛されたというからそのテクニックは折り紙つきだ。
 2013年にニューヨークのBBキング・ブルース・クラブで行われたこのライヴでもキレッキレのパフォーマンスを披露(≧▽≦)  この人が凄いのは信じられないような超絶プレイを実に楽しそうに、しかも楽々とやってのけてしまうところで、ギターを弾くだけでなく擦ったり叩いたりしてメロディー、コード、リズムを同時に鳴らしながらギター1本で演奏しているとは思えないような厚みのあるサウンドを生み出しているのだから観ている方はもう開いた口が塞がらない(゜o゜)
 ライヴ・パフォーマーとしてもピカイチで、その溢れんばかりの歌心と圧倒的な超絶技巧に熱狂するオーディエンスに触発されて更に凄いプレイを繰り出していくという好循環スパイラル。上の動画でも笑顔を絶やすことなくギターをまるで身体の一部であるかのように自在に操りながらほとんど手元も見ずにスーパープレイを連発、「デイ・トリッパー」のリードとベースの同時弾きなんて一体どーなってるねん???とツッコミを入れたくなるような神業だし、7分40秒あたりからギアを上げて一気呵成にたたみ掛けるところなんかもう言葉を失う凄まじさだ。1分08秒あたりでポン!とカポを外すしぐさもめちゃくちゃカッコ良くて、まさに生粋のエンターテイナーなんである。
 動画を見てこの人のアルバムを聴いてみたくなり早速ディスコグラフィーをチェックしたところ何と30枚近くの作品をリリースしていたのだが、CDのトラックリストを見てもほとんど知らない曲ばかり。この人の真骨頂はライヴにありそうなので、とりあえずこの「ビートルズ・メドレー」が入ったライヴ盤に絞って検索してみると「ライヴ・ワン」「センター・ステージ」「ライヴ・アット・ザ・ライマン」の3作品がヒット。ネットで「ビートルズ・メドレー」を比較試聴した結果、「センター・ステージ」のDVDを買うことにした。これは2007年10月にカリフォルニアのシエラ・ネバダ・ブルワリーで行われたライヴを収録したもので、上記2013年ライヴのメドレーに入っていた「シーズ・ア・ウーマン」と「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウイープス」が未収録なのがちょっと残念だが、3枚の中では「ヒア・カムズ・ザ・サン」で始まるメドレー・アレンジが一番気に入ったのでコレにした。
Tommy Emmanuel Beatles Medley @ UltraSharpAction com YouTube


 冒頭の“Put on your kneepads, put on your helmet, this is acoustic music in your face...”(ニーパッドとヘルメットのご準備を。それでは攻撃的なアコースティック・ミュージックをどーぞ!) というMCがすべてを物語るように、フィンガーピッキング・スタイルで音色の変化や緩急を自在につけながらアコギをバリバリ弾きまくるトミエマに圧倒される。特にアッパーな疾走系チューンで聴かせるドライヴ感はまさに “神ってる” と言っていいと思う。もちろん超速弾きだけでなくスローな曲も取り上げており、「上を向いて歩こう」や「朝日の当たる家」での魂のこもったプレイには涙ちょちょぎれるモンがある。優れた演奏家は “楽器を通して歌をうたう” とよく言われるが、とにかくギター1本でこれだけの音世界を表現できるのか...と驚倒させられた DVDだ。
TOMMY EMMANUEL : SUKIYAKI


 “ジプシー・ジャズでビートルズ” という思いつき(笑)とYouTubeという動画サイトがなければ多分その存在すら知ることはなかったであろうトミー・エマニュエル... 音楽を聴く醍醐味の一つは今回のようにお気に入りのアーティストを偶然見つける喜びにあるのだなぁとつくづく感じた。

【おまけ】オーストラリア出身だけあって何とあのAC/DCまでアコギで(←後半部はエレキだが...)カヴァーしてしまうトミエマ師匠! 兄のフィルとの共演だが、問答無用の超速弾きであのバリバリのハードロック「リフ・ラフ」を弾き切るトミエマ恐るべし!
Tommy & Phil Emmanuel - ACDC Medley Riff raff Let there be rock

Les Beatles (France Odeon OSX 222)

$
0
0
 私がビートルズの各国盤に魅かれる理由の一つはディフ・ジャケにある。基本的にはUKオリジナル盤至上主義者なのでUK盤のジャケット・デザインがもちろんデフォルトなのだが、ごくごくたまに “このジャケット、UK盤とは又違った味わいがあってめっちゃエエやん!” というレコードに遭遇するのだ。そんな各国盤の中でも独自のジャケット・デザインで私のコレクター心理をくすぐるのがデビュー盤から「ヘルプ」までの初期フランス盤なのだ。
 私がフランス盤に興味を持ったきっかけは清水の舞台から飛び降りるつもりで衝動買いした「Les Beatles 1965」で、最難関盤を首尾よくゲットしてすっかり味をしめた私はその後も「4 Garçons Dans Le Vent」(←ハード・デイズ・ナイトのこと)と「Help!」という2枚のサントラ盤をゲット、残すは「Les Beatles」(OSX 222)と「Les Beatles N°1」(OSX 225)の2枚ということで、ネット上に網を張り巡らせて状態の良い仏オリジナル盤(←安っぽい70'sリイシュー盤はNG!)がリーズナブルなお値段で出品されるのを虎視眈々と狙うことにした。
 それから3ヶ月ほど経った7月半ばのある日のこと、ついに「Les Beatles」(OSX 222)が €150でDiscogsに出品された。このレコードの1stプレスはダーク・グリーン・レーベルなのだが滅多に市場には出てこず、ごくたまに見かけてもほとんどが2nd又は3rdプレスのオレンジ・レーベル盤で、それですら €200オーバーというボッタクリ価格(>_<)  そういうワケでダーク・グリーン・レーベルは高嶺の花と諦めていた私は良い出物を求めてオレンジ・レーベルの出品欄をチェックしていたのだが、その €150盤はコンディション表記が VG/VGで、商品説明には SOME SURFACE MARKS BUT PLAY VERY WELL, COVER IS VG NO WRITTING, FIRST PRESS GREEN LABEL RARE とある。え?オレンジ・レーベルとちゃうの??? しかもグリーン・レーベルが €150ってホンマなん???
 全身の血が逆流しそうなぐらいコーフンした私はすぐに「注文する」をクリックし、心の中でガッツポーズ。あとはDiscogsからの請求書送信済みメールを待ってペイパルで支払いをすませれば万事OKだ。しかしそれから数時間たって送られてきたのは "Cancelled (Per Buyer's Request)" という無慈悲なタイトルのメールで、"Sorry the lp is out in my stock" というセラーのメッセージが添えられていたのだ。Discogs ではよくあることとは言え、 “在庫管理ぐらいちゃんとせぇよ、この糞フランス野郎!” という怒りのやり場もなく、歓喜のガッツポーズ(笑)からの激しい落差に思いっ切り落ち込んだ。
 しかしその3日後に偶然覗いた CD and LP.com に「Les Beatles」が元値 €180の20%オフ・セールで €144という “持ってけドロボー価格” で出ているのを発見、コンディションは VG/VG でコメント欄には “LABEL VERT” とある。VERT の意味が分からなかったのですぐに翻訳サイトで VERT を調べると、GREEN という答え。キタ━━━(゜∀゜)━━━!!! という感じで頭に血が上った私は即オーダー。捨てる神あれば拾う神ありとはまさにこのことだ。
 良いことは重なるもので、発送からたったの5日でブツが到着。まさかそんなに早く届くとは夢にも思ってもいなかったので、パッケージに貼られた colissimo という文字を見て “フランスからLP届く予定あったっけ?” と訝しく思いながら中身を取り出すと、出てきたのはピカピカの「Les Beatles」オリジナル盤ではないか! しかもジャケットはラミネートの剥がれも無くスパインもめっちゃしっかりしていて、VGどころかどう見ても Exレベルの良コンディションだ。何よりも私がこのジャケットに魅かれるのはタイトル文字のオレンジ色がバックの黒色に対して実に綺麗に映えているところで(←黄色っぽいタイトル文字のジャケも見たことがあるが私はオレンジ・ヴァージョンの方が好き!)、それだけでも大枚を叩いた価値があるし、“Beatles” の B の文字がカブトムシの角を模して(←ナメクジみたいとか言っちゃダメ!)デフォルメされているのもオシャレでカッコイイ(^o^)丿
 盤の方は音に出そうな傷が数ヶ所あって “さすがにこっちはVGやな...” と恐る恐る針を落としたところ、信じられないことにほとんど音に出ず、何のストレスも感じずに両面聴き通すことが出来た。Visual Grading はVGだが Play Grading はごく普通の Ex盤レベルという、いわゆるひとつの大ラッキー盤というヤツで、野太いモノラル・サウンドで初期ビートルズの火の出るようなロックンロールを楽しむことが出来た。やっぱりアナログ盤コレクターはやめられまへんな... (≧▽≦)
The Beatles - France LP Odeon OSX 222 - Les Beatles - With - Club - Worldwide - Long Play

チエミのスタンダード・アルバム / 江利チエミ

$
0
0
 多くのレコード・コレクターがやっているように、私もWANT LIST なるものを作っている。ビートルズ関係の盤が多いが、もちろん昭和歌謡やジャズのアーティストもリストアップしており、過去にレコ屋やネットで見かけたのに買いそびれてしまって今ではどこを探しても売ってない盤だとか、オークションで何度も獲り損ねて未だに入手できていない盤だとかがネットオークションに出品されたら絶対に逃さないように寸暇を惜しんでチェックしている。その甲斐あってか前々から欲しかった昭和歌謡歌手のレコードを最近何枚か手に入れることが出来たので、今日はそんな中から江利チエミの「チエミのスタンダード・アルバム」(LKF-1025)を取り上げよう。
 このレコードは1959年にリリースされた10インチ盤で、A面は東京キューバン・ボーイズをバックにラテン・ナンバーを4曲、B面は原信夫とシャープス&フラッツをバックにジャズのスタンダード・ナンバーを4曲歌っている。楽譜をあしらったオレンジ色の背景と彼女の白いドレスのコントラストが映えるジャケット・デザインも素晴らしい。
 A①の「ベサメ・ムーチョ」はトリオ・ロス・パンチョスやアート・ペッパーのようなスロー/ミディアム・テンポのアレンジが主流だが、私が一番好きなカヴァーはビートルズのスター・クラブ・ライヴに入っている疾走系ロックンロール・ヴァージョン(←映画「レット・イット・ビー」でポールが朗々と歌い上げるヴァージョンは正直言って苦手です...)。ここで聴けるチエミ・ヴァージョンは前半部分こそ切々と歌っているが2分を過ぎたところで一気にギアを上げてペースアップ、速射砲のようなスペイン語で一気呵成に突っ走るコモエスタな展開がク~ッ、タマラン! 更に2分35秒の “which means!” で英語に切り替え、“ベッサメ ベッサメ ベッサメ ムゥ~チョ~♪” とたたみかける “ベッサメ三段攻撃” の凄まじい吸引力... (≧▽≦) ここだけでメシ3杯は喰えそうだ。とにかく初期ビートルズ・ヴァージョンの次いで私が好きなベッサメ・カヴァーが他ならぬこのチエミ・ヴァージョンなのだ。
江利チエミ Chiemi Eri - ベサメ・ムーチョ Besame Mucho


 このアルバムでは途中でテンポを変えて曲にメリハリをつけるという彼女お得意の手法が多用されており、A④の「タブー」でも2分を過ぎたところでスローな前半部分から一転して高速シャバダバ・スキャットに突入、さすがは “和製エラ・フィッツジェラルド” の異名を取るだけあって縦横無尽にメロディーを操る歌唱は凄いの一言! 彼女の塩辛い声を活かした見事な歌いっぷりは何度聴いてもスリリングだ。又、B②「ザ・マン・アイ・ラヴ」でも2分08秒から漂白されたハンプトン・ホーズみたいな(笑)中村八大のスインギーなピアノ・ソロ(←バックのドラムの叩き方がもろにスタン・リーヴィーしててクソワロタ...)が炸裂し一気にヒートアップ、ノリノリの演奏をバックに変幻自在のヴォーカルで聴く者を一気にチエミ・ワールドへと引き込む展開がめちゃくちゃカッコ良い(^.^)  まさに彼女のジャズ・シンガーとしての魅力が堪能できる1曲だ。
 B③の「ラヴァー・カム・バック・トゥ・ミー」は1955年にSPでリリースしたものとは違うヴァージョンで、曲の後半部で唐突に “三日月ほのかにかすむ夜~♪” と日本語に切り替えるSPヴァージョンに対して全編英語で歌い切ったこちらのヴァージョンの方が断然カッコいい(^o^)丿 日本人が歌う「ラバカン」としては美空ひばりがナット・キング・コール・トリビュートLPでカヴァーしたヴァージョンと双璧を成す名唱だと思う。
 B④の「スワニー」も彼女は複数回レコーディングしており、1回目がこのアルバムの半年前に出たSPヴァージョン、2回目がこのアルバムのヴァージョンで、3回目が1963年にステレオ・レコーディングされたヴァージョンなのだが、ステレオ版は “I've been away from you a long time~♪” の前半部分をバッサリとカットしていきなり“Swanee, how I love you, how I love you~♪” で始まるという奇抜なアレンジに違和感を覚えるし、ステレオ感を出したかったのかバックの演奏に過剰なエコーがかかっており彼女の歌声だけが浮いてしまっているので私的にはNG(>_<)  SPヴァージョンとアルバム・ヴァージョンはほぼ同時期の録音ということもあってかアレンジがほとんど同じだなのだが、より伸びやかで表現力豊かな歌声が楽しめるという点でアルバム・ヴァージョンに軍配を上げたい。
 ジャズ・シンガーとして取り上げたスタンダード・ナンバーの数々でスキャットを交えながらスイングする “高速スキャットの女王” 江利チエミの魅力が存分に味わえるこのアルバム、復刻CDで持ってはいたが、やはりオリジナル盤の豊潤かつ濃厚な音で聴ける喜びは格別だ。やっぱり江利チエミはエエなぁ... (^o^)丿
Swanne江利チエミ

ヒット・パレード第2集 / 森山加代子

$
0
0
 “やっと手に入れたレア盤” シリーズ第2弾は森山加代子だ。オールディーズ・マニアの私は和製カヴァー・ポップスも好きでよく聴くのだが、そんな中でも弘田三枝子と並んで愛聴しているのが森山のカヨたんで、彼女のレコードはシングル・アルバム共に出来るだけアナログ盤で手に入れるようにしてきた。シングルに関しては目ぼしいところはほぼ入手済みだったが、アルバムの方はレア度が高いのか完全制覇までにかなりの年月を要した。
 70年代に入って彼女が「白い蝶のサンバ」(←昔カラオケで歌詞の“蝶”のところを“ママ”に替えて歌ったらめっちゃウケた...)で再ブレイクする以前の、いわゆるひとつの “カヴァー・ポップス時代” にリリースしたアルバムは「リクエスト・タイム」「ヒット・パレード」「ヒット・パレード第2集」「ヒット・パレード第3集」の4枚で、そのすべてが10インチ・レコードだ。
 最初の2枚はネット・オークションでもよく見かけるし値段の方も3,000円を超えることはまずないが、「第2集」と「第3集」の頃になると人気に陰りがさしてきたのか市場にほとんど出回っておらず、オークションで見かけることも滅多にない。だからこの2枚に関しては長いことその存在すら知らず、4年前にヤフオクで「第3集」を初めて見て8,800円で運良く落札した時に、 “「第3集」があるんやったら「第2集」もあるに違いない...” と考え、それ以来ずーっと探していたものだ。
 彼女のアルバムは10インチ盤ということもあって収録曲は片面4曲ずつの計8曲で、洋楽ヒット曲の和製カヴァーと彼女独自の “言葉遊び系コミカル歌謡” 路線のヒット曲がうまく散りばめられているのが特徴だ。この「第2集」に収録されているカヴァー・ポップスは、コニー・フランシスの「ボーイ・ハント」のようなメジャーなヒット曲からシュー・マルムクヴィストの「ウェディング・ケーキ」のようなちょっとマニアックな曲まで、ヴァラエティーに富んだ選曲がなされているが、私のフェイヴァリット・トラックはアルマ・コーガンをカヴァーした「ポケット・トランジスター」で、カヨたんのユニークな声質が曲想と絶妙なマッチングをみせ、カヴァーとは思えないくらい自然な仕上がりの1曲になっている。
森山加代子 ポケット・トランジスター 1961 / Pocket Transistor


 一方、彼女のオリジナル曲では何と言っても「パイのパイのパイ」が出色の出来。“ラーメチャンタラ ギッチョンチョンデ パーイのパイのパイ~♪” という意味不明のフレーズが耳ついて離れなくなるキラー・チューンだ。「じんじろげ」を作詞した渡舟人が書いたユーモラスな歌詞は何度聴いても楽しいし、「アルプス一万尺」のメロディーをアダプトしたイントロから一気にジャジーな展開に持っていく中村八大のアレンジも素晴らしい。
森山加代子 パイのパイのパイ


 「ズビズビズー」も「パイのパイのパイ」と同じ言葉遊び系ソングで、歌の大半でズビズビ言いっ放しという摩訶不思議なナンバーだ。そのせいもあって、私はてっきり「じんじろげ」や「パイのパイのパイ」のヒットを受けて作られた彼女のオリジナル・ソングだと思い込んでいたのだが、今回手に入れたレコード裏面の作曲者のところを見ると「テュー」と書いてある。不思議に思って調べてみると、オリジナルは何とソフィア・ローレンで(1960年)更に驚いたことにあのジョージ・マーティンがプロデュースしているというではないか!!!  これはエライコッチャである。ビートルズを手掛ける前にはこんなんやってたんか... と私的にはメカラウロコ的な大発見だったのだが、肩の力の抜けたソフィアのヴォーカルが実に良い味を出しており、聴いてて思わず “ラッタッタ!” な気分になれること間違いなし。それにしてもカヨたんの「ズビズビズー」が実はカヴァー・ポップスやったなんて、ホンマに夢にも思いませんでしたわ...(゜o゜)
森山加代子 ズビズビズー 1961 / Zoo Be Zoo Be Zoo

Sophia Loren - Zoo Be Zoo

ひばりジャズを歌う ~ナットキングコールをしのんで~ / 美空ひばり

$
0
0
 常日頃愛聴しているというわけではないけれど、たまに取り出して聴いてみるとやっぱり凄いなぁ... と思わせるシンガーがいる。私にとって美空ひばりはちょうどそんな存在である。いわゆるひとつの “演歌” というジャンルが大の苦手な私は、「真っ赤な太陽」をはじめとする “ひとりGS歌謡” 路線の曲を除けば彼女のレパートリーの大半は聴く気になれないが、“ジャズ・シンガーとしての美空ひばり” は大好きで、スタンダード・ナンバーを歌わせたら日本人で彼女の右に出る者はいないとさえ思うぐらいその唯一無二のスイング感に惚れ込んでいる。
 私が持っている彼女のジャズ・ヴォーカル盤はナット・キング・コールへのトリビュート盤「ひばり ジャズを歌う」とコンピレーション盤「ジャズ&スタンダード」という2枚のCDで、ジャズ・ヴォーカルを聴き始めた頃にレコ屋のご主人から勧められて興味を持ったのだが、どちらも当時は廃盤状態だったこともあり、足を棒にして探し回ってやっとのことで手に入れた時の嬉しさは今でも忘れられない。
 そのCDを聴いてみて「スターダスト」や「ファッシネイション」、「慕情」のような悠揚迫らぬバラードが上手いのは当然予想できたことなのでそれほど驚かなかったが、私が衝撃を受けたのは軽快にスイングする「ラヴ」や「ウォーキング・マイ・ベイビー・バック・ホーム」、「イッツ・オンリー・ア・ペイパー・ムーン」といったミディアム・テンポのナンバーで、日本人離れしたナチュラルなスイング感に耳が釘付けになったし、アップ・テンポの「ラヴァ―・カム・バック・トゥ・ミー」で聴かせるノリの良さにも圧倒され、美空ひばりという天才シンガーの凄みを再認識させられた。
IT'S ONLY A PAPER MOON(美空ひばり)

恋人よ我に帰れ(美空ひばり)


 とまぁこのように音楽的には申し分なかったのだが、正直言ってCDのマスタリングはイマイチ(>_<)  90年代に発売されたCDなのでヴォーカルが平板に聞こえるのは仕方ないにしても、ひばりのヴォーカルに対してバックのシャープス・アンド・フラッツの演奏が引っ込んで聞こえるのはいくら何でもいただけない。まるで歌と演奏が溶け合わずに乖離したまま平行線を延々と走っていくような感じで、バランスの不自然さが気になって音楽に100%のめり込むことが出来ないのだ。
 それから何年か経ってこの「ひばり ジャズを歌う」はコロムビアからアナログ重量盤LPという形で再発されたが、同じ重量盤再発シリーズで手に入れた弘田三枝子の「ミコ・イン・ニューヨーク」と「ミコ・イン・コンサート」がCDとあまり変わらない中途半端な音質だったこともあって購入は見送り。ミコたんの2枚はその後オリジナル盤LPを手に入れることが出来たのだが、その音質がめちゃくちゃ良かったこともあって、ひばりのジャズ盤もいつかはオリジナル盤を手に入れてやろうと心に決めた。
 しかし60年代邦楽のオリジナルLPを見つけるのは eBayやDiscogsを駆使してビートルズの各国盤を探すよりも遥かに難しい。そもそも世に出回っている数自体が圧倒的に少ないし、もし仮にオークションに出てきたとしても鬼のようなプレミアが付くことは必至。少なくとも今までにレコ屋の店頭で現物にお目にかかったことは一度もないし、ヤフオクでも年に2~3枚出るか出ないかという、まさに文字通りの “幻の名盤” だった。
 そんな “幻盤” が網に引っ掛かってきたのが3ヶ月ほど前のことで、登録しておいたヤフオク・アラートから届いたメールを見て “ついに来たか!!!” と大コーフンしたのだが、値段を見てビックリ(゜o゜)  49,800円て...??? アホらしゅうなった私はウォッチすらせずにスルーしたのだが、それからしばらくして又々アラートが... 同じブツが今度は1万円値下げして39,800円で再出品されたのだ。更にその数週間後には29,800円と、当初の強気が嘘のような大幅値下げだが、それでもまだまだ高すぎる。顔でも洗って出直してこい!と思って見ていたら、ついにスタート価格を 19,800円まで下げてきよった。2万円台前半までやったら思い切って “買い” やな... と思っていた私は満を持して参戦し、しつこいライバルを振り切って22,800円で落札に成功(^o^)丿  今年に限って言えば「Les Beatles 1965」に次ぐ高額な出費だが、かれこれ20年近く欲しくて欲しくてたまらなかった垂涎盤をやっとのことで手に入れることが出来た喜びは筆舌に尽くしがたい。
 届いた盤をターンテーブルに乗せて早速針を落とす。う~ん、コレは素晴らしい。ハッキリ言ってCDとは比べ物にならないぐらいのスーパーウルトラ高音質だ。60年代に作れたこの美音をテクノロジーが格段に進化した21世紀の再発盤でなぜ再現できないのか理解に苦しむ。何よりもまず美空ひばりの “声” が違う。人間の声をいかにリアルに再現するか… の成否を決する “中音域” の充実ぶりが月とスッポンで、CDに入っている彼女の声が二次元的で薄っぺらいのに対し、オリジナルLPの方は声に芯があって生々しく、目を閉じれば眼前にすっくと屹立する三次元的なヴォーカルの存在感に酔いしれることが出来るのだ。
バックの演奏とのバランスもまったく問題なしで、CDのような違和感は感じない。結局レコードが届いた日の晩にAB面通して3回聴いてもまだ聴き足りないぐらい気に入ったのだが、これは大枚を叩いた甲斐があったというものだ。分厚くて奥行きを感じさせる美空ひばりの声の魅力をあますところなく音盤に刻み込んだこのレコード、今年も残すところあと4ヶ月を切ったが、“自分へのご褒美盤2017” はどうやらコレでキマリのようだ。

“BANNER STEREO” レーベルのOZ盤で聴く「Please Please Me」

$
0
0
 私は今でこそアナログ・レコード・コレクターの端くれとしてセンター・レーベルがどーのマトリクスがこーのといっぱしの口をきくようになったが、20年ぐらい前まではCDしか聴かない堅気の音楽ファンだった。そんな私にオリジナル盤だとか1stプレスだとかいった余計な概念(笑)を吹き込んで下さったのはジャズのオリジナル盤を扱うレコ屋のご主人たちで、CD vs オリジナル盤や 1stプレス盤 vs 2ndプレス盤など、実際に色んな聴き比べをさせていただいて耳を鍛え、乾いたスポンジのようにアナログ・レコードの知識を吸収していった。
 その後何年か経って本格的にビートルズのオリジナル盤を集め始めた時、これらの知識が大いに役立った。まぁジャズ・レコードのプレス枚数なんてビートルズの数百分の一かヘタをすれば数千分の一ぐらいだろうからマトリクス・ナンバーもヘッタクレも無いのだが、センター・レーベルのデザインの違いによって大体のプレス時期が分かるという仕組みは基本的に同じなので(←考古学者みたいなもんですな...)、ジャンルを問わずレコードを手に取るとイの一番にレーベルに目が行くようになってしまった。
 だからビートルズのレコードを見るようになっても、大ざっぱに言えばターゲットがブルーノートからパーロフォンに変わっただけで、ジャズの時と大きな違いはない。BN1500番台から4000番台前半の初回盤 63rd/New York にあたるのがイエロー・パーロフォンで当然それがメイン・ターゲットになり、Liberty/ UA にあたるシルバー・パーロフォンはリイシュー盤ということで完全に購入対象外。Lexington やゴールド・パーロフォンはさしずめ高嶺の花の垂涎盤といったところか。
 金パロの中でも特に稀少なのはステレオ盤の方で、eBayでは年に2~3枚ぐらいしか出てこないし、しかも£2,500~£5,500(日本円で約35~80万円!!!)という目の玉が飛び出るような高値で取り引きされている。貧乏コレクターの私にとっては所有することなど夢のまた夢なので、クラシックなデザインの “BANNER STEREO” レーベルは手の届かない憧れの存在として、見ただけでもうワクワクドキドキしてしまう(≧▽≦)
 そんな私が思わず “おぉぉ!!!” と唸ったのが半年ほど前のことで、アルバム「プリーズ・プリーズ・ミー」のオーストラリア盤 1stプレスのセンター・レーベルを見てビックリ(゜o゜)  金文字ではなく銀文字という違いはあるが(しかもスピンドルホール周辺にゴテゴテと色んなロイヤリティ・スタンプ・マークが入ってはいるものの...)、全体のレーベル・デザインはまごうことなき“BANNER STEREO” だ。UK本家の “ゴールド” BANNER STEREO盤は金銭的に無理でも OZ版 “シルバー” BANNER STEREO盤なら何とかなりそうだ。その時以来私はこのレコードが安く手に入る機会を虎視眈々と狙っていたのだが、先月ついにAU$50で出品されているのを見つけて落札、送料込でも6,000円弱で手に入れることが出来てめちゃくちゃ嬉しかった。
 スティーヴ・ホフマンのフォーラムによると、オーストラリア盤「プリーズ・プリーズ・ミー」のステレオ盤がリリースされたのは64年の4月で、UK盤のメタル・マザーを使ってプレスされたとのこと。当然ながら1stプレスの金パロ BANNER STEREO は持っていないので、とりあえずUK黄パロのステレオ盤と比較試聴してみることにした。
 レコードの音は同じメタル・マザーからプレスしても、盤に使うビニールの質や重量、カッティング・エンジニアの腕、そしてプレス工場の違いといった様々な要素で変わってくるし、オーストラリア盤に対する世間一般の音質評価は結構高いものがあるので、どんな結果になるのか興味津々。重量盤信仰が抜けない私は聴き比べ時に盤の重さを量る習慣があるのだが(←一概に重けりゃ良いってモンでもないことは頭ではよーく分かってるんですけどね...)、今回はUK盤が160gなのに対し OZ盤は149 g とやや軽めだった。
 聴いてみた感想としてはどちらもめっちゃ良い音なのだが音の傾向が少し違う。UK盤の方がコンプが強くかけられているせいかゴツゴツした音の塊がガツン!とくる感じなのに対し、OZ盤の方は音がつぶれずに上の方までスッキリと伸びていて細部までよくわかるのだ。中低域のガッツ、押し出しの強さではUK盤に軍配が上がるが、全体的な音のバランスという点ではむしろOZ盤の方が聴きやすいと言えるかもしれない。私個人としてはどっちの音も捨てがたいので、今回レーベル・デザインに魅かれてOZ盤を買って大正解。それより何より、たとえそれが銀文字であっても、クラシックな BANNER STEREO デザインの「プリーズ・プリーズ・ミー」に針を落とす喜びは格別なのだ... (^o^)丿
Viewing all 808 articles
Browse latest View live